2026/09/01 20:01:13
(QyZ1tG/F)
久遠は首輪に繋がれたリードを手に鏡の前で立ち尽くす麗奈の体をゆっくりと引き寄せた。
「お前がこれから住む場所を案内しておこう。よく見ておけ」
麗奈は久遠の歩みに合わせて足を踏み出す。静寂に包まれた屋敷の回廊に、二人の足音が重なって響く。
久遠は振り返りもせず、一定の速度でリードを引いて廊下を歩く。重厚な調度品、手入れの行き届いた中庭を望む濡れ縁、格式高い日本の伝統を感じさせる屋敷の佇まい。
かつて良家で育った麗奈であれば、その美しさを深く愛でる教養を持ち合わせていたはずの空間だった。
しかし今や、彼女はその洗練された屋敷の中で、太ももに愛液を伝わせながら、ただ首輪で引かれて歩くしかなかった。
廊下の曲がり角を過ぎたとき、静かな足音が近づいてきた。
久遠の屋敷に仕える女中が、盆に茶器を載せて歩いてくる。
麗奈は、手首を背後で完璧に固定され、全裸に亀甲縛りを施された無防備な姿。逃げ出すための陰も、隠れるための衣服一枚すら存在しない。
女中は足を止めると、静かに壁際へと身を寄せ、深く頭を下げた。
「ご苦労。……しばらくここに住む、麗奈だ」
久遠の短く冷ややかな声に、女中は一度だけ事務的な視線で麗奈の姿を一瞥した。
それは軽蔑でも同情でもなく、庭の石ころや廊下に置かれた調度品と何ら変わりない「物」を見る冷淡な眼差しだった。
足を止めてしまった麗奈に対し、久遠はリードを強く引き、強制的に歩みを進めさせた。
次に久遠が足を止めたのは、母屋の離れに位置するこぢんまりとした和室の前だった。
障子を開くとそこに広がっていたのは、六畳ほどの静かな空間だった。
手入れされた畳の上に、シンプルな文机と小さな衣装箪笥がひとつ。特別豪華というわけではないが、掃除は行き届いており、柔らかい日差しが差し込む落ち着いた部屋だ。
「ここがお前の部屋だ」
久遠は麗奈を部屋の中央へと引き込むと、首輪から伸びるリードを壁際に打ち込まれたフックにかけた。
フックには外れ止めが施されており、背中で手首を固く縛られた麗奈が自力で外すことは不可能だった。繋がれた犬のように、リードの長さだけが今の麗奈に許された移動範囲となる。
ごく普通の部屋だからこそ、そこに繋がれている自分自身の異常さがよりいっそう際立っていた。
「贅沢な調度品も、絢爛な衣装も今の麗奈には必要ない。だが、最小限の生活空間は与えてやる。お前はこの場所で、ただ俺の呼び出しを待つことになる。……次の用意をする間、少し待っていなさい」
すうっと静かな音を立てて障子が閉められ、室内には麗奈一人だけが残された。
静寂の中、壁のフックに繋がれたリードがわずかに揺れる。
息を吸うたびに胸郭を圧迫する縄目に合わせて、熱く浅い呼吸の音だけが、静かな部屋に惨めに響き続けていた。