2026/10/07 15:53:53
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翠ヶ丘警察署(みどりがおか)、生活安全課の窓口。
お世辞にも治安が良いとは言えないこの管内で、窓口対応に当たっている巡査・悠木鈴“ゆうきりん”(25)は、署内きってのマスコット的存在として男たちの視線を一身に集めていた。
くりっとした大きな瞳に、やや小柄で凛とした佇まい。真面目に業務をこなすその姿は、殺伐とした男社会の警察署において唯一の癒やしであり、同時に、署員たちがあらゆる名目を盾にベタベタと愛玩する「格好の標的」でもある。
通りがかりのベテラン刑事が「ご苦労様」とねっとり手を包み込んでペンを持たせ、副署長が「今度、署長室でお茶を淹れてくれ」と耳元で囁き、同僚たちが頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。さらに密室の給湯室や更衣室では、先輩女性警察官たちからも「本当にかわいい胸してるよねえ」と悪気のないスキンシップの延長でお尻や胸を揉みしだかれる――そんな澱んだ甘い毒に満ちた箱庭。
その日常の中で、鈴の心は一人の男に救われていた。
地域課の交番勤務で、冴えないパトロールや雑務に追われるずんぐりむっくりな巡査・田中圭介――通称「ドン介」。
不器用で口下手な彼が、周囲に言い寄られて困り果てている鈴を陰から庇い、苦いコーヒーが全く飲めない鈴のためにこっそり自販機の甘いミルクティーを差し入れてくれる。その誠実さに触れ、二人は当直の合間を縫って手をつなぎ、人生で一番幸福な蜜月期を過ごしていたばかりだった。
――だが、その底抜けに甘い日常の裏で、本庁中枢から訪れた二人のエリート怪物(生活安全部長の◯◯と首席監察官の△△)による「特別視察」という名の冷徹な網が、音もなく張りめぐらされようとしていた。
そんな重苦しい気配が署内を覆い始める直前の、昼下がり。
生活安全課の窓口に、地元のやんちゃな男子高校生三人組がニヤニヤと悪だくまな笑みを浮かべながら近づいてきた。彼らは噂を聞きつけ、あらかじめ「目的の彼女」を狙い撃ちにしてやってきている。
「いらっしゃいませ。翠ヶ丘警察署へようこそ。……何か、お困りですか?」
鈴がいつものように丁寧な笑顔を向けた瞬間、その透き通るような声と間近で見る端正な美貌、制服越しにも分かる見事なプロスタイルに、高校生三人組は一瞬息を呑み、生唾を飲み込んだ。
「あ、あのさ……! 俺たち、これ……拾ったんだよ!」
リーダー格の茶髪の男子高校生が、これ見よがしにニヤニヤとした卑猥な笑みを浮かべながら、カウンターの上にゴソゴソとコンビニのビニール袋を雑に放り出した。
鈴は少し首をかしげ、不審に思いながらも、丁寧にそれを両手で引き寄せる。
「落とし物ですね。それでは、拾得物の届け出用紙に……」
言いかけながら、鈴がビニール袋の口を少し開けた瞬間――。
カチャリ、と、いやらしい音が響いた。
中から転がり出たのは、過激なパッケージ写真が踊るアダルトDVDが数枚と、箱入りのコンドームだった。
「ひっ……!?」
思わず息を呑み、鈴は真っ赤に染まった顔のままビクッと肩を跳ねさせた。
周囲の署員たちが「おおい、なんだガキども……?」と険しい視線を向け始める中、高校生グループは面白半分に鈴の反応を楽しんでいる。
そしてその一部始終を、署の玄関から足を踏み入れたばかりの本庁のエリート――◯◯と△△の冷徹な瞳が、値踏みするような残酷な光彩で捉えていた。
頬を染めながらもポーカーフェイスで事務的に対応するが厭らしい言葉を浴びせてくる男子高校生三人組。
〇〇さん、お待ちしてます。