2025/06/18 12:35:35
(wmiE1iqc)
配達員という仕事柄、いろんな家を訪ねる。その日もまた、汗ばむ季節の午後、時間指定の着払い荷物を抱えて、住宅街のとある一軒家へ向かった。
インターホンを押すと、応対に出てきたのは、以前にも荷物を届けたことがある女性だった。
前回のことを、私は今でもはっきりと覚えている。千円札を財布から抜き出した彼女が、小銭を探しているうちに、その札をぽとりと落としたのだ。ひらひらと舞うように玄関タイルに落ちた紙幣を拾おうと彼女は前屈みになった。ちょうど玄関ポーチの一段下にいた私の目線から、その胸元が見えてしまった。
ブラをつけていなかった彼女の谷間が、不意打ちのように視界に飛び込んできて、思わず「あっ」と声が漏れた。
もちろん、それ以上のことはなかった。彼女は何も気づいていないようで、淡々とやり取りを済ませ、荷物を受け取って玄関を閉めた。
だが、数週間後、再び同じ家への配達があった。
今回は夕刻時、指定時間より少し早く着いたが、開いたカーテンの窓越しに人影が見えたのでインターホンを押すと、また彼女が出てきた。変わらぬ佇まい、柔らかい微笑み。どこか落ち着いた空気をまとっている。
そしてまた千円札を落とした。
反射的に「あっ」と声を出し、私は手を伸ばした。だが、彼女も同時に前屈みになっていた。私の手がすくい上げるように彼女の胸に触れてしまったのだ。柔らかさと温度、重みを感じた。完全に事故だったとはいえ、結果的には、片手で包み込むような形になってしまった。
「あっ、すみません…!」
私はすぐに謝った。だが彼女は、特に動揺も見せずに「大丈夫ですよ」と静かに答えた。
そのままサインをもらい、荷物を渡して数歩歩いたところで、彼女が声をかけてきた。
「すみません、中身、確認してもいいですか?」
「あ、はい、大丈夫です」と私。
彼女はその場でしゃがみ、ダンボールのガムテープを剥がし始めた。ワンピース越しに揺れる胸、その隙間から谷間が覗く。意識してはいけないと思いながらも、私は少しだけ距離を取った。
だが視線は、勝手に下へ吸い寄せられていた。
薄手のワンピース生地が肌に張りつくように密着し、その下の陰部をほのかに映していた。形をなぞるように意識が逸れていく、一瞬、我を忘れた。
箱の中には、小さなピンク色のパッケージが一つ。サボテンのような形が印刷されていた。
「品物、お間違いありませんか?」と確認すると、彼女は「大丈夫でした」と穏やかな笑顔を向けた。その時は、それが何の品か分からなかった。
車に戻り、伝票を整理し、出発しようと顔を上げたとき、ふとリビングの窓に目をやると、キッチンの薄明かりに照らされた彼女が裸で歩いているのが見えた。
さすがにこれはまずい。そう判断し、私は視線を逸らし、静かにその場を離れた。
事務所に戻り、最後の伝票をまとめながら、なんとなく気になったあのピンクの箱を検索してみた。予感は当たり、それはやはり――大人のおもちゃだった。
その直後、仕事用携帯が鳴った。ちょうど業務終了のタイミングで、携帯を事務所に返す直前だった。
相手は、さっきの彼女だった。
「今、また来れますか?」
「もう業務は終わったので、明日になりますが…何かありましたか?」
「後で、家に寄れますか?」
「すみません、業務外でお宅に伺うことはできません。でも、もし外でお会いするなら…」
「この格好じゃ出られないから、迎えに来てもらえませんか?」
しばし迷ったのち、「わかりました」と返事をした。
そして、こう伝えた。
「これから携帯を返却しますので、以後は電話はできません。そのまま向かいます」
彼女の家に着くと、インターホンも鳴らす間もなく、彼女はすっと現れ、そのまま助手席に滑り込んできた。
夜の風と、彼女の香りが車内の空気を静かに撫でていた。