2026/10/08 20:50:57
(ZZ5RBspd)
レンタカーを運転して〇〇温泉を目指していました。
昔からお風呂でのんびりくつろぐのが好きで、年に1回か2回ぐらい温泉めぐりの一人旅をしている私です。
今回は1泊2日の日程でした。
もうすぐ最初の目的地に着くはずです。
(運転疲れちゃった)
(はやくお風呂に入りたいな)
誤解を招きたくないので最初にはっきり書いておきます。
私は、やましいことを心に秘めてそれを目的に温泉旅行をしているのではありません。
もともと純粋に温泉に入るのが好きなのです。
(この先を左折・・・)
道路わきに看板が立っていました。
ナビによると、あと10分ほどで到着するはずです。
道なりに車を走らせていくと、やがて建物が見えてきました。
(あった)
駐車場に乗り入れます。
古くて歴史のありそうな某〇〇でした。
フロントで立ち寄り入湯の料金を払って、タオル類を受け取ります。
建物の中をくねくね歩いて行きました。
お風呂後に飲水ができるような小さい待合スペースがあって、男湯と女湯それぞれの暖簾がかかった入口が並んでいます。
女湯の暖簾をくぐりました。
脱衣場ではだかになって、内湯に入ります。
(すごい)
(ちゃんと硫黄のにおいがする)
のんびりと温泉を堪能しました。
旅の疲れを癒します。
かけ流しのいいお湯でした。
私以外には数人の入浴客がいるだけで、すごく贅沢気分です。
併設の露天風呂でものんびりくつろいでから、お風呂をあがりました。
脱衣場に戻ります。
(ん・・・)
服を着た小さな男の子がそこにいて、ぽかんと私を見上げていました。
まだ髪が乾いていない感じから、この子もお風呂をあがったばかりなのがわかります。
外から男の人の声が聞こえてきました。
「おーい〇〇、だめだよー」
「そっちは女の人のお風呂だよー」
パパさんの声に反応した男の子がトタトタトタッと、ぶら下がった暖簾の下から出ていきます。
どきっとしました。
出入口は暖簾がかかっているだけで戸がありません。
その向こうは水飲みできる待合スペースです。
そして、スリッパ着脱の場所から脱衣場所までの角度があまりじゅうぶんではありませんでした。
今から数年前に訪ねた小さな旅館のときと同じパターンです。
(あ、あ・・・)
錯覚を起こしていました。
その感じを、文章ではうまく言い表わすことができません。
突然よみがえった感覚が過去の記憶と入り混じって、その戸惑いに思考が停止する感じ・・・
(待合スペース・・・暖簾・・・)
(入口からの角度・・・視野・・・)
自身の存在をも含めたすべてを客観視するような、そんな俯瞰的な体感を覚えていました。
急激に心拍が跳ね上がります。
どきどきどき、
(だめ・・・だめだよ)
どきどきどき・・・
一瞬にして昔の自分が戻ってきた気がしました。
全神経が異様なほど鋭敏に研ぎ澄まされていく不思議な感覚があります。
ふわーっと意識が高揚するかのような衝動を得ていました。
同時に、
(ああ・・・)
勝手にからだが動き出している私・・・
全裸のままバスタオルを首にかけていました。
(あのあたり)
(スリッパ棚の前まで行けば・・・)
狙いすました位置に、わざと髪留めクリップを投げて転がします。
歩み寄っていって拾いました。
かがむように目線が低くなったその一瞬で、暖簾の下の向こうをさりげなく窺います。
(ひっ)
飲水場所のソファにパパさんと思われる人がいました。
こちら向きに腰かけています。
心の中で悲鳴をあげながら、そしてどこか期待していたこのシチュエーションにますます高揚する私・・・
クリップを髪に留めて、そのまま『その場』でからだを拭きはじめました。
(ひーーー)
出入口の暖簾の正面に立ってしまっていますが、ぶら下がっている暖簾自体はある程度の長さがあります。
だから私のほうから相手の姿は見えていませんでした。
でも、パパさんはソファに腰かけていますから目線の高さがもっとぜんぜん低い位置にあります。
ぶら下がっている暖簾の下から・・・
私がいるスリッパ棚の付近は視野に入っているはずでした。
そこに留まってしまったままで、お風呂あがりのからだを拭いている『私』です。
(ひいいい)
興奮していました。
私からは見えていないのですから、そのまま気づかないふりを続けています。
ここから暖簾までの距離は4〜5メートルぐらい・・・
その向こうのソファにいるパパさんまでは、さらに数メートル・・・
暖簾で上半身は隠れていますが、立ってからだを拭いている私の下半身がたぶんおなかのあたりまで見えているはずでした。
何も知らない不運な女を演じている自分が快感でなりません。
(いやあん、見えてる)
(恥ずかしい)
あああ、あ・・・
さっきの小さい男の子がまたトコトコ入ってきました。
その子に話しかけながら、
「あれー、どうしたのボク」
さりげなく入口の暖簾に背を向ける私・・・
こどもの目の高さに合わせようと、すっとその場にしゃがみこんでみせます。
「お母さんが中にいるのかなー?」
パパさんの目線の先に、一糸まとわぬ私の姿があるはずでした。
自分の息子にやさしく声をかけてくれている女性・・・
後ろ姿ですが、パンツもはかずにしゃがんだまま左右のお尻が開いています。
(ひいいいん)
自虐の興奮に頭の中が真っ白になりそうでした。
あああ、この感覚・・・
胸が激しく動悸して、とてもではないですがもう耐えられません。
すぐにまた立ち上がっていました。
「おーい〇〇、だめだよー」
男の子がトコトコ外に出ていきます。
私は、大急ぎで自分のロッカー前に戻っていました。
手早く肌の保湿ケアをして服を着ます。
ドライヤーで髪を乾かしました。
顔も化粧水と乳液をつけただけのノーメイクです。
(どきどきどき)
スリッパをはいて暖簾をくぐりました。
ソファに腰かけたまま、まだそこにいたパパさんとちびっ子くん・・・
パパさんと視線が合います。
息をのんでいるのがわかりました。
待合スペースに出てきた私が美貌の持ち主だったことに驚いて、目が釘付けになっています。
「あー、さっきのボクー」
微笑んでみせます。
ちびっ子くんの前にしゃがみ込んで、
「お母さん待ってるのー?」
にこにこしてあげました。
傍らにしゃがみ込んだ私の顔を間近にみつめながら、興奮したパパさんが鼻の穴を膨らませています。
何も知らないふりをして、
「ん、なんですか?」
そのパパさんの瞳を真っ直ぐみつめ返す私・・・
(あなたがさっき目にしたのは)
(この女のはだかだよ)
「可愛いお子さんですね」
「ボク、ばいばーい」
その場を後にしてフロントに向かいました。
途中のトイレに駆けこんで、
(ばくばくばく)
洗面台の前で吐きそうになります。
無自覚ながら自分がとてつもなく緊張していたことにあらためて気づかされていました。
胸の鼓動の激しさが尋常ではありません。
あああ、やばい・・やばい・・息が苦しい・・・
(だいじょうぶだよ)
(大丈夫だってば)
ほら、何事もなかったみたいに・・・
今はもう、ここにいる・・・
(どきどきどき)
フロント前のソファで少しだけ休憩して、気持ちを落ち着かせました。
心の中に渦巻くのは複雑な葛藤です。
(ああ、久しぶりに味わった)
(でもだめだ、私・・・心臓がとまりそう・・・)
誰かに迷惑をかけたわけではありませんでした。
知らない土地で、私ひとりが勝手に赤っ恥をかいただけのことです。
男の人に見えてしまう場所で素っ裸だったさっきの瞬間を思い出しながら、わきあがる羞恥の感情に身悶えそうでした。
建物を出て車に乗り込みます。
エンジンをスタートして、次の温泉に向かう『私』でした。