優さんが居なくなって私の生活は変わった。 友達と遊びに行ったり、本を読む時間が増えたり。 プールにも遊びに行って泳ぎながら鬼ごっこをして帰りにわらび餅を食べたり。 友達と何も気にせずに笑ってられる時間がこんなに楽しいなんて知らなかった。 だから家に帰ると、父やその彼女の機嫌を伺いながらビクビクして過ごす時間も、帰っても空っぽで誰も居ない家にずっと居るのも苦痛だった。 優さんの家には夜遅くまで居ても怒られなかったが友達と遊びに行って18時を超えると父は怒って私を殴る。 ほとんど居ないくせにわざわざ家に電話して私が出るか確認する。 その後帰っても来ないくせに。 だから私は父の機嫌が良い時に「門限を20時に変えて欲しい」とお願いした。 すると父の彼女がお手伝いをちゃんとするなら良いと思う。と言って父に条件を伝えていく。 今までのお皿洗いとリビングとトイレの掃除に加えて玄関の掃除と洗濯物を畳む事、自分達の寝室にも掃除機をかけること。だった。 私は条件を飲んだ。 学校から帰ってきて全部やってたら遊びに行く時間なんてない。 あの人は私を家政婦代わりに使って楽をしたいのと自分の気分次第で父に私を殴らせる理由を増やしたいだけだ。 私は朝早起きをしてお皿洗い、トイレ掃除、玄関の掃除、リビングの掃除を終わらせて、学校から帰ってきてから寝室の掃除と洗濯物を畳んで遊びに出かける。 どうしても時間がない時は洗濯物をカゴに入れて自分の部屋の奥に隠して帰ってきてから畳んでそれぞれの引き出しにしまう。 元々お小遣いをもらってた私は今まで使わずに隠してたお金と、今貰ってる分を合わせて色々なところに行った。 電車で市内の行ったことないところに行ったり、友達と映画を見たり、お金目的で近づいてくる子も居た。 カラオケとかを私に奢らせようとする。 私はそれを逆手にとって自分から今日は5人メンバーを選びまーす!!と集まってくる子達から好きな子を選んで残りはまた今度ねと言ってそういう子は連れていかなくなった。 学校の子の嫌がらせなんて小学校時でもう慣れた。 私は自分の遊びたい人と遊ぶ。 勝手にあなた達が作ったルールに私は従わない。 利用してくるなら、利用仕返してやる。 もう誰にも従わされたくなかった。 そして……数日置きに身体に傷を増やして現れる私をクラスの子達は気味悪がる様になる。 父の暴力は酷くなっていた。 ある日は門限を超えてるからと殴って顔が腫れた。 ある日は部屋の隅にホコリが残ってたからと蹴られて痣ができた。 ある日は俺の金を取っただろ!!と言って木刀で殴られた。 本を読んでる時にハンガーで殴られて腕や脚がミミズ腫れの跡でいっぱいになった。 学校の制服をスカート短めで着てた私はその日はスカートを伸ばして学校へ行くといつもスカートを長くしろと言う先生が「今日スカート長いな!どうしたw?」とニヤケながら近づいてきた。 このセクハラ野郎は理由をつけては人を触ろうとする。 私はスカートを掴んでバッとあげると太ももを見せた。 「こうなってるから長くしてんの!一々うるさい!!」と走って教室に向かった。 やっぱり……楽しい時間って続かないな……。 先輩とも会うけど……夏休みの間ずっと話せなかったからかお互い気まずくてちゃんと話せてなかった。 私はだんだん学校に行くのも嫌になって、サボることが増えた。 父の迷惑行為は有名なため家に連絡も行かない。 制服でウロウロしてたらナンパしてきたお兄ちゃんと話をして出掛けるようになった。 体目当てか。目でわかる。 他の人とか……した事ないし……試す?? そう思って試したけど……。 なんにも感じなかった。 他校の子達とも少し遊んだけど……楽しくない。 ある日、ふらふらと入ったゲームセンターで私はぐるっと店内を回ったあと窓のそばに座って車が流れるのを眺めた。 「おい!」驚いて振り向くとガラの悪そうな店員さんが声を掛けてきた。「暇なの?」と聞かれた私は「ここに居たら迷惑ですか?」と聞いた。 店員さんは笑いながらカウンターに行くとメダルの入った入れ物を持ってきて私に渡した。 「迷惑じゃないけど、夜になると変なのが集まるからそれなくなったら今日は帰りな」そう言ってその人は私の頭を撫でた。 「ありがとうございます」そう言って頭を下げたら、ぽたっと水滴が床に落ちた。 なんで……頭撫でられたくらいで自分が泣いてるのかが分からなかった。 その人はしゃがんで私を覗き込むと「泣くとブサイクになるぞ」と笑った。 私はしゃがみこむと顔を手で隠した。涙が止まらなくてどうしたらいいか分からなかった。 店員さんは近くに来てタバコに火をつけて吸い終わるまでなと言って私の姿が見えにくい様にしてくれた。 それから私はゲームセンターに入り浸るようになってそこで知り合った人達と遊ぶようになった。 自分を見て、気にかけてくれる存在が居る。 親とか関係なく私を気味悪がらない人達。 話が通じる。 退屈などうでもいい話題じゃなくて会話が繋がっていく。 家にも学校にも居場所がなくなっていた私に出来た居場所だった。 寒くてもみんな集まって話したり、お出かけの予定を組んだり、自転車で色々なところに行けると知った。 冬休み、私は友達の新聞配達を手伝うからと朝の3時50分に家を出る様になった。 父はお金が貰えるなら良いと言って反対しなかった。 朝の3時に起きて、用意して家を出る。 帰るのは夜の20時。 休みが終わっても私は新聞配達のお手伝いを辞めなかった。 学校に行かず、新聞配達を一緒にしてた子の家にいたり、電車で出かけたり。 近寄って来る男の人達は体目当てな人が多い。 お小遣いをあげるからとか言われたけど、興味なかった。 ドキドキしない。気持ちよくない。触られたくない。 気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。 私はやっぱりゲーセンに居る時が楽しいなと思った。 そしてだんだんゲーセン以外でもその人達と遊ぶようになった。 殴られようがなんだろうが私はその人達と遊ぶのを辞めなかった。 父は「お前の友達にはロクな奴が居ない」と私に言う。 私は殴られるのをわかってたけど「お父さんの友達はロクな人居るの?」 案の定歩くのがやっとになるくらい殴られた。 何も知らない癖に。 少なくとも私の友達はベタベタ私に触らない。 まだ優さんが居た頃、父の他の友達に身体を撫でられた事がある。 その人の奥さんのお見舞いの帰りの車の中で。 一緒に釣りに行った父の別の友達の子供に身体を触られた事もある。 それが父の言うロクな友達なら……私はいらない。 私は家に帰るのがだんだん遅くなり、朝8時に帰って父が居ない間にやる事を済まして、2時間くらい寝て帰って来る前に出掛けるようになった。