お祭りに行っても良いと言われて私は先輩に返事をした。 てっきり他の人も来ると思ってたけど、二人で行きたいと言われて私はドキドキしながら頷いた。 そして当日、近所のおばちゃんに頼んで浴衣を着せてもらった私は少し早目に先輩と待ち合わせた場所に向かった。 先輩はもう着いていて「遅れたくなくて早く家を出たら早く着きすぎた」と笑ってた。 お祭りに向かいながら色んな話をして笑う。 そんな何でもない事が楽しくて仕方なかった。 花火まで時間があるからと屋台を回って食べ物とか飲み物を買って花火会場の空いてるとこを探して座る。 団扇で扇ぎながら話をしていたら急に先輩が黙り込んだ。 何となく口を開けずもう溶けて液体になってるかき氷をチビチビとすくって口に入れる。 周りはガヤガヤとうるさいはずなのに先輩の声がやたらはっきりと聞こえた「りりの事、好きなんだ」 こんな漫画みたいな事あるの??バクバクと破裂しそうな心臓の鼓動を誤魔化すように頭の中では他人事のような事を考えてしまって口から出たのは「え?りりって…私?」というなんとも間抜けな言葉だった。 自分は何を言ってるのか……。 恥ずかしくなって団扇で顔を隠そうとしたらその手を先輩に取られて「りりはお前しか居ないだろ」と言われて周りから団扇で隠すようにそっとキスをされた。 驚きすぎて目を閉じることも忘れた私に「ごめん、嫌だった?」と先輩が聞いてきて私は取れるんじゃないかってくらい首を横に振った。 先輩は良かったと言って私を抱き寄せた。 近くに居た大人に「若いっていいねぇ」とか「襲うなよー」とか言われたり口笛を鳴らされたりして私は先輩の腕の中で顔をあげる事ができなくて。 それをわかってくれてるのか「恥ずかしがって逃げられたらどうしてくれるんですか?静かに見守ってくださいよ」と笑っていた。 それから手を繋いで花火を見て、人混みがだいぶ引いたころようやく私と先輩はそこから帰るために動き出した。 帰る途中にお巡りさんに「補導されないうちに帰れよ」と言われて少し足を早める。 先輩は家まで送ると言ってくれたけど、親がうるさいからと断って近くの曲がり角でまた連絡すると言われて手を振って道を曲がった。 少し歩くと家の前に誰かが居るのが見えた。 冷や汗が背中を流れる。 思わず立ち止まるとその人はこちらに歩いてきた。 「おかえり、お祭りは楽しかったみたいだね」 逃げないと…後ずさろうとしたけど身体は震えて動かなかった。 「帰ろ」優さんの声に私は何とか足を前に動かして家に帰った。 「お父さん達は?」優さんが何か言う前に、ドアが閉まる前に、焦って声をかけた私に「今日は帰らないからりりをよろしくって言われたよ」と優さんから言われて私は大変な事になったと確信した。 「仲良さそうだったね、デート。楽しかった?」 見られてた!!いつから!?どこまで見られた?? 立ち尽くす私に優さんは追い討ちをかけるように言葉を続けた。 「あんなにくっついて、キスまでされるなんて。りりは誰の物かもうわかってると思ってたんだけどね」いつまでも玄関から動かない私のところに優さんが戻ってくる。 「お祭りが終わったら僕に抱かれる約束だったよね」 と言って私を抱き上げた。 「……いや……」 逃れようと身体を捻った私を優さんはそのまま運んでソファーに投げつけた。 びっくりして起き上がろうとしたら上に跨るように乗られて動けなくされる。 抵抗しない方がいい。頭の片隅でわかってるはずなのに身体がかってにじたばたと暴れてしまう。 「嫌だ!」大声を出した途端息ができなくなった。 首を絞められてる。 腕をどうにか外そうとしたけどできなくて。 「や……め……て……」声に出てたのかすら分からない。 無表情で私を見下ろす優さんと白い天井が滲んでどんどん暗くなって視界から消えた。