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2002/06/17 04:41:57
(M0cFOo/p)
★ ちびまる子ちゃんのお母さんのようなオバサンだった。
髪は天然パーマ、中肉中背の40歳くらいのヒト。
よく行く喫茶店で何度か見かけて、ある時、偶然にも落としたサイフを拾って貰い・・・。
「どうもありがとうございます・・・。」
「いいえ・・・。」
そんな会話で終わったものの、優しさ溢れるその女性に段々と魅かれていった。
勿論、結婚しているだろうなあ。
疑う余地のない事だった。
指輪をしていたし・・・。
雨の降る日、彼女に声をかけてみた。
「この前は・・・どうも・・・。」
「ああ・・・。こんにちは・・・。」
彼女の顔は、ちょっと驚いたようで、それでいて、にこやかだった。
「雨、降っちゃいましたね・・・。」
「ホント・・・ジメジメして、イヤですね・・・。」
「・・・。」
会話の途切れを感じて、僕は、もうダメだろう・・・と諦めた。
でも、彼女の声が・・・。
「よく、こちらへいらっしゃいますね・・・。」
「えっ?」
「何度か、お目にかけてますし・・・。」
「そ、そうですか・・・。」
その日は、それで店を出た。
三日後、ちょっとラフな格好で喫茶店に向かった。
彼女の姿はなかったが、何となく・・・彼女が訪れそうな気がした。
いつものコーヒーを頼み、約15分程経った頃、やはり、彼女の姿が・・・。
茶色のシャツに白いズボンの彼女。
特別に形容すべく格好ではないが、僕の眼に飛び込んだ彼女の姿。
「あらっ・・・こんにちは・・・。」
「あっ・・・どうも。」
彼女の方から、声をかけてくれた。
「おひとり?」
彼女のホホエミに満ちた顔。
「ええ・・・。」
同席するのか・・・と思ったが、彼女はそのまま違う席に座った。
誰かと、待ち合わせかな・・・。
でも、彼女は、ひとりだった。
僕も、そのまま、ひとりのテーブルに。
そして、次の日、驚くことが・・・。
いつもと同じように喫茶店に行くと、既に彼女がテーブルに・・・。
僕の顔を見るなり、彼女が小さく手を挙げて・・・。
「あのう・・・もしかして・・・○○さん?」
「えっ? どうして、僕のことを?」
「・・・やっぱりねえ。」
何と、今から20年以上も前の学生時代の同級生だった・・・彼女。
僕の方は覚えているはずもなく、彼女だけが僕を覚えていた。
僕を何度か見かけて、家で卒業アルバムを開いたらしい・・・。
「私の事、覚えてます?」
「いやあ・・・ゴメンなさい・・・。」
「それも、そうですね・・・。」
その会話は特に弾まなかったが、二人の間には淡い風が心地よく吹いていた。
「結婚して・・・別れて・・・長いこと、独りで・・・。」
「独り?」
「そうなの・・・バツイチね。」
「・・・。」
僕はテーブルの上に置かれた彼女の手を取った。
無意識に、彼女の手を握り、その指輪をなぞっていた。
「ちょっと、僕と・・・一緒に・・・。」
そんな言葉を言っただろうか・・・。
彼女は、拒むこともなく、僕に・・・。
駐車場に停めたクルマに乗せ、鄙びたホテルに・・・。
不倫。
僕には、結婚17年目の女房が居る。
でも、同級生だった彼女と、ホテルのベッドで重なった・・・。
40代直前の柔らかな肌、久しぶりに貪るように・・・彼女を抱いた。
ベッドに備えてあったスキンは使わなかった。
彼女も・・・何も言わなかった。
彼女の甲高い声、昇り詰める様子が・・・。
彼女の唇を塞ぎながら、彼女の中で果てた。
彼女の両手が、僕の背中にきつく絡みついていた。
そのまま、余韻を楽しむように・・・。
白い肌が目に眩しい彼女だった。
「こんなことに・・・なってしまって・・・。」
「いいの・・・。」
きちんと立場を知った上での言葉だった。
それから、喫茶店で彼女を見かけなくなった。
独り、コーヒーを飲みながら、彼女の顔を思い浮かべた。
雨の降る通りを見ながら、彼女が今にもやってきそうな・・・そんな思いに。
でも、幻影の如く・・・。
心には、ひとつの穴が。
いくら雨が降っても・・・埋まらない穴が。 ☆