2023/09/02 10:11:25
(N/1VhVnY)
長野県、新潟県辺りで青春時代を過ごした40~50代の諸兄らは記憶にあると思われる。
私が若い頃は、ツーショットダイヤルと言うものが流行っていて、出会いを求める男女が、某電話番号を通じて出会うのだが、それを楽しむ為には、男側はカードが必要で、そのカードは人気の無い農道等の傍らにひっそりと置かれた自販機で売られていた。
たしか、¥1000 \2000 \3000 \5000 \10000 位のラインナップだったと思う。
私がよく活用していた時は、まだスタービーチも全然と言っていいほど知名度が無かったので、そこそこのトークとフットワークの軽さがあればワンナイトから、セフレまで割と簡単に見つかった。
たしか週末辺り、金曜日だったか、土曜日だったかは定かではない。
夜中の0時を回っても全然、涼しくならない熱帯夜だった。
当時、私は20代の前半だったと思う。
親元を離れ、一人暮らしをしていた。
その頃は、スマホは勿論、携帯電話すら無い時代。
固定電話のみだった。
例の出会いのカードの残ポイントが結構、残っていたので使う事にした。
カードには専用の電話番号とパスワードが記載されており、そこへ電話して、アナウンスに従ってパスワードをプッシュ、或いはダイヤルすると使えるシステムだ。
一通りの操作を終えると、次は地域の選択になる。
自分の住んでいる地域を選び、男側は女性が電話の向こうに現れるのを待つのだ。
テレクラと違い、早取り等はなく、利用者には平等に順番に回ってくる。
そして、自分の番になるとアナウンスが流れ、会話が楽しめる。
平日の夜等は女性も少なく、1人目の女性が現れるまで2時間も掛かる事もあるのだと聞いた事があった。
幸い、利用をはじめて15分位で女性と繋がった。
名前を忘れてしまったので、仮名として、リサとしておく。
リサさんは私より3つ年下だと言ったのを覚えている。
結構、ここを利用している女性は太くて
お金目当ての援助が多いのだが、リサさんは別だった。
大学を卒業して、就職したら、勤務地がこちらとなり越して来てのだと言った。
今で言う、コミュ障!?
とにかく社内では仲良く出来そうな友人もまだ出来ず、彼氏も居ないのだと言っていた。
そして、食事とお喋りに付き合って欲しいとの 事だった。
了承して、待ち合わせ場所に向かった。
こういう時、たまにドタキャンされる事もしばしばあるのだが、少し早めに着いたつもりだったが、リサさんは最早、そこで待っていた。
私も車を降りて、挨拶を済ませ、リサさんを車に案内し、24hのファミレスに向かった。
最初こそ、車の助手席で借りてきた猫の様に静かにちょこんと座っていたが、ファミレスで食事を始めると段々と喋る様になってきたので、うんうんと聞き役に徹した。
食事を済ませて、リサさんもまだ時間があると言うので、夜の公園を歩こうと誘い、遊具が沢山ある公園に向かった。
夜の公園は、勿論、子供もその親達も居ない。
静かだ。
リサさんの恋愛遍歴等を聴きながら、ブランコに並んで座る。
自然と何方かが漕ぎ出すと、2人でゆっくり漕ぎ出してしまう。
するとリサさんも楽しくなってきたのか、笑いながらブランコを漕ぎ始める。
夜の公園ならでわの必殺技だ笑
段々と打ち解けてくる。
他に誰も居ない公園の遊具を2人占めして、次はシーソー、次は滑り台、またブランコと服が汚れるのもお構い無しで遊んだ。
その間、かなり話も弾んだし、リサさんの事もかなり聞けた。
空が白み初め、帰ろうとなり、リサさんを送った。
家に帰ると留守電が入っていて、再生するとリサさんからだった。
「今夜、もし良ければ、また会ってください」
そう、こういう、所謂、出会い系で即日ホテルの女性と長続きした覚えがないので、会ったその日にホテルには誘わない様にしていた。
その夜、再びリサさんと会い、何処か行きたい所は?と聞いた。
「夜景が見たい」
そこで山の上まで車を走らせ、姨捨山に向かった。
途中のコンビニで食べ物やら飲み物をしこたま買い込んで。
この姨捨山の見晴台は、眼下の街並みから、遠く長野市まで一望出来る。
そして、直ぐに後ろを車が通り、手を出しずらい場所なのだ。
女性からしてみると、この方が少し安心だろう。
そう思って此処を選んだ。
「こっちが戸倉だよ?」
「あっちの車が沢山走ってるアレが長野大橋」
とか、そんなどうでもいい様な話が丁度いい。
車の中でコンビニで仕入れてきた食べ物と飲み物で口の中を膨らませながら、ゆっくり時間を過ごした。
ここで、お酒は飲める?の話題を振る。
リサさんは、この所、1人で家でずっと飲んでいたと話した。
でも、1人で飲んでも楽しくないとも。
「来週、良かったらお酒飲まない?」
リサさんもソレは言いたかったみたいだ。
二つ返事で、また来週に会う事になった。
そして、翌週。
街中で待ち合わせをして、居酒屋に入り、2人でお酒を飲んだ。
本当に、嗜む程度だった。
それはリサさんも同じようだった。
「あまり、酔いたくはない」
リサさんはそう言ってくれたので、しゃあ、って事で居酒屋を後にした。
お酒を飲むので車では来ていないのでタクシーを呼び、駅前のビジホに行った。
その日も土曜日だったか、金曜日だったか…
洋画が終わる所だった。
2人でベッドの上で何となくくつろいで、テレビを付けていた。
「もう1本づつ、飲まない?」
俺がそう聞くとリサさんも首を縦に振った。
エレベーター前の自販機でビールを2本買って、リサさんの元カレの話から、セックスの話しへ持って行く。
見え見えだろうけど、こういう時は、むしろそれくらいがいい。
(リサさんで興奮出来る、リサさんと繋がりたいと思っている)
と敢えて出した方が、リサさんもそういう気持ちになっても恥ずかしがらずに済む。
当然、私の側も聞かれる。
当然、セックスの話題になると余計、お互いにセックスを意識する。
酔いも手伝ってくれる。
頃いい所で、自分が先にシャワーに行き、身体を洗って出てくると、リサさんも「じゃ、私も」とシャワーに行った。
ビジホなので雰囲気の出るような照明なんかはない。
電気を消して、テレビを付けると丁度いい暗さになる。
掛け布団の上で横になって寛いでると、リサさんがシャワーを済ませて出てくる。
「暗いよー」
と言った顔は笑っていた。
自分はスっと立って、リサさんを抱きしめた。
抱きしめたまま、頭を撫でて
「嫌?」
と聞くと、小さく首を横に振りながら
「うんん 嫌じゃないよ」
1度目が終わり、すっかり打ち解けて
リサさんは本性を表す。
終わったばかりの俺のチンコを口で咥え始める。
1度目も思ったが、とても上手い。
自分も20代だったので、忽ち、復活。
多分、この頃、夜中の2時くらい。
そして、2度目が終わり、一緒にシャワーをして、流石にお酒はもう飲む気がしなかったので、ビジホの直ぐ近くのコンビニで2人で買い出しに行った。
400m走を2本こなしたのだ、お腹もすく。
ビジホに戻り、すっかりセックスの話で盛り上がりながら、夜食を食べ、2人で布団に入った。
さほど寝ていなかったと思う。
寝入っていた自分は、違和感でも感じたんだろう、何となく目が覚めると、その筈だ。
リサさんが俺のを咥えていた。
目つきも変わっていた。
「ちょ、ちょっと、どうした?」
そう声を掛けると、リサさんは、ハッと我に返ように
「えっ!あっ、ごめん、寝てたのに起こしちゃったよね」
この時は、全然気づいてあげられなかったが、リサさんは依存性だった。
日が昇るまで、結局はセックスをした。
それからは、週末の度に会っては自分の家に招いたり、招かれたりしながら、会っていた。
やがて、冬頃。
俺は、リサさんがセフレなのか彼女なのか、よく解らなくなっていた。
「付き合って欲しい」と言うとNo
「お友達?」と聞くと、それもNo
若いせいだった。
はっきりさせたくなっていて、少しキツく詰め寄ってしまった。
それを境にリサさんからは段々と連絡が来なくなり、こちらから連絡をしても段々と会えなくなっていってしまった。
翌年の春頃になるともう、完全にアウトだった。
何年だろう?
暫く月日が流れ、友人の結婚式でバッタリ。
リサさんは、新婦の友人席に座っていた。
気づいた方がいいのか?
気づかない振りをするのがいいのか?
頭はそればかりで、全然、友人の結婚式に集中出来なかった。
式が乾杯になり、それでもと思って、リサさんのテーブルにお酌に行く。
リサさんは、俺の顔を見るなり
「あっ!久しぶりだね!元気にしてましたか!?」と。
こっちは拍子抜け。
細かい話は、後で。と言われ、箸が収められていた紙に電話番号を書いて渡された。
席に戻ると、同じテーブルの友人達に「おいおい、誰だよ、あの美人!」
だとか
「なになに!?いつの間にあんな美人と知り合ってる訳!?」
等とはやし立てられたが、聴こえるはずもなく、リサさんとの思い出に浸っていた。
二次会に少しだけ顔を出し、そそくさと抜けて、リサさんの電話番号に掛ける。
この時には、やっと携帯電話が横行していたので、この時は本当に便利だと思った。
そう、友人達に妬まれる程、リサさんは美人だった。
リサさんは、細いジーパンに白いブラウスの様な服を着て現れた。
数年前のリサさんとは、違っていた。
垢抜けたし、とても明るかった。
近況とか話しながら少し歩いた。
そこで、衝撃の事実を聞かされる。
「ね?覚えてる?私と付き合いたいって言ってくれてたよね?」
ああ。短く答えた
「ごめんね、実はあの時ね、旦那持ちだったの。」
「ええええっ!」
更に今はフリーであって、ずっと俺との事が後悔が残っていたと言う。
が、為に自然消滅を望んで連絡をしなくなったと話してくれた。
「そちらは、どう?もう、決まった女性(ひと)は、出来ましたか?」
俺も忘れる訳が無かった。
いつしか、BARに入って2人だけの二次会を始めていた。
カクテルのグラスを傾けながらリサさんは「ねぇ?私って、あの頃の私って、セックス依存性だった?」
口に含んだウイスキーを吹き出しそうになった。
「どうしたの?突然?」
リサさんは、グラスの中のカクテルを柄の長いスプーンでも手遊びながら
「私ね?それが原因で旦那ともダメになっちゃったのよ」
そうだよ、とも言えずに
「そうだったんだ」と答えると
「なによ、知ってたんじゃないの?」と言ってクスクス笑った。
「じゃあ、今もなの?」と野暮な事を聞いてしまう。
「さぁ、どうかな?試してみる?」
イタズラな眼。
数年前のリサさんとは違った。
以前のリサさんとのセックスは野生じみていると思った事があった。
しかし、今のリサさんは大人の女性だと思った。
自分よりもずっと大人に思えた。
セックスにもそれは現れていた。
1度目のセックスの後、リサさんは
「ねえ?どうだった?昔の私。今の私。…私、これから普通に恋愛出来るかなぁ?」
「恋愛。出来よ。って、今はフリーなんだっけ?オレもフリーだけど?」
じっと俺を見つめてくるリサさん。
セックスが終わり、メイクを落としたリサさんの顔を見ていると幼く見えるのに、セックスはとても大人に思えた。
(不思議だ)
不意に「あれ、オレと付き合おうとか、言わないんだ?」
また、イタズラな眼をして俺の顔を覗き込む。
「まだ、間に合うかな?」
そうマジマジと俺の顔を覗き込んでるリサさんに聞くと
「どうだろー?もう1回、シテから決めようかな?」
リサさんが亡くなって、もう10年くらい経つ。
あの後、リサさんと結婚。
子供は2人。
2人とも女の子。
上の子は、大学卒業に追われている。
妹は、大学受験に追われている。
2人の娘もリサさんを愛していた。
死因は、癌だった。
聞かされた時、もう余命が殆ど無かった。
覚悟をする前にリサさんは旅立ってしまった。
いずれ、2人の娘も家を出る。
また、1人になる未来が見えている。
でも、きっとこれからもずっとリサさんを愛していると思う。
遺影のリサさんは、いつもワンピースを着て、こちらを向いて笑っている。