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2026/05/24 06:46:30
(kfh0jPbb)
九歳の時。
犬を連れて家の周辺をぐるぐるしていた。
自動販売機が三つ並んだ所にベンチがあって、そこでジュースを飲んでる男の人がいた。
あの頃の私から見るとおじさんなんだけど、実際はそんなにおじさんでもなかったのかもしれない。
その人は私が連れている犬に気づくとニンマリして犬を見ていた。
犬はおじさんに向かって走った。
おじさんは嬉しそうに犬の喉を擦っていた。
私に犬が女の子か尋ねてきた。
当たっていた。
おじさんはこの辺に温泉入れるところあるかと言った。お風呂に入るだけでもいいとこだと説明してくる。
「うちお風呂入れる。」
おじさんは笑った。私が自宅のお風呂を入れると答えたと勘違いしたのだ。
でも、勘違いしたのはおじさんの方だ。
私のお父さんの実家は温泉宿をやっていたのだ。
私はおじさんを連れて玄関からおばあちゃんを呼んだ。
おばあちゃんはお客さんだとわかったようだ。
「犬の先生だって。マールは健康だって!」
おじさんは獣医で、犬の歯茎とかを見て健康だと褒めていた。それで獣医だと教えてくれたのだ。
おばあちゃんはそれはそれはと、100円のタオルをサービスしていた。
私が男湯に案内した。
私からすると薄暗い陰湿な旅館だが、おじさんは風情があっていいと感心していた。
ちょうど泊まり客もいないシーズンオフで、本日は開店休業だからごゆっくりとおばあちゃんが言っていた。
案内すると、私はおばあちゃんから渡されたおやつをロビーで食べるつもりだった。
お風呂の近くに、お土産なんかを売っているスペースがある。
卓球台を見ておじさんは懐かしそうにしていた。
「私もできるよ」
勘で相手がいたらやりたそうな顔をしていると思ったから言ってみた。
そしたらじゃあお風呂の前にやろうかと言ってきた。
一汗流してからひとっ風呂というわけだ。
私はいちおうおばあちゃんに卓球やっていいか戻って聞いた。
おばあちゃんもついてきて、孫の遊び相手までさせちゃってすみませんなんて挨拶してた。
それから夫婦共稼ぎだからほったらかしになりがちでなんて話して戻っていった。
「終わったら部屋に戻って宿題するんだよ~…」
と、私に呑気な言葉をかけながら。