◇車との衝突さけ移設－－北九州・小倉北区
　北九州市出身の旧陸軍元帥、杉山元（はじめ）（１８８０～１９４５）の生
家跡（小倉北区紺屋町）の石碑が「復活」した。車に衝突されて根元が折れる
などしたため、碑のそばにあるビル所有者、於保初男さん（６２）が自宅で保
管してきたが、郷土史研究家らの尽力で約２０年ぶりに日の目を見た。【千代
崎聖史】
　◇終戦直後にピストル自殺
　「杉山大将誕生之址」と書かれた碑が建てられたのは１９４０年ごろ。杉山
元帥は３７年に陸相に就任、４３年には元帥に上り詰めた。だが本土決戦に備
えて設置された第１総軍司令官として戦後の残務処理にあたっていた４５年９
月１２日、東京・牛込の同司令部でピストル自殺。敗戦の責任を感じたとみら
れ、夫人も同日、東京・世田谷の自宅で自殺した。
　高さ約１メートルの直方体の碑は、高校１年生だった於保さんの一家が旧八
幡市から転居してきた６０年当時は、周囲から取り残されたようにぽつんと
建っていたという。於保さんは「車が衝突したりして何べんも折れかかった
が、父がそのたびに修理していた。以前、１階で喫茶を営んでいた時にはお年
寄りから由来を聞かれたこともある。通りがかりに拝んでいく人もいた」と振
り返る。
　二十数年前にいよいよ折れてしまい、自宅倉庫で保管することに。所在を探
していた「小倉郷土会」関係者が一昨年、於保さんを訪ね、修復して建て直す
ことで話がまとまった。破損を避けるため、道路を管理する市とも協議し、以
前あった道路上から於保さんの敷地内にずらして設置した。
　於保さんは「親父（おやじ）が大事にしていた碑。大切に見守りたい」と話
している。