浮気こそ認めたアヤカでしたが、
相手についてはなかなか口を開きませんでした。

「とにかく話をしてくれなければ分からない」
と説得すると、
重い口を引きました。

相手はネットで知り合い、
年齢はなんと５０歳近く、
独身のオッサンだと言うのです。

なんでそんな相手と…

またそこで口を閉ざしたアヤカに、
「ちゃんと話しないならもう離婚で決まりだぞ」
と言うと、
やっと素直に話はじめました。

なんとアヤカは、
そのオッサンに金で買われていたのです。

ある日、
アヤカが私にセックスを求めてきました。

私はモヤモヤした気持ちを晴らすようにいつも以上に激しく抱きました。

セックスが終わりシャワーを浴びて戻ってきたアヤカに、
私は実は書類を見てしまったことを伝えました。

アヤカは俯いて黙っていました。

しばらく沈黙が流れ、
私から口を開きました。

「浮気…しているのか？」

そう聞くと、
アヤカは途端にボロボロと涙を溢しながら
「ごめんなさい…離婚しないでください…ごめんなさい…」

私はアヤカを抱き締め、
しばらく落ち着かせました。

中絶は、
書類を見てしまった日からつい１週間前に行われていました。

思い返せば確かに、
アヤカがここしばらく体調が悪そうに見えたり、
やたら不機嫌な時がありました。

そういえばセックスも少なめで、
数日前も断られたところでした。

それら心配もあって自宅に寄ったのです。

しかしそれから１ヶ月以上、
私はそのことをアヤカに聞くことが出来ず、
なんとなくアヤカを抱くことも避けてしまいました。

その日、
仕事中だった私はたまたま自宅近くで空き時間を持ってしまったので、
アヤカを驚かせようかと黙って自宅のアパートに帰ってみました。

しかしアヤカは出掛けてしまっていていませんでした。

仕方なくリビングのソファーでくつろいでいると、
目の前のテーブルに置いてあるアヤカのノートパソコンの下に、
何やら封筒があるのを見付けました。

手持ち無沙汰だったせいか妙に気になり手に取りました。

無地の大きめな封筒。

中を確認すると、
書類には産婦人科の文字。

そして妊娠していることを報告する内容が書かれていました。

私は歓喜しました。

私としては早く子供が欲しいと思っていたのですが、
思ったようにはできずにいたのです。

アヤカもなかなか出来ないことを気にしていたようで、
その話をしたときにかなり暗い顔になってしまい、
それ以後なんとなく話しにくい感じでいました。

私は嬉しさで書類をめくっていきました。

しかし数枚めくったあとの書類を見て、
私は頭を殴られたようなショックを受けました。

そこには中絶したことが分かる記載がされていたのです。

何故せっかく授かった命をおろしてしまったのか、
しかも私には何の相談もなく…

私はどうすることもできず、
そこにいては行けない気がして、
書類を元に戻し、
家を慌てて出ました。