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故郷の想い出

投稿者:秋坊 ◆Ex5V35VXQI
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2011/11/30 20:34:42 (i79lEg1t)
飾り気の無い古い車両のJR線。屋根もない質素なホームに僕は
降り立った。懐かしい潮の匂いが鼻をくすぐった。静○県福○駅。
この駅に降りるのは何年、いや何十年ぶりだろう。この小さな港町で
生まれ、高校卒業まで暮らした。取り柄といえば、町を上げて盛大に
行われる秋祭りだけの、この退屈な故郷が嫌で高校卒業を待って飛び出した。
母を幼い頃無くし、酒浸り父とは折り合いが悪かった。だからこの町を
捨てる事には何も躊躇しなかった。
古い駅舎をくぐると耳に懐かしい「お囃子」の音が聞こえてきた。
週末から秋祭りが始まっていた。何も思い出が無いこの町だが、ひとつだけ
淡い記憶があった。高校卒業まで仲の良かった恭子の事だった。
美しい訳ではなかったが、優しく明るい良く気が付く女だった。まだ幼く
世間も知らない二人だったので、身体の関係など考えた事も無く、僕が上京する
事を決めた時も反対する事なく背中を押してくれた。それこそ上京の日、このなんら今と変わらない
ホームで悲しげに・・でも笑顔で見送ってくれた女だった。
それからずっと、その故郷の女を振り返る事無く数年経った頃、古い友人から
恭子が病気で無くなったと聞いた。産後の日だちも悪く、病気が重なったらしかった。
僕は何故か泣いた。一晩中泣き明かした。その時初めて、故郷に残していた・・
大切な忘れ物が何だったかを知ったような気がしたからだった・・・・

今回故郷に来たのは、痴呆とガンで逝った父を故郷の墓へ納める為だった。数年前に
もう一人で暮らすことのできない父を、関東の病院へ呼び寄せた。わがままで強欲な
父親だったが、僕の提案に抵抗もできないほど老いていた。
小さな菩提寺に我が家系の墓はあった。祭りの日で、墓参りの人などいなかった。遺骨を
持って通路を歩いていると、正面から水桶と柄杓を持った少女が歩いてくるのが見えた。
髪が長く、黒い大きな瞳と情の厚そうな唇の少女だった。何か懐かしさをおぼえる「田舎の少女」
だった。軽く会釈をして通り過ぎた少女から、潮の匂いと洗いたての髪の匂いがしたように思えた。

町に一軒だけあるホテルの窓から、祭りでにぎわう町を眺めていた。大きな車屋台にはお囃子隊が乗り
横笛を奏で、太鼓の音が響く。浴衣姿の子供の手を引く母親の姿が、懐かしく・・悲しかった。
町を歩こうと思った。この祭りの中に溶けてしまいたかったからだ。
祭りの中をあても無く歩き、町はずれの国道まで出た。国道脇の、今では珍しい電話ボックスの
薄暗い明りの下に、その少女は座っていた。あの霊園で見た少女だとひと目でわかった。

「どうしたんだ?気分でも悪いの?」
「うん。さっき飲み慣れてないお酒飲んだの・・・おじさん、さっきのお墓参りの人?」
「ああ。僕も気が付いたよ。若いのに感心だなって思ってた。」
「ここの人?見たこと無いけど・・・」
「そうだよ・・・と言っても、もう離れて何十年ってとこだけどね」

その少女はエリと名乗った。18歳で来年卒業だと笑った。
何故か、エリは僕に警戒心も見せる事無く、自分の話を一生懸命話した。
少し酔っていたのか、あまり友人もいなく、自分は学校でも浮いた存在だと話す時には
少し涙を浮かべた。母を生まれてすぐ亡くし、顔も知らないとすこし悲しげにほほ笑んだ。
僕は、自分でも信じられないのだが、どんな感情なのか理解できないまま・・
その少女を抱き寄せていた。二人で、無言のままホテルに帰った。
祭りの、この世の雰囲気とは思えない空気のせいだろうか。
僕とエリは身体を重ねた。処女では無かったが、まだ男の匂いもしない、
しなやかな美しい身体だった。細い腰と豊かでは無いが張りのある乳房・・
僕は中年のくせに、女の身体すら知らない少年 のようにエリの身体を貪った。 
会って数時間の少女と性行為をするなど思いもよらない事だった。それだけに
僕は興奮していた。深く深くエリの身体に僕は自分を沈めた。エリは時折、身体をよじるように
しながら、子猫のような声を上げた。僕はエリの潤んだ性器の虜のようだった。
エリの膣は優しく僕を抱きしめるように、時折波打つように震えた。細い腰と
頭を抱き寄せ、僕は離れたくないと思われんばかりに抱きしめた。その瞬間
エリの身体深くに思いを吐きだした。長い時間だったような気がする。僕はエリと
一つになったまま、エリの顔に話しかけていた。

「嫌じゃないのか?こんな知らないおっさんに抱かれて」
「嫌じゃないよ・・・なんでかなぁ・・・解らない・・・ 
   でもなんだか幸せな気分・・・おかしいね・・」
エリはクスクス笑った。そして身体を離した瞬間、エリのアソコから流れ出てくる
精液を手で押さえて大きな声で笑った。

「うわぁ、すごい。こんなに出るんだ?」
僕も大笑いした。それから何時間も、寝る時間も忘れて僕らは話し込んだ。
腕枕をした僕の腕は、エリのサラサラの髪で少しくすぐったかった。
僕らはキスをして、また思い出したかのように身体をまさぐり合った。
もう二度と会えないかと思い合っている恋人同士のように・・・
時間を惜しむように・・・

翌朝、僕とエリは一緒にホームに立っていた。

「電話してね。私、卒業したら東京行っちゃおうかな^^」
少しためらいながら僕は言った。
「もし本当に来るのなら、力になるよ。」
「ほんと?でも あたし恋人にはならないから^^」
「当たり前だよ。俺はもうおっさんだよ。エリちゃんには不釣り合いだ・・」
少し、ウソをついた気がした。でも半分以上、そう思った。
列車の扉が閉まり、走り出した。ドアのガラスの向こうでエリが何か言っていた。
少し悲しげな、でも・・・確信は無かったが、きっと僕たちはまた逢えると信じて
いるような細くはかなげな笑顔・・・見覚えのある笑顔だった。僕は悟った。
ドアのこちら側で涙が止まらなかった。僕の忘れ物はまだ待っていてくれたんだ・・・・

東京にも春が来た。寒い風がやんで代わりに暖かい春の風が吹いて、その風は
僕の故郷から忘れ物を届けてくれた。エリは母親の写真を持って東京にきた。
その写真に写った一人の女性を見ても僕は驚くことは無かった。
長い時を越えて、恭子は逢いに来てくれた。エリは言った。

「あたし お母さんの代わりはいやだよ^^ ちゃんと愛してくれる?」
「どうかなかなぁ・・・エリのママはとても素敵な人だったからなぁ・・」
「えーー?マジでぇ?」
ワザとらしくふくれるエリの顔を見て、僕は大笑いした。エリも下から見上げるように
僕の顔を見て笑った。優しく、愛おしいモノを見るよう笑顔で・・・
僕ら手をつないで歩いた。きっと父親と娘にしか見えないだろう。
でもそんな事はどうでもいいと思った。エリとずっといっしょにいたいと思った。
並んで歩く銀杏並木が、東京の春の風で揺れている。
 
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6
投稿者:d
2011/11/30 23:57:39    (aMa/Cw84)
上手いやんけ!
文才あるよ。
5
投稿者:(無名)
2011/11/30 23:11:46    (463hbLS8)
今年一番の傑作やね。
大賞を決めるならこれに1票
4
投稿者:何か変?
2011/11/30 23:06:47    (8Fq.1TZl)
短い文面の中に叙情的な世界が広がり、自分に昔日を思い出させてくれる短編映画のようでした。
3
投稿者:(無名)
2011/11/30 22:56:40    (Fm5NQkzo)
ちょっと感動しちゃいました。
短編小説読んでるみたいです。
2
投稿者:(無名)
2011/11/30 22:48:51    (KCf8j.PH)
文学的かつ、こころに染みるやん・・・
エロい期待したのが恥ずかしいくらいや!

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