2025/06/07 18:35:28
(YuvTIyEH)
夕暮れの駅のホーム。誰もが電車を待っていた。男子高校生二人組が楽しそうに話している。制服が違うため恐らく学校は違うが、同じ電車に乗る関係で親交がある。
そんな彼らの会話が、少し離れたところにいる若い女―大学生の清水クミのもとに、風に乗って届いてくる。
(うちの従弟が通ってる高校の制服じゃないわね…。2人とも今風の制服だわね。)
しかし次の瞬間、クミはこの2人の会話に度肝を抜かれてしまう。
「カズアキ。お前、通ってる学校の教師でシコったことあるか?」
紺の制服の少年のあまりにストレートな質問に、清水は思わず眉をひそめる。しかし、深緑の制服の少年の返答はさらに清水の予想を超えるものだった。
「ない…ということにしておこう」
否定しきらないその言葉に、清水は内心「なんだこいつら…」と呆れる。さらに橋本は畳みかける。
「俺はあるよ。小学校の頃担任だった佐久間宏子。あの銀縁メガネ越しの冷たぁ〜い目で見下されて犯されてぇ…。あいつ独身だったから、ワンチャン俺でも付き合えんじゃねえ?」
(ハッ…)
清水は思わずため息をつきそうになった。しかし、紺の制服の少年の言葉はさらに衝撃的だった。
「こんなにあっさりと認める奴がいるか。まあ、実は俺もあるんだけどな。俺さ、担任の飯塚にガチ恋勢。飯塚ってボクササイズ習ってるらしいから、理科室に呼び出されてボコボコに殴られて体力消耗させられて、手コキとかでイカされたいわ。きっと生物部でうちのクラスの染谷くんは毎日これを体験してるだろうな。羨ましいような、気の毒なような。」
(ボクササイズでボコボコに殴られて、手コキ。で、それを生物部の子が毎日体験していると……。馬鹿じゃないの、こいつら…)
清水は、高校時代の学級委員長経験で培われたクールな視線で、彼ら二人を射抜いた。彼らの話している内容は、清水の理解の範疇をはるかに超えていた。最後の「お互い、ドMの悩みもなかなかなもんですなあ」「ですなあ」という会話に、清水はもはや何も言う気になれなかった。夕焼けに染まるホームで、清水はただひたすら電車の到着を待った。