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2022/02/13 19:15:34 (6ew4Hpg6)
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時に、女性のスカートに対して「隠しきれていないからエロいんだ。」と言う人がい
ますよね。それに通ずるような体験です。



だいぶ前の秋に、合唱コンクールの地方大会があった。
私も高校の合唱部員としてコンクールに出る事になった。合唱部は全員で40人という
大所帯で、強豪校には及ばないが、それでも中堅校程度の実力はあったと思う。

当然実力があるなら顧問は力を入れるワケで、部員それぞれの体調管理にまで気を配
っていた。
さらに、今度の県大会でライバル校に下剋上をする気らしく、その年の練習はいつも
以上に厳しかった。
そんな調子だったので、2つ先の県で県大会が開催されるところに、2日前から現地入
りした。そして大会当日まで強化合宿を行った万全の状態で、県大会に臨むことと
なった。


出発日、私たちを乗せたバスははるばる4時間かけて県大会が行われる都市へと出発
した。
前日に口頭で連絡されていた通り、バスの中では感染症対策(流行るような時期では
なかったが)として、全員にマスクの着用が命令されていた。
また合宿中も任意で着用可とのことで、先生の本気度がひしひしと感じられた。

朝会の時点で持参したマスクをすでに着けている部員も見受けられた。そんな中で、
少し焦った表情を浮かべる女子がいた。
私と同じ2年生の「裕子さん」だ。裕子さんは普段マスクをあまり着けないし、高校
では給食もなかったのでうっかりマスクを忘れてしまったのだった。


朝のスケジュールには余裕がなく、15分後には乗車完了の予定なのだ。裕子さんは
数人に予備のマスクを持っていないか聞いたが、ほとんどの人が行きのバスでしか着
用しないらしく、誰もくれなかったようだ。
暗い表情の裕子さんだったが、顧問はこれを想定していたらしく、バスの中で「マス
ク全員分配布するから、一人一枚取れ。」と呼びかけた。
裕子さんはほっとした様子だった。

顧問が通路を歩きながらマスクを渡していく。しかし何やら前列の様子がおかしい。
女子の「マジなの?」とか、「なにこれ~ww」という声がかすかに聞こえる。通路向
かいの裕子さんも、これを受け取った。もちろん私も同様だ。
ホッとした表情だった裕子さんは、受け取ったマスクを見て表情を変える。


そのマスクは一見普通の大人用のでかいマスク。プリーツタイプと言うのかな。まぁ
高校生なのだから、顔に対してでかすぎるという事はないだろう。
しかしパッと見た時点でその異常性に気付くだろう。マスクを持っている指が、一本
一本ハッキリと透けている。鼻の所に入っているノーズワイヤーも、はっきりと透け
て見えた。ぺらっぺらだのだ。

そんなマスクを、年頃の女子が素直に着用するはずがない。単純に恥ずかしずぎる。
大半の部員は、受け取った直後にクシャクシャに丸めて制服のポケットやバッグにし
まい込んでしまった。そりゃあ速攻でゴミ箱行きだろう。
わざわざ自前のマスクを捨ててまでこんな恥ずかしいモノを着けるメリットもない。



そんな中でただ一人、黙々と着用準備をしている人がいた。そう、裕子さんだ。
裕子さんは女子にしては少し顔が大きい。とはいえ、大人用マスクのサイズはギリギ
リ合っているがゴム紐がゆるく、口を少し動かしただけでズレてしまう。
裕子さんは知恵を絞って、ゴム紐を耳の後ろで結んできつくして、マスクがズレない
ように工夫していた。

一回結んだだけでは納得いかなかったらしく、ゴム紐には3つ輪っかができていた。
ゴム紐をきつく結んだことによるフィット感に満足したのか、ノーズワイヤーをしっ
かりと折り曲げて鼻に合わせ、プリーツを全開に伸ばして、目下から顎の奥まで完全
に顔を覆った。

本来なら完璧なマスクの着け方だが、スケスケなマスクがその意味を帳消しにした。
目から下を全て覆っているが、遠めに見ても鼻の穴と唇のシルエットがはっきりと見
透かせてしまう。
横から見ると目下から顎の奥まで覆っているマスク越しに、裕子さんの横顔の輪郭が
ハッキリと見てとれた。

そんな裕子さんのマスク姿を見て、隣に座っているSさんが「裕子それ恥ずかしくな
いの?」と可笑しそうに聞いたが、裕子さんは「息がこもらないから案外いいかも」
と好感触なようだ。
女子というのはお喋り好きで、コンクール会場に向かう道中、裕子さんは隣のSさん
と長時間話しっぱなしだった。Sさんは普通のマスクで、話が盛り上がると苦しそう
にマスクをつまんで換気していたが、裕子さんのマスクはスケスケ故に全く苦しそう
な素振りは見せなかった。


そして夕方頃、バスはようやく会場となるコンサートホールに到着した。
到着して降車すると同時に、大抵の部員はマスクを外し、気持ちよさそうに深呼吸し
た。
そんな中で裕子さんは、降車してもマスクを外そうとせず、そのまま合宿先の宿泊所
へと入っていった。

宿泊所には集会用の小ホールが数部屋あり、休憩後にまずは男女ごとに分かれ、夕飯
後に全員で仕上げの合唱練習をすることになった。
顧問は「体調が心配だったらマスクを着けたまま歌っていいぞ」と言っていたが、そ
んな事をする部員は男子にはいなかった。

夕飯後、いよいよ全体合唱だ。2部屋の仕切り板を外して合体した大部屋に部員が終
結した。裕子さんも入ってきた。あろうことかあのスケスケマスクを着用している。
他にもマスクを着けた部員は少数いたが、指揮者が台に上がると、ほとんどがマスク
を畳んでポケットにしまった。裕子さん以外は。


いよいよ合唱が始まる。裕子さんの声はマスクに阻害されることなく、美しく響き渡
った。さすがはスケスケマスクだ。
しかし、いくら通気性が抜群といえど、裕子さんのブレス(呼吸)に伴ってスケスケマ
スクは激しく膨らんだりしぼんだりした。
合唱中は、裕子さんの大きく開いた口ばかりでなく、白い歯までマスク越しにハッキ
リと透けて見えた。



目が離せなかった。謎のエロさだ。隠せているつもりで、全く隠しきれていない。こ
れがどんなに罪深い事か。



その日は夜9時まで練習し、終了した。
翌日、練習はもちろん早朝から始まった。裕子さんは当然のごとくスケスケマスク着
用で参加した。
今日も相変わらずの、裕子さん自慢の声量だ。歌声の調子は最高なようにに感じた。
時間はあっという間に過ぎていった。

その夜は変則的で、夕飯後7~8時まではとなりあった2部屋で男女別練習、お風呂
を挟んだ後にとなりの女子部屋と合体させて9時から練習再開だ。
私は疲れもあってか、お風呂で湯あたりしてしまい、仕方なく一人で練習部屋の準備
をする事にした。
とはいっても、仕切り板を折り畳むだけの簡単なお仕事だ。作業はすぐに完了した。
まだ時間があったのでモップで掃除しようと床を見ると、並んだファイルが目に入っ
た。

ファイルは女子部員のもので、全員分並べて置かれている。
ファイルには自分が歌うパートの楽譜や、改善点と良い点を箇条書きした「意識向上
シート」なるものが入っている。正に中堅校らしい取り組みである。
女子部員の中には、お風呂に入るからかファイルの上に髪留めなどを置いていく生徒
も見受けられた。

辺りをよく見ると、私はとあるモノを発見した。マスクだ。スケスケの。
ゴム紐は何度も結んだらしく、3つの輪っかができている。これは裕子さんのマスク
だ。ファイルに名前が書いてある。「2-4○○裕子(一応伏せます)」と。
私は我慢できず、素早く周りを見渡す。みんなお風呂なのか誰もいない。
なるべくマスクを型崩れさせないように綺麗に畳んでジャージのポケットに入れた。



行くあてのない私は、目に入ったトイレのバリアフリー個室に入った。学校のトイレ
と違ってしっかりと掃除されており、臭さは皆無だ。うってつけだ。

ゆっくりとポケットからマスクを取り出す。
スケスケマスクは一日中、裕子さんの激しい吐息に晒されたからか、元々柔らかかっ
たものが、さらにハリを失ってフニャフニャになってしまっている。
よくマスクを見ると、どうやら一層タイプのようだ。こんなの売ってるのか?

というかこれ、昨日から着けてたやつかもしれない。
だって一回着けたなら、どれくらいゴム紐を結べばいいかなんて分かるはずだ。間違
いを、同じ回数繰り返すなんて考えられない。否が応にも期待が高まる。

ついに装着した。ゴム紐がきつすぎて耳が痛い。そして猛烈なクサさが鼻を突いた。
丸2日間、裕子さんの荒い吐息だけでなく、歌うために大きく開いた口から飛び散っ
た、ツバを受け止め続けるスケスケマスク。
その通気性でもどうにもならない程にクサい。酸っぱいどころではない激臭だ。

私はすぐにマスクを畳んでポケットにしまう。そして足早に部屋に戻り、ファイル上
に置いた。
その日はなかなか寝付けなかった。あの記憶が鮮明によみがえる。明日は本番なのに



合唱コンクールの結果は、惜しくも全国出場ならず。
本番ではさすがにマスクは着用禁止だ。裕子さんもそれに従ってマスクを外した。
本番は昼過ぎで、学校に帰るには遅かったため、最終日も施設に戻って合宿だ。その
日は、あの夜のように男女別で反省会をしてから、お風呂後に全体ミーティングをし
て就寝という流れだ。

私は、体を洗っただけで手早くお風呂を上がる。湯あたりはしていない。
誰もいない、練習部屋。仕切り板をずらして準備した。床にはやはりファイルが並ん
でいる。
もちろん、裕子さんのスケスケマスクも置いてあった。無言で取ってポケットに隠し
て、例のトイレに入った。


ゴム紐が3回結ばれたスケスケマスクは、丸3日間裕子さんに酷使され、さらにフニ
ャフニャになってしまった。
ためらわずに着ける。結果は分かっていたが、クサさはさらに増していた。
流石にここまでくると、裕子さん本人も気になるらしく、Sちゃん等に「配られたマス
クない?」とか聞いていたが、ほとんどの部員は配られた日に、ゴミ箱へ捨ててしま
ったようだった。
マスクは嗅いだ後にそっと返しておいた。

翌日、帰りのバス内でも裕子さんはスケスケマスクを着用していた。喋った後、いか
にも臭そうにマスクを外して、空中でひらひらさせたり、ティッシュで口の辺りを拭
いたりしている。
にも関わらず、再び着ける際は全体のフィッティングを調整するという凝りようだ。



正直、隙間なく着けても、スケスケマスクではウイルスの一つも防げないだろう。
どんなに大きくても、喜怒哀楽の表情さえも隠せない程に薄いスケスケマスク。
そして、スケスケで恥ずかしく感じながらも、そのマスクを着用して全力で歌う裕子
さんの凛々しい姿。
そのギャップがたまらなかった。
 
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