待っててあげるから…。
あまり待つのは得意な方ではない、
自分のペースで、自分のタイミングで楽しむことケースが多い男にとって、自分でも不思議な提案だった。
偶然と言うべきか、凛花が誤って本垢で連絡してきたことで一方的に先に情報が得られたことが大きかった。
容姿、雰囲気は言うまでもないが、制服姿を目の当たりにしたことで確実な年齢層が見えたことは大きい。
メッセージでは、年齢にも容姿の情報にも触れていない。
もし、最初から裏垢でメッセージが着ていればこうはなっていなかったのではないか…。
凛花からの返事を待つ間、男はそんなことを考えていた。
(返事を楽しみに待つ、なんていつぶりだろうな…。)
スマホを眺めながら口元が緩む。
約束通り、凛花の本垢をフォローはしていないが、いつだも確認できるようにはしていた。
あどけない表情、幼さが残る振る舞い、混じり気っけのない女子高生。
その事実が、男にここまで余裕を持って接することを良しとさせたのかもしれない。
結果その余裕が少女を良くも悪くも翻弄する形で。
『部屋でやるよりエッチな気分になった…。
それが本当のところ、RINKAちゃんの本当の姿の「一部」だと思うんだよ。
いつもと違うところで、誰かに知られて、促されて、それに従う。
今感じている気持ちは、何の影響が大きいのか…。
知っていくのって楽しそうじゃない?
今そんなに下着を濡らしているのは、何故だろうね…?
学校のトイレだから?
オナニーしていることが知られているから?
それとも俺に言われてしてるから…かな?』
まるで分析、解析。
少女の取扱説明でも作成しようとしているかのように、より意識させ、考えさせ、男の都合のいいように、導いていく。
【であれば良かったです。
丁寧に【】でもお返事いただいていたのが、パタッと無くなっていたので、もしかして後半は読めて居ないのかなと思い、お聞きしました。】
(あたしの…本当の姿の一部……。)
「宗くん」は、「凛花はこういう人間」だと決して決めつけない。いつも問いかけてくれるし、可能性を示してくれるだけ。だから凛花に秘めた気持ちを開示できるし、隠さなくていいと思える。
『学校なのもあるけど……その…宗くんに言われてして、宗くんに見られてるような気がしてた……からかも……。』
彼氏がいるのに、別の男性に許可をもらって、その男性を想って自慰をして、その報告までして…おかしなことばかりしていると凛花はわかっていて。
でも本当の凛花はこんな人間だから。せっかく等身大の自分を見てくれる人に嘘はつきたくないから。
『もう授業始まっちゃうから、またお話したいです』
最後にもうひと言送って、スマホをポケットに入れる。
慌ててトイレを出て教室に戻った。
「顔赤いけど大丈夫?」とクラスメイトに声をかけられるまで、気付かなかった。「走ってきたから」と言い訳をして授業に戻っていく。
【省略してしまったことでご心配をおかけしてすみません。
たくさん文章を書いてくださっているのが申し訳なくて。合意・了承と捉えていただけると。】
「素直だね…。
自分の感覚、感性を素直に受け入れられる…、純粋だ…。
素質…、だな…。」
男は強制しない、断言もしない。
意識させ、促し、自身に問いかけさせる。
決めつけず、考えさせ「こうかもしれない」「そうかもしれない」と揺れる理性の中で零れた本能をだけを的確に拾い上げていく。
そんな中で徐々に凛花の異性に対する想いの占有率を上げていく。
凛花を取り巻く環境に存在する異性。
父親、兄弟、教師、友人…そして彼氏。
中でも思春期真っただ中の少女にとって、彼氏の存在は大きいだろう。
それを言葉巧みに誘導し、塗り替えていく。
良き理解者、信頼できる相手、受け入れてくれる人…と。
『少しずつ、一緒に見つけていけるといいよね…。
まだまだほんの少しかもしれない、RINKAちゃんの知らない、RINKAちゃんがまだ眠っているかもしれない。
手伝わせてくれないか…?
君が、君自身を探す…、見つける手伝いを…。
俺も見たいよ…、もっと…。
本当のRINKAちゃんを…、忘れないで…?気持ち…。
俺も話したいから…。』
徐々に掴んでいく凛花の中にあるモノ。
手の内で転がしながら、徐々に真っ白な布を染めていくように。
【謝らないでください。
ちょっと気になって聞いただけですので。
凛花さんと同じように、私も長く描きがちです。
でもそれは描きたいことが溢れるから…、決して申し訳ないなんて思って欲しいと思っていません。
描きたいんです、だから気にしないでください。
凛花さんも気にせず、描きたいだけ、話したいだけ書いてくれれば大丈夫です。】
授業の合間にスマホを覗く。返信が届いている。
相手がインフルエンサーであり恋人でもないため当たり前だが、いつも凛花がノータイムで返信をしていたからいつも凛花が待っている側だ。落ち着かない時間を過ごさずに済むのは嬉しい。
もちろん、「宗くん」を待たせて駆け引きしようだなんて微塵にも思っていない。
『宗くん、ありがとうございます…。宗くんの前では、本当の私を隠さないで出せるの。とっても嬉しいです。今、授業の間です。この後部活いってきます。』
どちらが好き、どちらが大事と比べられるものではないが、「宗くん」とメッセージを交わすようになってから凛花の優先順位は明らかに変化した。
それは行動にも現れていて、前は彼氏や友人からのSNSメッセージ返信が優先になっていたのに、今は裏垢を頻繁に開いて「宗くん」とのやり取りに夢中になっている。
「宗くん」からのやり取りを始めた直後に撮った動画を最後に本垢の更新が止まり、ライブ配信もしていない。メッセージ返信すら優先順位が下がり、やや遅くなってしまっている。
凛花本人だけでなく、周りも気付かない程度に…じわりじわりと凛花の生活や人間関係が侵されていた。
実際に会うわけじゃないから。ただのメッセージのやり取りだから。相談に乗ってもらっているだけだから。
そんな言い訳を免罪符に、彼氏に隠れてメッセージを送り合うこの関係を凛花は無意識に正当化してしまっている。
あくまでインフルエンサーだから。
数千人のフォロワーのうちのひとりだから。
でも、凛花の心はそう思っていなくて、既に「宗くん」に囚われてしまっているのだけれども。
【おはようございます。ありがとうございます。
念のためなのですが…今週はリアルが忙しく、基本的に返信できるのは朝のこの1回あるかないかと夜になると思います。
宗次郎さんの可能な範囲で、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。】
ヴヴッ…。
凛花からの返信が明らかに昼休みを過ぎた時間帯で届く。
口元を緩め、内容を確認する男。
(真面目な子だと思ったけど…、授業中でも返事をしちゃう…、悪い子だったんだねぇ…。)
授業の間です。
今どきは授業中なんて関係ないのか…、
隠れてこそこそと返事をしているのか…、
想像するだけで昂るものを感じる。
必死になって返事しているのは友達にでも、家族にでもない。
裏垢で、それも先程まで自分にオナニーを求めてきた相手だ。
「今日で3日目…。
SNSの更新も3日前が最後だ…、他に夢中にあることができました…って感じだな…。」
誤った本垢からのDMから始まったこのやり取り。
それは最初から凛花にとっては泥沼だったのかもしれない。
何もかもと言っていいほどプライベートは筒抜けとなり、
その更新頻度の上昇、低下も全て彼女の精神状態を映す鏡となり得る。
もちろん、それの全てが物語るわけではないが、
ある程度は凛花の、男への依存度のバロメータとして判断できると言うモノ。
言ってしまえば、攻略サイトを見ながらシミュレーションゲームを進めているような状態なのだ。
『勉強も…部活も…頑張っている…素敵なことだ。
でも、無理して返事をすることはないよ…?
大事なことは、大事な人は、疎かにしちゃいけない。
大切な人の言葉、大切な人の為の行動を、RINKAちゃんは意識できるかな…?
全ての事を最優先にすることはできない。
今の自分が求めている物が何かが見えてきているはず…。
満足できているかい…?』
含みのある言葉。
大事なものが徐々に塗り替わっていく感覚を、微かに意識させるように。
そしてそれを腹落ちさせながらも、そちら側へ歩ませるように。
さらに告げたのは、満足できているか、という言葉。
「見られてような」気持ちになるだけで満足か。
「果てる前に終わる」自慰で満足か。
『RINKA、次は今夜…。
お風呂上りに連絡してきてくれるかな…?』
そして初めて、明らか男からの指示が飛ぶ。
凛花の予定も、都合も聞かず、男の少しだけ強引な一面が垣間見える。
【こんにちは。
御連絡ありがとうございます。
世間的にはお盆が開けてしまいましたからね、そう言う方も多いでしょうね。
私自身も今秋から仕事が再開。
時間的に凛花さんと同じく、午前中に少し時間があり、あとは夜になると思います。
互いに無理なく、お相手よろしくお願いいたします。】
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【プロフ動画】あむあむ♡♡ ID:chir0chir0
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