「っと…、早いな…。」
メッセージを送って数分も経たぬうちに反応がある。
昼休み等かもしれないが、いずれにしても学び舎の中にいるはず。
周囲には教師、あるいは友達の影もあるのではないか…。
それでもこの反応…。
「随分と気に入ってくれてるのかな…。」
思わず笑みが零れ、その健気な、無垢な、素直な少女に男は高ぶりを感じる。
『早いね…返事…、嬉しいよ。Rちゃん。
君の邪魔にならないか少し心配していたんだ…。』
枕詞のように男は紡ぐ。
遠回しに、学校だろ?そんなに返事が早くて大丈夫?と問いかけるように。
少し意地悪さ、煽りを孕ませて。
『言える人…言えない人、様々だろうね…。
でも、言えない人も多いんじゃないかな…?
本当の自分を曝け出すのって勇気がいるし…、がっかりされたら…、引かれたら…って、別に「悪いことじゃないのに」、後ろめたい気持ちが出てしまうからね。
でもね…?
自分だけは…、本当の自分を大事にしてあげなきゃだめだって思うんだよね…。
本当か嘘かなんて…自分しかわからない。
今のRちゃんにとって…本当の自分で居られるとき、居させてくれる人、時間…。
あるのかな…?そう時間、人は、大事にしないとね…。』
本当の自分で居られる時間…。
まるで彼氏の存在を画角外へと追いやり、見ようとも、考えようともせず別の存在を想いながら耽った…あの時間を思い起こさせるように。
直ぐに返信してしまったけど、結局「宗くん」から返ってこなければ意味がない。またそわそわとしながら、トイレの個室の中で待つ。
「あっ……」
少しすると、また通知が表示される。直ぐに開いて確認すると、待っていた人からだった。
『学校なんですけど、宗くんと話したくて返信しちゃいました…。』
本垢を見られたからには、女子高生ということは既にバレている。プロフィールにも書いているし、もしかしたら顔も見られているかもしれない。
そう思っているから、凛花からは隠す必要があまり感じられなくて、より親しい位置に「宗くん」を置いてしまっている。
自分を曝け出すのには勇気がいる。
引かれることを考えたらとても怖い。
そう、後ろめたい気持ちが強いから。
自分の気持ちを代弁するかのような言葉に、少し泣きそうになる。凛花がこれまでずっと悩んでいたところで、漸く吐露し、そして受け入れられていると感じているからだった。
『誰もいないんです。
彼氏には言えないし…友達も、きっと私がそんな子だってなったら、軽蔑して離れていってしまうかもしれないって…考えちゃって…。宗くんは、本当の私のことも引かないって思えるんだけど……。
全然お話してないのに、重たいこと言ってごめんなさい。』
まだ話し始めて一晩の、年上の異性に言うことではないとわかっているけれど、凛花にとって「宗くん」はそれほどまでに大きい存在となっていた。
彼氏が嫌いなわけでも、友人に不満があるわけでもない。ただ、自分が汚く異質に感じてしまって、それを知られるのが、反応が怖いだけ。
でも、この画面越しの人なら、きっと。そう思わせる魅力が彼にはあって、だからこんなに沢山の女性が彼の言葉を求めているのだと改めて感じる。
『大丈夫…君は何も間違っていないよ、Rちゃん…。
ごめん、RINKAちゃん…って呼んでいいかな…?』
少し思いつめたような、張り詰めたような言葉を感じ男はそう呼び変える。
本垢とは差別化を図る、あくまで裏垢のRと話す。
と言った言葉を裏切る形の選択を取る。
今は何より、凛花と話したい、その意思表示をするかのように。
『誰もいない…?
俺がいるじゃない…、今のRINKAちゃんには俺がいるじゃない。
俺は、本当の君、本当のRINKAちゃんの力になりたい。
不安を取り払ってあげる為にいるんだ…。
勇気を出して声をかけてくれたんだ…、もっと頼っていいんだよ?
重くなんかないさ…。
君が、本当の君で居られる時間を…俺が作ってあげる…。
もっともっと増やしてあげる…。
今この瞬間だってそう…、RINKAは…何を求めているんだい…?』
間髪入れない返信。
男もまた、凛花が自分からの返信を待ちわびていることを確信する。
少しずつ安心を与え、信頼を勝ち取り、生温い、温かい沼の中に引きずりこむように。
言葉を選び、巧みに誘導する。
一つ間違えば壊れる、細い糸を慎重に手繰りながら、刺さるポイントを探し、少しずつ…少しずつ。
【テンポよく、素敵なレスをありがとうございます。
このあと少しお返事が遅くなるかもしれませんので、先にお伝えさせてください。
私の描写に違和感や疑問点、修正のご希望はありませんか?
何かあればおっしゃってくださいね。】
驚くような早さでまた返信が届く。数千人のフォロワーのいるインフルエンサーが、今この瞬間、自分だけに時間を割いてくれているのだと感じる早さだった。
裏垢でのやり取りを提案してきた彼が、「RINKA」と呼ぶ。
奇しくも本名をそのままローマ字にしただけの名前なので、まるでSNSのアカウント越しではなく「本当の私」とやりとりをしてくれているように感じて嬉しい。
『私は、宗くんと話したいです…。
もっと本当の私を知ってほしいって思っちゃってます…。』
目の前のやり取りに夢中になる自分と、やたらと冷静な自分が凛花の中に存在しているように感じる。
会ったこともない、昨晩SNSで話しただけのインフルエンサーに何を求めているのか。本垢を知られている中で曝け出すリスクも説いてくる。
それでも、漸く理解者を手に入れた凛花は止まれなかった。
【こちらこそとても楽しいです。お知らせもありがとうございます。
私は何も違和感、疑問はありません。すごくドキドキしてしまっています。
私の方こそ、何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね。】
「この辺にしておくか…。かかりっきりになってもいいが、それが当たり前になると目的から遠のくな…。」
そのタイミングで男は返信を一旦収める。
駆け引き、と言うほど大した物ではないが、ある程度の翻弄は必要。
餌を与え続ければ、それが当たり前になり、与えられなくなった時にそれは不満へも変わる。
心と身体を解いていくのは短時間では叶わない。
適度な間と掛けるべき時間はしっかりと取ることでより少女の心を鷲掴みにしていく。
(次は、また夜くらいにしておくか…。
それまでは放置だ…。
悪く思うなよ、RINKA…ちゃん。)
不敵に笑みを浮かべ、男は一度暫くはならないスマホをベッドに放り投げた。
【楽しんでいただけているようで良かった。
直近の展開で希望などもありませんか?
自然な形で翌日に時系列を進めてくださったことはとても感謝しています。
時間経過を上手く描くタイミングが個人的には課題なので、とても助かりました。】
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【プロフ動画】とある日の出来事 #お尻 ID:masumi61hiyama
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