第4章です。
なるべく詳細にと意識して書いているうちに長くなってしまったので、複数に分けて投稿いたします。
読み辛くなってしまったかもしれませんが、ご容赦下さい。
実家を出て都会の企業へ就職後、一人暮らしを始めて半年以上過ぎた11月の終わりか12月の初めの頃です。
父が出張で、私の住まいの近県まで来ることになりました。
本来なら2泊3日の日程を終えて地元へ戻るはずだった父から「帰るのを1日後にして、金曜の夜にそっちに寄る」と連絡があったのです。
過去の投稿で明かしていた通り、父は私の理想のタイプではありますが、思春期の頃から人並みに男性とのお付き合いはありまして、
その時期も私には社会人になって初めての彼がいて、暗黙の了解で毎週金曜は彼と会うのが習慣になっていました。
父の来訪を理由に、事前にその日の予定は断ったのですが、その気もないくせに「俺、挨拶しに行こうかな?」といい加減な言葉を投げかけてきました。
父が居ると判っていて、来たがるはずがないと確信していた私は、「来てもイイよ」と淡々と返したところ、
「……冗談だよ」と予想通りの面白くない返しをした彼。
彼と私のそれぞれの自宅までは、ドア・トゥ・ドアで2時間半ほど掛かる距離だったし、気が変わりサプライズ気取りで突然彼が訪れる確率はゼロに決まっている。
私はただ、一人暮らしをしている娘の様子を見に来るという、どこにでもあるありふれた状況を想定し、父を迎える準備をしました。
仕事が終わると、スーパーで手早く作れる献立の材料を買い込み、二人分の晩ご飯を用意しました。
父が最寄駅に着いたと連絡をくれたのは、夜の八時を回った頃です。私も駅へ向かい、中間地点で冷たい夜気の中、父と落ち合いました。
都会での生活が新鮮で楽しく、ホームシックなど憶えなかった私は、就職後すぐに訪れるゴールデンウィークは勿論、夏休みの期間も帰省しなかったので
父とは数ヶ月ぶりの再会になります。
食事を済ませ、入浴を終え、父が持参したアルコールを飲みながら近況報告や共通の知人の噂話、こっちでは偶然有名人に会ったりするのか等々、
日付が変わっても暫くの間、他愛のない話を続けたあと、どちらからともなく「そろそろ寝ようか」と発し、休むことにしました。
歯磨きも終え、父のために床にお客さん用の布団を敷き、私はベッドに横たわりました。
睡魔が心地よく全身を包み込み、今夜は何事もなく眠りにつく――そう思った矢先のことでした。
部屋の照明を消して間もなく、静まり返った闇の中でベッドの端が沈み込みます。上半身を露わにした父が、迷いのない動きで私の布団に滑り込んできました。
「だめだよ。そんな気無いよ。眠たいし。」私は小さな声で抵抗しました。
けれど、父は冗談めかして戯けるように、あるいは幼い子供が甘えるような仕草で、私の肩や首筋に鼻先を押し当ててきました。
しばらく拒み続けていましたが、じゃれ合う様にお互いの肌が触れるうち、私の目は覚め、いけないモードに切り替わって行きます。
ただ、どうしても拭えない懸念がありました。
私の住む1DKの壁は、決して厚くはありません。大声を出したり、激しく物がぶつかったりすれば、上下左右の住人に室内の様子が聞こえてしまうはず。
壁際に置かれた安物のベッドは、激しく動くとミシミシと音も立てます。腕や脚が壁に当たれば、その衝撃は確実に隣室に響くでしょう。
「……そっちに行くから」
私は熱を帯び始めた身体で床の布団へと移動しました。父は何も言わず、私の後に続きました。
暗闇に目が慣れてくると、その中に父の輪郭が浮かび上がります。私たちは音を立てることを許されない、静寂の檻の中。
布団に移動した瞬間、フローリングの硬さが背中に伝わり、制約を突きつけられた気がしました。
父の「……静かにしてれば大丈夫だって」と吐息のような囁きが耳朶を打ちました。その直後に父の唇が私の唇を塞ぎました。
最初の一触れで、父の口内に残るアルコールの熱い香りが鼻腔を抜けていきました。父の舌が私の唇の合わせ目を強引に割り込んできます。
私は戸惑いましたが、次の瞬間には吸い寄せられるように目を閉じ、父を受け入れていました。
絡まり合う舌と舌。互いの唾液が混ざり合い、逃げ場を失った熱が口内で飽和していきます。
声にならない吐息が、父の口内へと吸い込まれていきました。唇を食み、舌の裏側までを執拗になぞり上げる濃厚なキス。
呼吸が辛くなり、苦しくなるほどなのに、互いの唇を離すことができません。
父の手が私の後頭部をしっかりと固定し、さらに深く、私の喉の奥までを侵略してくる。
言葉を禁じられた私たちは、この重なり合う粘膜の感触だけで、数ヶ月の空白を埋めようとしているようでした。
ようやく唇が離れたとき、か細い糸が闇の中で細く光りました。唇に残る痺れるような感触と注ぎ込まれた熱。
この濃厚なキスが合図となり、その夜は加速していきました。
父の指先が私のパジャマの上半身の裾を割り込んできました。冷えた指先が熱を帯びた脇腹を這い上がるとき、吐息さえも漏らさないよう、とっさに唇を噛み締めました。
続けてパジャマの上下を順番に皮を剥ぐようにゆっくりと、時間をかけて脱がせていきました。布が肌を擦るわずかな音さえも、この静寂の中では生々しく響いている気がします。
裸にされた私の肌に、父の筋張った逞しい胸が重なりました。
この夜の父の愛撫は、驚くほどスローで執拗でした。普段なら気にも留めない肌と肌が密着しては離れる吸着音。
それが耳元で、あるいは胸元で、執拗に繰り返されます。
父は私の首筋から鎖骨へと唇を這わせ、私の反応を確かめるように、わざと動きを止めては私の瞳を覗き込みました。
「声……やっぱり声、出ちゃいそうかな?」
揶揄うような、けれど支配的な低い声。私は答えられず、ただ父の首に腕を回して引き寄せることしかできません。
父の舌が、私の耳の縁を丁寧になぞり、そのまま熱い息を吹きかけます。背筋を駆け上がる痺れに、私は耐えきれず声を漏らしそうになり、咄嗟に自分の手首を口元へ運び、力いっぱい噛み締めました。
「そうだね、そんな感じで軽くでも噛んでおけば大丈夫」
そんな言葉に、体が熱く疼き始めます。父の指先が、今度は私の秘められた場所へと辿り着きました。
まだ閉ざされている蕾の周りを、父は焦らすように円を描いてなぞるだけ。焦燥感に駆られた私は、声を出せないもどかしさから、父の肩を強く掴み、腰を微かに浮かせて父を誘いました。
「……ちょっと待って。そんなに動いたら音がしちゃうかも」
父は私の腰を両手でそっと押さえつけ、床に固定しました。そしてゆっくりと、本当にゆっくりと、指の第一関節だけを沈めていきます。
無意識に漏らしてしまう鼻に抜けるような短い吐息。私は慌てて、今度は自分の掌で口を完全に覆いました。
指先が粘膜をゆっくりと押し広げていく感覚。その摩擦の一つひとつが、スローモーションのように脳に伝わります。
(続きます)