(続きです)私は耐えきれなくなり、父の耳元に顔を寄せ、掠れた声で懇願しました。「……お願い。もっと、早く動いて欲しいんだけど……」父は冷静でした。「早く? そうしたら、声を我慢できなくなるんじゃない?」父はそう言うと、私の身体を反転させました。四つん這いになった私の背中に、父の熱い胸が密着します。父は私の両手首を背中の後ろで片手で掴み、自由を奪います。ここへ来る途中、買って来たのでしょう、コンドームを要領良く装着した後で、「……こうして動かなかったら、音はしないよ」父の言葉通り、父は一点の振動も立てないよう、細心の注意を払いながら、自身の熱を私の入り口へと押し当てました。一分、あるいはそれ以上の時間をかけて、ゆっくりゆっくりと進んでいく結合。抵抗できない重みが、私の中へとゆっくりと沈み込んでいきます。その重厚な感覚に私は恥ずかしいほどに、段々と鼻息が荒くなっていきました。声を出してしまいたい。思うままに腰を振りたい。けれど、私はただ唇を噛み切りそうなほど強く閉じ、父が与える「静かなる侵略」を、ただ受け止めることしかできなかったのです。「……もしかして苦しい?」背後から、父の湿った声が耳元に届きます。私は答えられず、ただ力なく首を振りました。父は私の手首を拘束していた力を緩めると、私の身体を再び仰向けにしました。そして私の両脚を父の肩へと担ぎ上げました。「いいよ……声、少し出しても。でも隣に聞こえない様に気を付けてね」残酷な言葉に、私は必死に頭を振りました。父は腰を数ミリだけ引き、またゆっくりと突いてきます。その一撃ごとに、叫びたい衝動を抑えるために、私は再び自分の掌を口に押し当てました。指の隙間から漏れるのは、掠れた呼吸だけです。やがて、私自身も父を深く、激しく求めたいという衝動が生まれました。私は父の首にしがみつき、父を布団へと押し倒すようにして、その上に跨りました。「……静かにするから、ね」誰に誓うでもない誓いを、父の耳元で呟きました。私は自分の腰をゆっくりと、慎重に動かし始めました。布団が床と擦れて音を立てないよう、膝に力を込め、自らの自重をコントロールしながら。父の中心を、自身の熱で包み込み、ゆっくりと上下させます。父が喉を鳴らすたびに、私の指先は父の上半身をなぞり、その硬い筋肉の感触を掌で確かめました。自分の動きで父を翻弄し、その顔が苦しげに歪むのを見る。今度は私が音を立てずに父を屈服させることに快楽を見出していました。「上手だよ」父の声が震えています。汗が混じり合い、肌と肌が離れるたびに小さく卑猥な音が響きます。終わりは静かに訪れました。私の腰の動きに合わせて、父の手が私の腰を強く掴み、引き寄せました。父の動きがわずかに速度を増しました。スローモーションだった世界が急激に加速し始めます。私は隣室への恐怖を忘れてその熱に身を任せました。声が漏れそうになるのを、私は父の手首を掴み、そのまま深く歯を立てることで押し殺しました。父の動きが止まり、私の奥の方で熱い奔流が弾けるのを感じた瞬間に、背中全面が痺れるような感覚が駆け巡り、、私は崩れ落ちるように父の胸に顔を埋め、荒い呼吸を整えることさえ忘れて、残された熱の余韻に震えていました。しばらくの間、私たちは重なり合ったままでした。二人の混じり合った呼吸と、かすかに響く冬の夜風の音だけが聞こえ、隣室からは何の反応もありません。このビルには私たち二人しか存在しないのではないかと錯覚するほどの深い静寂。父が私の髪を優しく撫で、耳元で短く囁きました。「……ありがとうな」私の小さな部屋に残ったのは、冷たい冬の空気と消えない父の体温、そして誰にも聞かれることのなかった、私たちの秘め事の記憶だけでした。土曜の朝、天気予報では午後から雨が降るとのこと。旅先では余計に傘は邪魔な荷物に感じるという気持ちはよく判ります。父が地元へ帰るフライトの時刻は午後だったので、時間には余裕が有り過ぎるくらいでしたが、早めに空港へ向かう事にした父と、彼との待ち合わせの場所へ向かう私は、一緒に最寄りの駅へ向かいました。前夜の出来事は嘘か夢の様だと、毎回同じ事を思う。改札を潜り、お互いに逆のホームへ向かう直前、私の「年末年始休暇の期間は帰省するから」という言葉に、何も言わずに頷き、背中を向け歩き出す父でした。以上が4度目の関係を持った時の事です。「13年間」とタイトルに書いていますが、頻繁に交わりがあったわけでも無く、多くても年に1度か2度、1年以上その機会が無かったりしました。
...省略されました。