若い独身、という理由で地方に飛ばされた俺、当時24才でした。
住んでたアパートの一階が居酒屋で、そこでよく晩酌と晩飯をしてました。
そのときも仕事が終わり、その居酒屋で晩酌晩飯しようと行くと、カウンターに女性が一人、座って生ビールを呑んでました。
その日は平日とあって、お客さんも俺とその女性の二人だけでした。
俺がテーブルに座ると、居酒屋の親父さんが、二人しかいないんだからこっちに来いと、半ば強制的にその女性の横に、俺を座らせたんです。
渋々その女性の横に座ると、なかなかな美人でした。
俺を見たその女性は。
『おじさん、こんなおばさんと一緒に呑んだって、料理とお酒がまずくなるだけよ』
と親父さんに話してました。
すると親父さん。
『あんたのこと思って呼んだのさ。若い青年と一緒だと楽しいだろ』
ガハハと笑ってました。
親父さんがその女性を紹介してくれました。
文代さん、未亡人と聞かされました。
未亡人?そんな年には見えないけどと驚いた俺。
それもそのはず、文代さんはまだ43才という若さの未亡人さんでした。
お喋りお節介な親父さんは、勝手に文代さんのことを喋りまくります。
大学に進学した娘さんがいて、ご主人亡くして五年だかたつ寂しい未亡人と文代さんを言いました。
五年って、30代でご主人亡くしたんだ~とつい関心したように話してた俺に、文代さんは答えました。
『13才も年上の旦那だったからね』
そう言って笑ってました。
親父さんを間に会話、俺も自己紹介しました。
娘さんが大学に進学、家を出て、一人で食事作って食べるのがつまらないからと、家から近いこの居酒屋を利用することになったようでした。
一時間ほど呑んで食べてお喋りして、帰ろうと二人で店を出たとき、文代さんからアドレスを聞かれて交換しました。
それから時々、メールやりとりしては、その居酒屋で一緒に呑んで食べてお喋りする仲になりました。
文代さんと知り合って二ヶ月くらいしたとき、文代さんから居酒屋に誘われました。
給料前の懐の寂しさのため、俺は辞退したんです。
コンビニで弁当とビールを買って帰ると、文代さんがアパートの階段のとこにいました。
驚きました。
『今日はね、なんか一人でいたくなくて、押しかけて来ちゃった』
そう笑った文代さんの手にも、コンビニの弁当とビール、しかも二人分を持ってました。