帰り道、僕たちは手をつなぎ合った。僕は、女の子と手をつなぐのは、すごく照れ臭かったが、鈴菜ちゃんは、僕とだったら、手をつないでいても安心すると言っていた。僕も、同じ気持ちだった。手をつなぐ相手が、鈴菜ちゃんだから、すごく嬉しかった。帰り道、2人でいっぱい話をした。女の子とこんなに話をしたのは初めてだ。鈴菜ちゃんも、同じことを言っていた。今日、出会ったばかりなのに、鈴菜ちゃんについての、いろいろなことが分かった。鈴菜ちゃんの誕生日は4月13日で僕より3日早いこと、血液型はA型で同じこと、ピアノとバイオリンが得意なこと、あと、勉強は体育をぬかして全部得意だと言っていた。僕は、何だか、鈴菜ちゃんが、すごく頭のいい優等生の子のように思えてきた。鈴菜ちゃんは僕のことを、「男の子の中でいちばんきちんとしてる」って褒めてくれた。それがすごく嬉しかった。どうしてか聞くと、ワイシャツの襟元につける蝶ネクタイを、最後までしていたからだという。僕は、習慣で1年生の頃から毎日しているが、高学年になると、行事の時を除いて、しなくなる子が殆どだ。この日は、入学式があったので、式の時にはしていた子が多かったが、式が終わると殆ど全員全員取ってしまっていた。ちなみに、女の子はリボンをするようになっていたが、それも同じような感じだ。鈴菜ちゃんは「蝶ネクタイやリボンはいつもしている子が好き」だという。とてもきちんとした、几帳面な女の子なのだと僕は思った。鈴菜ちゃんに、「よかったら、今日家に来ない?」と、誘われた。女の子の家に誘われるのも行くのも初めてだった。すごくドキドキしたけど、嬉しかった。鈴菜ちゃんも、男の子を誘うのは初めてだったらしい。鈴菜ちゃんの新しい家は、本当に僕の家のすぐ近くだった。近所、と言ってもいいくらいのところだった。最近、近くに新しい家が建ったのは知っていたが、そこが鈴菜ちゃんの家だったのだ。家の前では、鈴菜ちゃんのお母さんが出迎えてくれた。そこにはなぜか、僕のお母さんもいた。町内会に入ってもらうことの話をしていたらしい。僕のお母さんは、当時、町内会の役員だったのだ。お母さんたちは、僕たちが手をつなぎ合っていることをとても喜んでくれて、「柚葵が女の子と歩いているなんて初めてね」と驚かれてしまった。鈴菜ちゃんのお母さんも「娘に、素敵な男の子のお友達ができてすごく光栄です」と言われた。そして、ツーショットの写真まで玄関先で撮られてしまった。これから一緒に遊ぶ約束をしたというと、そのこともすごく喜んでくれて、お互いの家を訪問し合う話にまでなってしまった。僕たちよりもお母さんたちの方が、僕たち2人のことで、何だか盛り上がっているみたいだった。「立ち話もなんですから…」ということで、僕とお母さんは鈴菜ちゃんのお家にお邪魔をすることになった。「お姉ちゃん、制服ができているから、お部屋で着てみる?」と鈴菜ちゃんのお母さんが言うと、「嬉しい、ママ、早速着てみるわ。下着も全部お着替えしてもいい?」と、鈴菜ちゃん。「いいわよ、お着替えしたらリビングに下りてきて、制服姿を披露して」…。鈴菜ちゃんの部屋は2階にあるらしい。「あと、柚葵君にお部屋を見せてあげてもいいかしら」と、鈴菜ちゃんがお母さんに聞いた。「もちろんいいわよ」と鈴菜ちゃんのお母さん。お母さんたちは、これからリビングでお話をするらしい。「お茶の用意ができたら呼ぶから、それまで2人でお話していてね」と言われた。鈴菜ちゃんに「どうぞ」と言われ、僕は2階に上がった。鈴菜ちゃんの部屋は新しくてきれいで、女の子の部屋、という感じで、すごくいい匂いがした。「今からお着替えするから待ってて」と言われ、僕が部屋から出ようとすると、鈴菜ちゃんが「ここにいても大丈夫よ」言った。鈴菜ちゃんは、ハイソ
...省略されました。