こういうフザケタ会社をなぜ皆やめようとしないのか。その理由は簡単だった。それは一般的な介護の仕事より、時給が150円程高い事。そして会社組織としてはマイナスポイントだが、会社ルールが甘々なので、セクハラ、パワハラ以外に関しては楽な事も多いということ。それに、後は個々のかかえている事情。例えば、ヤンキー娘なら、仕事やめたら収入源がなくなるので、実家に戻らないといけない。オバチャンなら、もう年齢的にコロコロと転職できない。ダウン症の青年も然り、生活保護のオッサンも然り。ここで働く従業員は、パワハラ、セクハラに対する耐性が付いており、それ以外の部分で羽を伸ばそうという、言い換えれば、たくましい連中でもあったんだ。ただ、俺が不思議だったのは、ケツ触ってくるとか、胸触ってくるとか、そういった典型的なセクハラならいざ知らず、なぜトイレ中に割り込んでこられたりしても我慢する事が出来るのか。ってそこが不思議だった。そして、その不思議の謎を俺は入社して2、3か月目で気がついてしまうことになったんだ。エピソード6<アイヒマンに対し、肉体的奉仕をもって自分の立場を保身していたヤンキー娘>アイヒマンといえば、あのヤンキー娘がトイレをしている時に乱入してきた男の事ね。ここに入社して2,3か月経った時の頃なんだけど、俺たちの仕事の中には「宿直」っていう業務があるんだ。読んで字の通りなんだけど、夕方から出勤して、そのまま朝まで施設の番をするだけ。何かあったら出動しないといけないけどね。俺はその宿直当番である事を忘れて友達と飲みに行って、宿直である事に気が付いた夜の21時頃に施設にほろ酔い気分で出勤したんだ。もちろん遅刻。しかし、頭の中では(今日、ほんとに宿直だったかな・・)という気持ちもあった。その背景には、休みを変更してくれという一部の従業員がいて、シフト表がコロコロと変化する性質があったからだ。結果としては、もちろんその日は俺は非番だったんだけど、ここまできたらついでだし、ロッカーの中に入れてる私物をいったん持って帰ってロッカー整理でもするか。ってなもんで普通に従業員入り口から入っていったんだ。夜の21時なんて施設の玄関は閉鎖しているので。そして従業員入り口に入って、ロッカーまで進んで、自分のロッカーの中にあった着替えとか小物とか、適当にカバンの中に詰め終わったんだよね。そしてせっかくここまで来てるし、挨拶くらいはして帰ろうと思って、宿直部屋に入ろうと・・・・・・したら、、宿直部屋の中から男と女の声が聞こえるんだよね。俺たちの会社組織の中で、男と女が、仲良くしゃべている光景なんて、まずない。まずないんだ。男っていうのは、俺とおじさんとダウン青年か、それか幹部連中しかいないので、まず仲良くしゃべっている光景なんていうのはないんだよ。いや、その前に宿直っていうのは1人でするものであって複数でするものじゃない。あまりにありえない光景すぎて、(誰か来てるのか?)くらいまで思った。そして盗み聞きする訳じゃないけど、その宿直部屋のドアの前から耳を澄まして中を聞いていると、中にいるのはヤンキー娘とアイヒマンだった。アイヒマンとヤンキー娘は、同じ従業員の悪口ともとらえれる、つまり陰口で盛り上がっており、俺の事も何か言うんじゃないかな。ってなもんでほろ酔い気分の俺はそこで初めて盗み聞きモードへと入っていったんだ。といっても、こんなドアの前で待機していてもこっちも疲れるので、ふと俺の目に入ったのは、その宿直部屋の隣の部屋。この隣の部屋は資材置き場になっており、身を隠すにはもってこいの部屋だった。それに冒頭でも書いたが、ここの施設はボロい。真剣に耳を澄ませば、隣の部屋の大声なんて簡単に聞こえてくるのだった。俺は資材置き場の部屋へ入り、その中で(絶対に俺の文句もいうだろな)くらいの気持ちで聞いてみようと思ったんだよね。飽きたらすぐ帰ればいいだけだし。ところがどっこい。最初、従業員の陰口で盛り上がっていたアイヒマン達は、急に静かになったんだ。(あれ?)と俺は思った。耳を澄ませても何も聞こえてこない。2人が部屋にいるのは間違いない。(何してんだ?)と思い、また俺の目にふとはいってきたのか、資材置き場の部屋のベランダ。このベランダは隣の宿直部屋のベランダと一体化しており、簡単な話、俺が資材置き場の部屋のベランダに出て、隣の部屋までこっそり駒を進めれば、カーテンの隙間からにはなるだろうが、中を覗ける事も可能な作りになっているんだ。
...省略されました。