人間は狭い世界の中で全てを補おうとする傾向があると思います。
朝、公園でゲートボールをしている老人会の綿々が練習後にお喋りを講じているのを見るだけで、中の色恋沙汰とかが垣間見えたりする。
老人達にはあの会の面々が全てなのだ。
その中から気の合う人を探し、ときめく相手を見つけるしか選択肢がないかのように。
私は子供の高校進学を機に初めてパートを始めた箱入り主婦だった。
主人は仕事仕事で家の事は女の仕事と考えているような人だが、そう言えるだけの収入をもたらしてくれているだけいいかもしれない。
いい加減親に構われるのも鬱陶しく思う年頃に子供達が達すれば、気晴らし程度のパートにも反対はしなかった。
世間では主婦の不倫が話題になっても、うちの女房に限って…
そんな風に対岸の火事に思っている節がある。
それは私への信頼なのか?
それとも私にそこまでの魅力はないと思っているのかはわからないけど…
(たぶん後者)
もっとも私も浮気相手を探しにパートを始めた訳じゃないから、許してもらえて何よりだった。
何の取り柄もない主婦の職場など限られている。
私はたまたま募集してたドラッグストアに半ば試しに応募したら運良く採用された。
車で二十分位かかるが、あんまら近すぎてご近所の人に見られるのもバツが悪い。
通勤に時間を要するのは折り込み済みでした。
私が住んでる地域よりさらに山あいに向かった静かな地域なので、お店は忙しくなくマイペースで仕事を覚えられた。
人間関係もやっかいな人はいないしまずまずといったところ。
シフトで皆が一斉に勤務し一斉に退社する訳じゃないから、お店がハネたらどこかに飲みになんていうのもなかったけど、お茶をするくらいのそれなりに親しいパートさんもでき、私は順調にパートを続けられ、いつの間にかベテランの部類になっていった。
そんな中、新しく入ってきたバイトの高校生が息子の友達だったという出来事があった。
息子とは一年の時に同じクラスで三人四人でうちに連れてくる時にいた子だ。
今はクラスも変わり部活も別なので校外では疎遠になってるようだが仲が悪くなった訳ではない。
息子もバイトは本来許可がいるので黙っててやってよと友情めいたセリフを口にした。
家に来たときはそれほど話した訳ではないけど、職場では頻繁に会話もした。
ババア呼ばわりもしないし感じのいい子だったから、パートの主婦達からもかわいがられるようになった。
私は新人の指導もよく任されていたから最初は一番接する機会が多かったけど、だんだんそんな必要もなくなり他のパートさんらとも接するようになると、私の胸はチクッと傷んだ。
何となく寂しいような嫉妬心めいたものでしょう。
それでも彼は顔を合わせれば一番馴染んでるかのように接してくれたけど、だからこそ余計に胸がざわついたのかもしれない。
いつしか私は彼の一挙手一投足に心を乱す、まるで中学生の恋愛みたいな感情を抱いていた。