夕飯時になっても天音は部屋に閉じこもった?寝ているようで、美月と二人で食事をした。
代わる代わる、時間をおいて見に行ったが、具合が悪そうにぐったりとしているようだった。
美月はしばらく家に居る予定だったのだが、任されてる仕事のことで、再来週には再び出張の予定が入ってしまった。
天音の体調の回復次第だが、家族で温泉にでも泊りがけで行こうという話になった。
俺が言っても天音は聞かないだろうと思ったが、美月から博昭さんから言ってあげたら?と言われたので、明日にでも話してみると乗る気のない返事をした。
ちゃんと話してよ、と釘を刺された。
翌日、美月が会社に出かけた後、学校を休んだ天音の部屋に、旅行の件を伝えに言った。
部屋をノックして、ドアを開ける。
『何か食べないと体に悪いぞ。』
と言って、近づき、おでこに手をあてる。
天音が、噛みつくように悪態をつく。
『いい加減、小さな子供が拗ねるような真似は止せ。』
と言っても、天音はまったく聞く耳を持たない。
『ママが、家族旅行をしたいそうだ、天音の意向を聞いておいてくれと言ってた。
自分で言えばいいのにと思ったが、美月は美月で継父と娘との関係を心配してるようだ。
あまり、心配をかけるな。
旅行から帰ってきたら、すぐに出張に行かなくてはいけないらしいから。』
【こんにちは、
天音がどんな言葉を博昭に投げつけるのか、または暴れるのか、想像できないので科白だけを書きました。
天音は結構過激?なのかな。笑
博昭は博昭で、言葉が足りず抽象的過ぎて、天音に伝わりづらいとは思っているものの、なんでそんなに反抗的なのか、わかりません。
男の理屈、狡さなんでしょうね。
嫁と愛人、彼女は別だよと言われてもみても、納得できないのは仕方ないと思うけど、
そこは理解してよ、と勝手な事を考えてしまうんですよね。
早く、温泉に入って、天音の心を優しく解さなくては。笑
夜、お待ちしています。】
結局その日は部屋に閉じこもり、夕食も食べなかった。
翌朝、早くに美月が部屋に訪れる。バッチリ化粧もしているからきっと仕事に行くんだろう。
「まだしんどそうね、今日はお休みしましょう。ご飯も食べれるものでいいから食べてね。ママはこの後お仕事に行ってくるから、何かあったら博昭さんに言うのよ。」
「うん・・。」
美月が部屋を出ていくのを見送り、ふう、と息をついた。
熱があるわけではない。答えの出ない堂々巡りの悩みを考えすぎて頭が痛いけれど。なんでこんなに自分が悩まなきゃいけないんだと、何だか腹が立ってきた。
(先輩も、あいつも、皆嫌い。男なんて嫌い。エッチも嫌い。もうしない。)
曖昧な関係に不安になるくらいなら、もう誰ともそんな関係にならなければいいんだと、一晩悩んで疲れてしまった天音は思った。博昭とももうしないし、何かしてきたら家出でもしてやる。自分なんていなくても、ママと2人で暮らせばいいんだから。
極端過ぎる答えに行き着いてしまった気はするが、そう考えればちょっとスッキリした。ようやく眠れそうだった。
うつらうつらとしていると、誰かが部屋に入ってきた気配がした。この声は博昭だから、美月はきっと仕事に行ったのだろう。
布団を捲られ、額に手を当てられる。
「放っといてよ、心配なんてしなくていい。」
ペシッと手を跳ね除けて頭まで布団をかぶる。小さい子どものようだと咎める声にも耳を貸さない。その通りだと思うけど引っ込みも付かない。どう振る舞えばいいのか分からないのだ。
そんな天音の様子に呆れたように、温泉旅館の話をし始めた。
「・・2人で行ってきたらいいじゃん。あたしいかない。」
どうせ行ったって楽しめない。それに2人の方が何かと都合がいいだろう、と思う。天音がいると昨夜のように楽しめないのだから。夫婦水入らずで行けばいい。
結論を出してもう割り切ったはずなのに、博昭の声を聞いてると何故か涙が出そうだった。変に弱ってる、と自覚する。だから絶対に顔を見せてやらないと、頭まで被った布団を握る手に、ぎゅっと力を込めた。
【こんばんは。
すっごくヘソ曲げて子どもみたいになっちゃいました。面倒臭い女の子にするの得意みたいです。博昭の言葉足らずには相性悪いですね。笑
このヘソ曲げモードのまま、祐一には別れを告げて、旅行を迎えたいと思います。祐一とは人知れず別れますので、旅行まで飛ばしていただいて大丈夫です。笑】
『じゃあ、行かないと美月には自分から言うんだ、俺は言わない。
天音の機嫌が悪い原因が俺なら、また、美月と二人で暮らせるように俺が出ていく。
それで、機嫌が直って、天音と美月が仲良く暮らすのならそれが一番だからな。
なんで、俺が出ていったのか、美月には天音から説明してくれ。
天音と無理やり関係を持って、美月がいない間、ずっと犯され続けたと言えばいい。
お母さんがいなくて、寂しくて怖くて仕方なかったと泣けばいい。
美月は天音の母親だから、ちゃんと天音の事を守ってくれる。
それが、天音の望みなんだろう?
だけど、天音は俺のオンナだという事を忘れるなよ。
俺と美月が離婚しても、天音への思いは変わらない。』
部屋から出ていく。
大した荷物もないので、そのままの格好で家を出る。
行く当ては、あるけど・・・・今さら、前の女のところに行くわけにもいかないから、しばらくはビジネスホテルにでも泊まろうか。
ちょっと、早まったかとも思ったが、天音があそこまでへそを曲げてる以上、すぐに機嫌は直らないだろう。
頭を下げて、嵐が通りすぎるのを待つしかない。
【こんばんは、
本気で家を出たわけじゃないけど、博昭が家を出てしまいました。
もしかしたら、強引にでも抱いた方が良かったのか、と思いながらも、もしもここで抱いたら一生、天音に嫌われるという思いの方が強くて
何も出来ずに家を出たところです。
着地点はどのあたりになるのか、見当もつきません。笑】
布団にこもっていると、博昭が出ていくと言い出した。犯されたと言えばいい、美月なら味方をしてくれる、思いは変わらない・・あまりに急な展開に、思わず布団から顔を出す。
(なにいってるの?)
あれよあれよと、博昭は部屋を出ていった。
言葉通りかそれとも頭を冷やす程度か、玄関のドアが開閉する音が聞こえて博昭が家を出ていったのはわかった。
ベッドから下りて、窓から道を見下ろす。特に荷物を持っている様子もない博昭の後ろ姿が見えた。一体どういうつもりなのか。どこに行くんだろう。
一人取り残されて、徐ろにベッドに座る。
美月に関係のことを言えばいい、ということは、美月は博昭と天音の関係を知らないということだろう。美月と天音の関係が大事だ、離婚をしても天音は博昭のオンナであり、天音への想いは変わらない、とも言っていた。
せっかく割り切ったのに、どういうことなのかと言葉の真意を考えてしまって、答えが出ずにまた頭がグルグルしてきた。
連絡してみる?スマホを手に取った。
でも、なんか癪だ。また博昭の思い通りになってしまう?でも、余裕があるようには見えなかったけど。
あれだけ関係を迫ってきたとき以降、ずっと自分本位な態度を見せていたのに、何故急に身を引くような行動をとったのか。博昭も迷ってる?美月が帰ってくる前の晩の態度も、変だったし。もう天音にはわけがわからない。
結局何も行動できないまま、寝たり起きたりして夕方になった。帰宅した美月が博昭がいないことに気付いて天音に尋ねる。
「え、喧嘩しちゃったの?博昭さんと?」
「うん・・旅行いきたくないって言ったら、出て行っちゃった。」
「そうなの。私から連絡してみるわね。・・旅行、天音は行きたくないの?家族になれて、せっかくだからと思ったんだけど、天音が行きたくないならそうしましょう。ね?」
何も知らない美月が、天音の気持ちを尊重してくれようとする優しさに心が痛む。博昭の言ったように関係をバラしたら、美月はどんな反応をするのだろう。美月を傷つけるのも怖いし、博昭が捕まってしまったり、するのだろうか。
なんでそれも嫌だと思ってしまうんだろう。あいつがどうなろうと知ったこっちゃないはずなのに。
「・・ううん、大丈夫。ちょっとわがまま言っちゃっただけで、別に嫌じゃないの。後であたしも謝る。」
美月が連絡すれば、博昭は帰ってくるのだろうか。「じゃあ、博昭さんに連絡してくるわね」と言って天音の部屋から出ていった。
【予想外の展開に驚きましたが、これで取り敢えず旅行には行けそうでしょうか。取り敢えずトゲトゲしているところは反省?して潜めてみました。天音と戸惑ってます。】
美月からの連絡に助かったと思ったが、心配ないよ、ちょっと飲みに出かけただけだからと言い訳をする。
久しぶりに友達と会ってるし、夜は遅くなってから帰るから、母娘の貴重な時間を過ごせばいいと、電話を切った。
天音もあとで謝るって言ってたわと、美月が言うのを聞いて、ほっとした。
俺も大人げなかったと帰ったら謝ると言った。
さて、旅行はどうなるのだろうか。
天音の気持ちは少しは和らいだようだが、3人で温泉に行こうなどと言う気持ちにまでなれるのか、どうか。
押してもダメなら引いてみな、の逆で引いてもダメなら今度はとことん天音を押してみるか。
多分拗ねてる原因は、美月とのエッチを見てしまったからだ。
母親のそういう場面は見たくもないだろうが、それであんなに怒りはしないだろう。
そうすると、やっぱり俺が原因って事になる。
俺が原因なら、天音の前から姿を消せば、それで丸く収まるのでは?
それなのに、何を怒っている?
具合が悪かったという日には、あんなに甘えてたのに・・・・・。
・・・まさか、と思う。
いつもあんなに態度がトゲトゲしいではないか。
少しは大人になったか、と思ってもすぐにぶつかってきてたじゃないか。
もしかして、少しは俺を認め始めたということか。
しかも、継父としてではなく、男として?
俄かには信じられなかった、すぐに天音に問いただしたい。
しかし、本人に聞くことが今は一番の難問だった。
結局、その日は帰らず、次の日に帰ると美月には連絡を入れた。
学校から出てくるところを待とうか、それとも、帰ってくるまで家で待とうか。
【予想外の行動、申し訳ないです。
あとは、当たって砕けろ、かな?
天音の機嫌が直って、旅行に行きたいです。笑】
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