長くなりますがきっかけからゆっくり続けます。 初夏のある日、午後から強風が街に吹き荒れました。 時折ハンドルもとられる突風もあり慎重に運転していた時、左前方で自転車が転倒しました。 「怪我はないかい?」 車を停め女の子に駆け寄りました。 「うん…大丈夫…」 左手を抑えて座り込む彼女の肌が擦り切れている。 「指や手は動くかな?」 「ん!痛い」 横を見ると車止めブロックがあり、角にぶつけたようだった。 「腕は上がる?」 「痛い、です」 先ほどより赤黒く腫れた気がしたので、 「病院行った方がいいね」 唇を噛んでギュッと目をつぶる彼女がうなづいたので救急を呼んだ。 「そこの学校だよね?」 と確認し検索して電話をかけ、誰か来るように依頼する。 「ママ、怒るかな…」 と呟く彼女が気になったが話し掛けて気を紛らわさせた。 救急と担任がほぼ同時に到着し、事情を説明して担任に連絡先を教え後を任せて会社に戻った。 夜、携帯が鳴り出てみると少女の母親だと名乗った。遅いが御礼に伺いたいと言う。 何もしていないと遠慮したがあまり拒否しても悪いので部屋にいると伝えた。 しばらくするとチャイムが鳴りスーツの女性が立っていた。 「あいりの母、○○真由美です。この度は大変御世話になり~」 丁寧に挨拶する彼女の背後に風にあおられた雨が当たった。 「濡れるから中へ」 恐縮する彼女を部屋に上げお茶を薦めた。 「幸い小さなヒビで、しばらくギプスで様子をみるそうです」 「手術など大事にならず良かったですね」 「はい、おかげさまで」 「娘さんの怪我じゃお父さんも心配してるでしょ」 「あ、いえ。あの…」 口ごもる様子に慌てて話題を変えた。 「そういえばお母さんは厳しいんですか?」 「え?どうして?」 「怒るかな、って呟いてたから」 彼女は深く溜め息を吐き、ソファーで膝を抱え額を押しつけた。 「厳しいつもりは…ただ、回りに迷惑かけないようしっかりって…」 ああそうか、とその様子から察し彼女の肩をそっと叩いた。 「大丈夫ですよ。あいりさん、泣かずに我慢してたから。痛かった筈なのに」 彼女が小さく鼻をすする。 「お母さんももっとリラックスしてもいいんじゃ…」 そう言った時、彼女がわっ!と泣き出した。 参ったな…女性の涙は苦手だ…