波瑠はシートに体を預けながら、隣に座る雄馬の顔をじっと見つめていた。
頰は酒で上気し、普段はきりっとしている目元が少し潤んでいる。
終電を逃したことを理由に「私の家、近いから…」と誘ったものの、内心では自分でも驚くほど鼓動が速くなっていた。
「……ねえ、今森くん」
低く甘い声で囁き、指先で彼のネクタイの先を軽く摘まむ。
タクシーの暗い車内の中で、波瑠の唇がわずかに弧を描いた。
「もうこんな時間だし……私のマンション、もうすぐよ。
少し休んでいく? 無理に帰らなくていいから……」
そう言いながら、波瑠は少し体を寄せ、肩が触れるくらいの距離に近づける。
柔らかい吐息が雄馬の耳にかかるように。
「仕事の愚痴、もっと聞かせてくれたら嬉しいな。
……それとも、ただ黙って一緒にいるだけでもいいの。
どう? 嫌じゃない……よね?」
波瑠はそう言い終えると、長い睫毛を伏せて上目遣いに雄馬を見つめた。
普段は部下を厳しく指導する女上司の顔ではなく、酒の力も借りた女の、甘く危うい表情だった。
「私の家、広いベッドあるし……ゆっくり休めるよ?
……雄馬くん、今日は特別に、甘えていいんだから」
黒木波瑠 40歳 課長
波瑠にじっと見つめられ、甘い誘惑の言葉。普段は厳しい女上司で嫌っている同僚もいる中で僕は、憧れを超えて密かに好意を抱いていた。そんな相手にいまこうして手を引かれて、いつもは見せない甘えた声で問いかけられ、断る理由など存在しなかった。
「……えっ、いいんですか?」
「そ、そうですね、こんな時間だし……じゃあ、お言葉に甘えて…。」
波瑠の肩が少し触れ、甘えた声が耳元で囁く、仕事で見せる厳しく指導する女上司の顔からは想像もしなかった大人の女性の色気を見せ、危うい表情を浮かべていた。
二人は波瑠の家の前でタクシーを降りた…。
タクシーを降りた瞬間、夜風が少し冷たくて、私は無意識に雄馬の腕に軽く寄りかかった。
エレベーターの中で二人きりになると、さっきまでの甘い声とは少し違う、掠れた声で囁いた。
「本当に来てくれて、嬉しい」
指が自然と雄馬の手に絡む。
ドアが閉まる狭い空間で、私は彼の胸に額を軽く押しつけるようにして、甘えるような仕草をした。
普段、会議室で冷徹に指示を飛ばす女上司の姿とは、まるで別人だった。
部屋の鍵を開ける手が、少し震えていた。
照明を落としたリビングは、シンプルで落ち着いた雰囲気。
ソファに雄馬を座らせると、私はキッチンへ行き、冷蔵庫からワインのボトルを取り出した。
「もう少しだけ……飲む? それとも……お水でいい?」
グラスを二つ持って戻りながら、私は彼の隣に腰を下ろした。
距離はもう、ほとんどゼロ。
スカートの裾が少し捲れ上がり、白い太ももが露わになるのも構わず、雄馬の顔を真正面から見つめる。
「今森くん。さっきからずっと、変な顔してる」
くすっと小さく笑って、グラスを彼に渡しながら、自分のグラスを軽く傾ける。
ワインの赤が唇を濡らす。
「嫌々付き合ってくれたと思ってたのに……
こんなに素直に私の家まで来てくれるなんて。
ふふ、意外と可愛いところあるのね」
私はグラスを置くと、ゆっくりと雄馬のネクタイに指をかけ、緩めながら体を寄せた。
息がかかるほどの距離で、目を細めて囁く。
「今日は、帰らないくてもいいよね。
朝まで、ゆっくりしていって」
唇が、雄馬の耳たぶに軽く触れるくらい近づけて。
「どうしたの? そんなに固くなって。
女の家に来たくらいで、緊張してるの?」
私は自分の言葉に自分で頰を熱くしながらも、抑えきれない衝動で彼の胸に手を置いた。
心臓の鼓動が、速くなっているのが自分でもわかった。
「雄馬くん……」
名前を呼ぶ声が、甘く溶けるように低くなる。
「キス……しても、いい?」
その瞬間、私は目を閉じて、わずかに唇を開けた。
波瑠が軽く寄りかかられた瞬間に雄馬も鼓動が早くなっていく…。
二人きりになり波瑠の指が自然と絡むと、更に鼓動が早くなった。
ドアが閉まる…狭い空間で波瑠が胸に額を軽く押しつけるようにして、甘えるような仕草をしてきた。
僕の知らない女上司の姿がそこにはあった。
女上司も戸惑っているのか、部屋の鍵を開ける手が、少し震えていた。
照明を落としたリビングは、シンプルで落ち着いた雰囲気で、初めて入るその部屋に緊張する雄馬。
ソファに座ると波瑠にもう少しだけお酒を飲むか聞かれて、どうするか迷う雄馬。これ以上飲んだらマズいかもしれない…。水を飲んで気持ちを落ち着かせるが、それとも少し飲んで紛らわせるか…、決めきれない雄馬はとっさに言った。
「黒木課長は飲みますか?飲むならお付き合いしますよ…。」
グラスを二つ持って戻りながら、波瑠が隣に腰を下ろした。
距離はもう、ほとんどゼロ。
スカートの裾が少し捲れ上がり、白い太ももが露わになるのも構わずにこっちの顔を見つめてくる。
変な顔をしていると言われ、くすっと小さく笑った表情に思わず可愛いと思ってしまった。
雄馬はグラスを受け取り、波瑠も自分のグラスを軽く傾けた。
ワインの赤に濡れた唇に見惚れる雄馬。
「いや、そんなことないですよ…。本当にいいんですか?」
上司とは言え女…このまま朝まで…
そんなことを考えている間に波瑠に名前を呼ばれ、思ってもみなかった台詞が…。
「キス……?え?」
驚く雄馬は返事も忘れて波瑠の唇に重ねた。
唇が重なる。
「……んっ……」
柔らかく、熱い。
最初はためらうような優しいキスだったのに、すぐに雄馬の欲情が伝わってくる。
私は目を閉じたまま、指を彼のシャツの胸元に絡めて、甘く受け入れた。
「ん……ふ……っ」
舌が触れ合い、絡み合う。
ワインの味と、雄馬の味が混ざって、頭の奥がぼうっと熱くなる。
普段は絶対に見せない、女としての弱い部分が一気に溢れ出してしまった。
私は彼の首に腕を回し、体を密着させる。
胸が雄馬の胸板に押しつけられ、ブラウス越しに自分の硬くなった先端を感じて、恥ずかしさで体が震えた。
「……はぁ……雄馬くん……」
キスを少し離した瞬間、糸を引く唾液が光って、私は潤んだ目で彼を見つめた。
頰は真っ赤に染まり、息が上がっている。
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