手に取った本は、最初は峰先生の独特さを感じる事が出来、たが、読んだ覚えがなく、特別な…アニバーサリーに対しての寄稿かなと思っていたが
特定の小説は映像より多くを語り、問いかけて来るものも難しくはなく、答えは幾つでもある寛容さを持つ。
峰先生の作品は特に言葉の意義の豊かさが秀でており名のない感情を語る。
日常で手に取れるものを深堀りする事で特別な意味を持つものに変える筆力。
文学部卒である果歩は官能小説はあらゆるものを読みこなしてきた。
SMもレイプものも。
しかし…その本の峰先生の執筆である節が見えた時、果歩の胸の鐘が叩かれた。
恋愛小説のラブシーンとは全くの別物であった。
女が受ける性的拷問。
果歩は直ぐにその女に投影された。
女故の嬲りを受けるプライドの高い女。
薬を盛られ当初の目的の自白さえわざとお預けされる。
一筋触れたら得られる快楽を、焦らしに焦らされ気丈だった女が狂おしく泣き叫び、壊された玩具の様に悶える。
そして社会的鎧を脱いだ女はひれ伏し犬同然の『躾』をされ、ヒトへ戻されるこそ地獄の始まり。忘れられる程男の手腕は甘くは無い。
拠り所を求め再び擦り寄る雌犬。
『その意味…君の心と身体は理解しているのかな…』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その時、視界が遮られる。
再び躾を受け始めた果歩は………また目隠しを……
否、違う………
『……気になる本でもあったかな』
耳の後ろで問いかけられ、果歩は悲鳴の様な呼吸音を出す。
峰先生………?
この掌は先生?
いたずらっ子の様な…それとも本の内容をダブらせた?
違う?
いつから私を見ていたのか……
そしてやっと慌てて本を閉じ隠すように抱える。
真後ろに感じる圧。
(ち、近いです…先生…)
熱くなる背中。ときめきより騒めきが体温を上げる。
【おはようございます。労いの言葉、嬉しかったです、こちらこそありがとうございました。
また、ご相談なのですが
初めに精神的蔑まれからハード系へ、
と申しましたが、最初に提案しました
❸の不感症で彼氏とのセックスが苦痛
中学の修学旅行中、先生に夜這いをされ身体を舐めらたり、指で弄られて挿入も途中までされて凄く気持ち良くなっていた事や、痴漢に会うと立っていられなくなるほど感じてしまう事
(私自身の過去を参考にしているので…)
つまり愛し合う事の快楽が分からず、一方的で辱められる事に性癖がある事を通し、
服従要素を育てられ…という峰先生の執筆を入れられないかなと思いまして。
精神的か肉体的ハードへ行くのかは峰さんの嗜好にお任せします。
既にこの先の流れを決めているなら、また機会があった時にでも。
我儘言いましてすみません。】
「っと…、すまない…。今の時代、こういうのもダメだというのはわかっているんだがね…。あまりにも真剣に読んでいるモノだから、つい…ね…、許してくれるかい…?」驚く、というよりも緊張が先行するような反応。パッと本を閉じ、胸元に抱えながらも振り返るまでは至れない初々しさ。塞がれた視界はあっさりと解放され、トーンダウンした一言目とは違う柔らかい言葉での謝罪が果歩の耳に届く。「あんまり公にはしていないから、君も知らないかもしれないな…。」そう口にしながら少し果歩から離れ、ソファに腰を下ろす。少し低い位置から、本を抱く果歩を見つめ、話しを続ける。「担当になった君には知っておいてもらわないといけないね…。」そして男は語り始める。シリーズ化されている恋愛小説。普段から新刊が発売される感覚は一定だが、時折その感覚が乱れることがあったこと。その間は実は別の仕事を引き受けているということ。そしてそれがSM官能小説のゴーストライターだということ。「古い友人からの依頼でね…。私も描くことは嫌いじゃなかったから試しに引き受けてみたのがきっかけさ。幻滅したかい…?恋愛小説家が裏では官能小説を書いていた…なんて。」少し苦笑いを浮かべながら男は、語りを一旦そこで結ぶ。別段、公になって困るという程の事ではないが、アシスタントあるいは担当編集者にはある程度の理解がある人間でないと困る。のは、言うまでもない。そもそも官能小説という物に、マイナスのイメージを持つようなタイプであれば一緒に仕事をするのは難しいと言えるからだ。「幻滅させていたらすまない。もちろん、私の方から編集長にこの旨を伝えれば、君に一切の不利益がないように別の作家への再配属は可能だ。これでも有難いことに、新刊はいつも100万分以上を売り上げると言われている人気作家、と言われているからね。その辺りは彼も…編集長も寛容なんだ。」無理に引き留めはしない。理解し、許容し、自らの意思でその場に留まるのか、それとも受け入れられないと逃げ出すのか。それは自分で決めるといい。男の言葉は暗にそう語っていた。男の描く官能小説は甘いだけのモノではない。女の心の内に眠る官能的な、雌の衝動を呼び覚ますように。否、健全な女にさえ、元からそう言う癖があったかのようにしみ込ませ、植え付けていくことも。理性よりも本能、心よりも身体が男の行為を求め、身体が感じる感覚に遅れて脳が追い付いてくる。書き換えていく、書き換えられていく感覚か。「可能なら君のような、若い女性の感想も聞きたい。何を思い、どう感じるのか、何が足りないのか、もっと必要なのは何なのか…。より良い作品を…と言ってくれたね…、私はむしろこっち側に力を貸してほしいと思ってもいるんだ…。もちろん…。『どうするかは、君が決めること』だけどね…。いずれにしても、しばらくはゴーストライターに身を置く期間にはなっているんだ。その手の中にあるものに、興味が出てこなかったら…少しつまらない期間を過ごさせてしまう事に…なってしまうね…。」膝に肘をつき、少し前かがみ気味に両手の指を交差させて口元が隠れるような体勢。射るような視線で果歩を見つめながら、男はそう話した。初顔合わせの時よりも少し艶やかな雰囲気。無防備さが増す服装。明らかに果歩が意識して今日を迎えたことは男にもわかった。幾様にも染まり得る資質、を果歩に感じていた。【おはようございます果歩さん。... 省略されました。
私の耳の後ろで低く囁いた峰先生にびくりとし、固まってしまった果歩。
その後先生は、セクハラを意識させてしまったのか…申し訳なさそうに少しおどけて謝った。
「いえ…すみません、本当に真剣に読んじゃったんです。」
私もまだ整わない息を紛らわわせ明るく答えた。
思えば担当者が峰先生の応接室にあった本を堂々と読んでも構わないのだ。
過剰反応をしてしまって申し訳く思う。
(やはり私は普通の癖ではないのだろう…)
ソファーに座り官能小説を書くに至った経緯を話し始める峰先生。
立っても座っても絵になるスタイル。
先程まで目をかざしていた指。男らしいが…長くしなやかさもあり美しさが勝る。
『幻滅したかい…?
恋愛小説家が裏では官能小説を書いていた…なんて。』
『私の方から編集長にこの旨を伝えれば、君に一切の不利益がないように別の作家への再配属は可能だ』
「え、あ、いえ、幻滅など…いたしませんでした、意外でしたけど、やはり峰先生はどんな作品でも…」
先生の担当は離れたくないです、私ではだめでしょうか」
更に感想めいた事を言いたかったが、やましさが口を止める。
それより峰先生に会えなくなるのは嫌だ…
尊敬と憧れに『もうひとつ』が足された今、なるべく傍に居たい。
『可能なら君のような、若い女性の感想も聞きたい。
何を思い、どう感じるのか、何が足りないのか、もっと必要なのは何なのか…。
より良い作品を…と言ってくれたね…、私はむしろこっち側に力を貸してほしいと思ってもいるんだ…。
もちろん…。どうするかは、君が決めること』
「ご協力致します、させて下さい、先生のためになるのなら…」
正直に話す事は自分にとってまずいのかもしれない。
普通の官能が理解できるのであればもっと良かっただろう。
だが、今の様な作品なら他の人間が分からない事も少しなら言えるのではないか…。
『だけどね…。いずれにしても、しばらくはゴーストライターに身を置く期間にはなっているんだ。
その手の中にあるものに、興味が出てこなかったら…少しつまらない期間を過ごさせてしまう事に…なってしまうね…。』
「いえ、先生の別の顔の作品、楽しみにしてるんです。
全部読ませて頂くつもりでした。」
微笑みながら果歩は担当から外されまいと必死だった。
膝に肘をつき、少し前かがみ気味に両手の指を交差させて口元が隠れるような体勢。
射るような視線で果歩を見つめながら、男はそう話した。
先程の柔らかに笑う峰先生とはまた違う顔…。
射るような目で私の内側を見ている様だ…
(あの指で……)
果歩は目に焼きつける様に動きを見る。
(仕事中なのにいけない…)
先程の恥ずかしさを引き摺りながらも峰先生に外されぬよう必死にアピールする。
「お力になれるのなら『何でも致します』」
縋る様に言う。
【峰さん、こんにちは。
峰さんがまたお相手くださった事でこちらこそ嬉しいです。
私は寂しくしておりましたので……
❸は個人的に入れたかったというのもありますよ。
我儘を受け入れて下さりありがとうございます。
峰さん、もしやもう物語の山場まで考えてらっしゃるかもと思ってしまいました。
もう謝りませんので、よろしくお願い致します。】
【ご事情もあってのことだと思いますので、仕方ありませんよね。
修了を告げられた時は私もかなりつらかったですが、こうして再開できて本当に嬉しく思っています。
我儘だとは思っていません。
というか、果歩さんの我儘を私は求めているのかもしれない。
だから願望も希望も、妄想も何もかも…全部ほしいんですよ。
買い被り過ぎですよ、私もそこまで大した内容が書けているわけではない。
ただ相性と運に恵まれ、貴女のようなお相手が見つかったというだけですから。
後ほど本編、返していきますね。】
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