朝、学校に出かける私の歩調は軽快だった。 ざわめいた教室に入れば、友達の笑顔に囲まれる…。 さて、中学校は公立? それとも私立? 先生は、両親達ともよく話し合って…と念を押す。 「あっ、あなたは、よくお父さんと話し合ってね…。」 先生は、家庭の事情を察する。 私の席、教室の片隅。 背の高い掃除道具があって、今にも倒れそうな程。 ここで、私は家に戻ってからの事を考えてる。 中学校の事、そして…。 机に広げられた教科書、真っ白なノート。 私は、ノートの上に左手を広げた。 ポケットに忍ばせていたカッターを取り出す…。 1センチ程銀の刃をスライドさせて、薬指に当てた。 「痛っ…!」 でも、声を殺す。 教室の片隅、誰にも気づかれない…。 スポイトを押したみたいに、赤い血がノートにポタポタ落ちている。 普通だったら驚くのに、もう私は何とも思わない…。 母の記憶。 実は、私が覚えているのは、顔よりも指。 母の荒れた指先。 水仕事をし過ぎたのだろうか…。 母は、よく私を膝の上に乗せてくれた。 冬の寒い頃、よく私の腿を摩ってくれた…。 「寒くない?」 「うん、寒くないよ…。」 母の荒れた手が、ちょっとトゲトゲして痛かった。 でも、母の優しさが好きだった。 学校が終わる。 私の足取りは重い…。 母を亡くしてから、父は変わった。 誰もが格好良いと誉めてくれた父が、まさかと思う程に…。 夜、父が仕事から戻る。 「お帰りなさい…。」 父の返事はない。 じっと見つめるような父の眼が、私を刺すみたいに…。 「はい…。」 三つ編みの髪を揺らすようにして頷く私。 最初は信じられない事だった。いえ、信じたくない事だった…。 でも、もう私は、父と二人きりの生活の中で、慣れる事にした。 父は、暴力などふるわない…。 全裸の私。 父の寝室に入り、敷かれた布団の上をよろめく様に這い進む。 父のモノは、私に触れられる前から、すでに張り詰めていた。 私は、父のあぐらをかいた毛脛に凭れるように…。 触れた父のモノ、とても熱い…。 父のゴツゴツした私の髪を撫でる。 それは、父から私への言葉のない合図。 カッターで切った傷が、私の指先に数箇所。 私の指で握られた父のモノは硬くなり、血管を浮き上がらせて激しく脈打つ。 父のにおいが漂う。 酸っぱいような、苦味のあるような…私の大嫌いなにおい。 ダンディだった父が、浮浪者みたいになってしまった…。 愛していた母を失った父を思うと、可哀想で仕方ない。 父のモノから放たれるにおい…。 私は、息を止めるように、鼻の感覚を殺すように…。 父のモノに口付ける。 急いで、舌を這わせる。 私は、唾液で包むようにしながら、脈打つモノを隅々まで舐めてゆく。 父のにおいが薄れるし、父も快感に酔ってくれる。 一年もこうしていると、体が覚えてしまう…。 それは、本当に悲しい事で、おぞましい事。 父のモノを咥える自分が嫌いだ…。 本当は、泣きたい。 泣いて、誰かに抱きつきたい。 いやだぁ…って、泣きたいのに…。 涙が出ない。 どうしてだろう? 父の人形になってしまった私。 父の太股を摩りながら、私は父のモノを、まるでキャンディーのように…。 やがて、父の手のひらが、私の頭を押し下げる。 「うっ…。」 父の湿った声。 私は、喉の奥を突かれて、死に物狂いで掠れ声を漏らす。 それは、悲しい笛の音みたいに…。 髪の毛ごと強く掴んだ私の頭を、父は激しく上下する。 三つ編みの根元からおくれ毛が何本か跳ね出す。 私の汗で濡れた頬や額にくっついて…。 「喜代子…」 父の咽び泣くような声。 それを聴くと、私は泣きそうになる…。 無感情のまま、父のモノをしゃぶる私なのに…。 だって、父は…母の名前を呼び、私の頭を掴んでいる。 私の小さな背中やお尻を見下ろして、快感に酔って、母の名を呼ぶ…。 お父さん…私、お母さんに似ているの? 私、お母さんみたいに優しくなれないよ…。 父は、私を母に見立てている。 父は、私を母であると思い込もうとしている…。 だって、父は私を抱く時、私を見ない。 私と眼を合わせない。 父が絶頂に達した。 父のモノが口の中でピクンとひきつけを起こし、私の口内は父の精液で満ちる。 うっ…、息が出来ない。 ネットリした生温かい汁が鼻の中にまで逆流する。 涙が滲む。 胸の奥に痛みが走ったせい…。 父は、私のもっともっと深い所に流し込もうとするかのように、私の頭を押す。 いよいよ息が出来ない…。 咳き込む事さえかなわず、意識が薄れる。 こういう時、どうすればいいか…。 そう、父の波打つような精液を飲み干せばいい。 私は、喉を鳴らして父の射精に応える…。 最初に飲まされた時、父の苦いオシッコだと思った。 でも、やがて、それを「卵」だと知った。 数え切れない程の卵を…父の体の中から出た卵を、私は飲んだ…。 本当は、私の口ではなくて、私のアソコで飲む事も…知っている。 ああ…。 最後に父のモノを綺麗に舐めると、私はゆっくりと這って襖へ向かう…。 父は、まるで何もなかったかのように…、シミだらけの背中を向けている。 おやすみなさい…の言葉もないまま、私は自分の部屋へ…。 ペタンペタンと素足が廊下に音を立てる。 ふと口ずさんでみる…。 母の唄ってくれた子守唄。 父の精液と私の唾液で光る…私の唇から漏れる小さな音色。 この声、お母さんに似ていない…。