同級生に植田という男がいた。 顔立ちは悪くないが、運動嫌いでどこかオジサンじみた腹をしている。しかし流行への嗅覚は鋭く、いつも垢抜けていて、キャンパス内でも自然と人が集まるムードメーカー的存在だった。 そんな植田から、ある日「加山ちゃんてどう?」と聞かれた。 どう?って……? どんな子か、ということらしい。 加山ちゃんとは、俺が所属する大学の陸上部で一つ下の女子部員だ。 肩までのショートカット、くりくりの目が愛らしい。おとなしくしていればそれなりに美形で、雰囲気は山本美月に似ている、気がする。まぁ、そっち系統の顔立ちだ。 ――おとなしくしていれば、だが。 本人はかなりノリが良い。男子小学生的なノリがある。同じくノリのいい先輩の冗談に全力で乗るし、下ネタなんかも言ってしまう……。本当におとなしくしていればいいのだが。 ちなみに種目は走り高跳びをやっていて、競技人数が少ないとはいえ、1年生で県のトップ5に入る実力者である。 人数が少ないこともあり、俺も仲良くしている。ただの後輩、よりは少し気にしている存在だった。 俺はそれとなくかいつまんで、彼女の人柄や雰囲気を伝える。 植田は、「ふーん……」と含みを持たせた返事をして、そのまま別の話題へと流れていった。 それから、しばらくしてからのことだった。 植田が加山と寝たという話を聞いたのは……。 大学近くの居酒屋。飲み会の終盤、酔いが回って気が大きくなった植田は、仲間内でその話を滔々と語り始めた。 「最初はSNSのDMからなんだよね。ちょっとイジったらノリよく返してきてさ。そこからメシ誘って、リアルで会って……まぁ徐々に、そして急速に距離を縮めて、狩ったわ」 ジョッキを傾けながら、自慢げにニヤリと口角を上げる。 「あいつ、普段は部活で男っぽいノリしてるじゃん? でも二人きりになると全然違うの。あの滑らかな肌とか、陸上やってるから引き締まった脚とか、ハリのある太ももがすげぇエロくてさ……」 植田は手振り身振りを交えて、その夜の出来事をリアルに描写していく。 「加山ちゃん意外と乳あるわw」 「鷲掴みしながら立ちバックしたったw」 植田の軽薄な言葉と周囲の笑い声が、妙な耳鳴りとなって俺の頭の中で激しく反響する。 自分がそのとき、なんとツッコんで受け流したのか、もうろくに覚えていない……。 敗北感か喪失感か、あるいは高揚か……よくわからない感情で、ただ胸の鼓動が強く、苦しくなっていった。 その日の夜。 俺は部でとった集合写真のユニフォーム姿で写る彼女をピンチアウトし、ティッシュを引き抜いた……