「なんでダメなんですか?…結婚してるから?おばさんがいるから?」
もちろんそれもダメな理由にはなるけど、岳英さんの言い方はなんだかそれじゃない気がして…我慢できなくなって、椅子から立ち上がります。
「おじさんは…私のことどう思ってますか?おじさんが…私のこと、そういう封に風に見れないって言うなら…ちゃんと諦めます」
おじさんに詰め寄って…おじさんの右手を両手で握りしめにいくと見上げて真剣な眼差しで…。
あくまで娘の友人としてか見れないとはっきり言われたら…諦めようと思って賭けに出ました。
【私もご飯食べてから…って思ってたんですけど、もも香の結婚する人は〜…とか煽るからです。つい我慢できなくなっちゃいました】
もも香の真剣な眼差し、表情、つかみかかりそうな勢いで私の手を握った。
『・・それは…、男として女であるもも香ちゃんをどう思ってるかって事を聞いているんだよね?』
(この期に及んでそんな言い方はないだろうと自分自身でも思うが、もも香の圧がすごい。
それだけ真剣なんだろうと思うと、こちらも真剣に答えなくては。)
『もも香ちゃんの事をどう思ってるか、それはさっきも言った通り。
もも香ちゃんと結婚できる人は幸せだろうと。
だから、そいつにおじさんは嫉妬する。
だれにも渡したくない。』
ふうと息を吐き、言ってしまった、もう終わりかなと思うと泣けてきた。
もう少し、一緒に時を過ごしたかったのに。
気持ちを押し殺しておけば、まだ、いろいろと関係性が出来て時間を一緒に過ごす事も出来ただろうけど、
気持ち打ち明けてしまったら、今度は好きだという気持ちが暴走するに決まってる。
それほど、強い理性があるとは思ってないから、もも香が近くに居れば手が届けば、
手を伸ばせば触れられるなら、躊躇せず触れようとするし押し倒すかもしれない。
自分の気持ちが暴走するのが怖かった。
【それねッ?なるほど。】
「それって……」
岳英さんの言葉の意味を考え…一つの解釈に行き当たり、ぱちぱちと瞬きを繰り返します。
もも香を女として見たとき、他の人に嫉妬して誰にも渡したくないと思う…つまり、もも香を「娘の友人」として庇護の対象として見ているのではなく、一人の女として見ていて、独占欲のようなものも抱えて…。
(ほんとに、おじさんが…わたしのこと、そういう風に見てくれてる……?)
つまり…自分の片想いだと思っていたのに、実は相手も…ということを知り…胸がまた違うドキドキに侵されていきます
「じゃあ…私のこと、好きってことですよね」
こうやって言葉で明確に示してほしいと求めてしまうのは、性別の違いが若さなのかとも思いますが…岳英さんの肯定のリアクションに最後の確信をもらい、思わず握り締めていた手を離して抱き着いてしまいます。
「おじさん、わたし、うれしい…ありがとうございます」
向かい合うように立っていたので、岳英さんの胸に頬を押し付けるように抱き着いています。もも香の腕は岳英さんの背中に回って、ぎゅうっと力が込められています。
でも、想いが通じたら、次はまた別の欲が出てきてしまいます。
抱き締め返して良いものなのかと困っているであろう岳英さんに…また一つお願いを……。
「おじさん…わがままをひとつ言ってもいいですか?春奈とかおばさんを悲しませたいわけじゃないんです…でも、キス…してほしくて…」
でも恥ずかしいし、目を見て断られるのも怖いので、抱き着いて顔や視線を合わせないままです。
もも香は男性にそんなことを求めるのは初めてで、そもそも抱き着いたりもしないけど…これでも勇気を振り絞っています。
「私の初めてのキスなんです…だめですか?」
強く雨が降る夕方…家で二人きりで戸惑う相手に抱き着いて、キスをねだって…悪い女…ともも香の中の冷静な部分がそんなことを言っているのが聞こえてきます。
【おはようございます。岳英さんは女性の気持ちを乗せるのがお上手ですね】
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