2016/11/15 01:27:00
(VsK5Jooy)
そっと再開…。
しおりさんの「キミ、女出来た?」、その言葉が始まりでした。「はあ?出来てないけど…。」と返事をします。
「出来たやろ~?ちゃんと言うてみなあぁぁ~。」とくすぐって来ました。「アハハ…。出来た出来た、出来た出来た。」と言って笑って堪えます。
なのに、しおりさんは「どんな娘?どんな娘?」と興味津々に聞いて来ます。もちろん、そんな女性などいるはずもありません。しおりさん一筋の僕です。
ところが、半分からかってやろうと作り話を始めてしまいました。とりあえず、会社の事務員の女性の方を頭に思い浮かべて、話を進めます。
「僕より4つ上の坂井さんっていう事務員さん。」
「可愛い娘?」
「うん。可愛い。(実際、ほんと可愛い方)」
「口説かれたの?口説いたの?」
「口説かれた…。」
「それで~、済ませた?」
「ん?」
「エッチはした?」
「それは言えんわぁ~。」
「なんで言えんのよ~。大事なことでしょ~よ?」
「なら~…、やった。」
この頃になると、白状するタイミングを失ってしまい、嘘のはずが、僕の中でそれが本当の話になってしまいます。
「なら、大事なお話ししよ。タイト。」
マズイ流れだとは思いました。ただ、しおりさんが話そうとしている「大事なお話」というのが、とても気になったのです。
彼女と結婚など出来ないのが現実です。もしかしたら、いつか本当に彼女から聞かされる話かも知れません。
僕は真顔になり、正座をして話を聞く姿勢をとりました。しおりさんも、普段は見せない思い詰めた顔に変わりました。
「もう、その娘のとこに行きなさい。いつまでも、私みたいなのに引っ掛かってたらダメだから…。」とかなり衝撃的でした。
「あのねぇ、私もおんなじなの。なんか、進めんのよ。」
「しおりさんも?」
「もう、ずぅ~とキミと一緒でしょ?毎日楽しいけど、考えると全然前に進んでないのよ。」
「結婚とか?」
「そうやねぇ。」
「将来的なことや。結婚とかしたい?」
「私も看取ってもらう人、探さんといかんから…。」
真顔のしおりさんの目が少し潤んでいました。「ウソでしたぁ~!」などと言える雰囲気でもなく、僕自身その言葉にどこか考えさせられました。
そして、ショックでした。まさか、少しでも僕を重荷に感じているとは、思ってもいなかったからです。
冗談のはずが、一気に別れ話に発展してしまいます。そして、僕も感傷的になっていきます。
「しおりさんの重荷になってるんやったら、嫌やわ。」と言いたくもない言葉を吐いてしまいました。
「うん。その娘のとこに行きなよ。」と言われ、なぜかしおりさんの家を後にしてしまったのです。
さてさて、家に帰ったのはいいが、冷静になると、そんな事務員の彼女などいるはずもなく、なんで大好きなしおりさんを失わないといけないのか。
第一、僕はなんでしおりさんと別れてここに帰ってきたのか?一時的な感情というのはとても怖いものです。
しおり奪還作戦が始まります。