2023/06/15 01:24:45
(vHGXazkQ)
(たしか写真部の部室に使ってるのは3階の端の教室だったよな…)
自分の教室を飛び出した拓海は、北校舎の階段を駆け上がった。
夏芽からの意味不明のラインか助けを求めているものだと思えてならない。
3階に駆け上がった拓海は、廊下の先の教室から歓声のような声を聞いて近づいた。
(な、なんで?なんでこんなとこで…)
窓から覗き見た光景に自分の目を疑った。大勢の生徒に囲まれた夏芽が姿になっていたのだ。
訳がわからなかった…どうして夏芽が人前で制服を脱いでいるのか…
「何やってんだ!お前ら!」
勢いよく扉を開け放ち拓海が教室へ飛び込んだ。
「行くぞ!夏芽!」
拓海は、幼馴染の突然の登場に固まった夏芽の腕を掴み、足元に脱ぎ捨てられた制服を拾い上げると、教室の扉に向かう。
「ちょっと待てよ!遠藤!」
教室から夏芽を連れ出そうとした三宅…三宅が拓海の肩に手をかけた瞬間、拓海は振り向きざま拳を振るった。
「ウゲッ!」とカエルが潰されたような声とともに三宅が吹っ飛んだ。
その様子に会員たちが怯んだ隙きをみて廊下を走り下の階へ…
2階の空き教室に一旦身を隠し外の様子を伺うが誰も追って来る気配はなかった。
三宅をはじめ会員たちは、ヲタクばかりで拓海の鬼のような形相にびびったのだ。
夏芽に拾い上げた制服を渡し着させると急いで学校をあとにした。
拓海は夏芽の手を掴み無言のまま早足で学校を離れた。夏芽もまた何も言わず拓海に従った。
「なんであんなこと…」
拓海が口を開いたのは、あの公園のベンチに腰を下ろし、しばらくしてからだった。
拓海の問いかけに夏芽は俯いたまま何も答えない。
夏芽の俯いたままの横顔を見て拓海は思った…夏芽が、自分の意思でしたわけじゃない…と…
「もしかして三宅に脅されて…」
その瞬間、夏芽がビクッと身を震わせる。
(やっぱり…じゃなきゃ夏芽があんなことするわけ…ま、まさか脅されたのは、あの動画?)
拓海が偶然見つけた動画…三宅がそれを見つけたとしても不思議ではない…
(あの時…あの動画を見つけた時に俺が何とかしてれば…)
動画を見つけた時、何ができたかは分からないが、もし何らかの行動を起こしていれば…
拓海が握りしめた拳の中で爪が肉に食い込み血が滲んだ…
(夏芽を守るっておじさんが亡くなった時に約束したのに…俺は…俺は…)
夏芽の動画を見つけオナニーに耽ったばかりか、義理の父親に調教される様子を覗き見て、それを知られ脅され、夏芽がアナルセックスをする場面まて見せつけられた…それだけでなく夏芽の母親の美奈子と過ちを犯してしまった…
拓海は自分を責めた…
2人とも黙ったまま時間た経ち、いつしか日は暮れ公園に人影はなくなっていた…
「夏芽…初めて会った時のこと覚えてるか?前にあんまり覚えてないって言ったけど…ホントはちゃんと覚えてる…この街に引っ越してきた俺を父さんと母さんが連れてきてくれて…まだ誰も友達がいなかった俺に話しかけてくれたのが夏芽だったよな…」
拓海は、暗闇の中、外灯に浮かんだ白い砂場を見つめた…夏芽が全裸でオシッコをした場所だったが、いま拓海の目には幼い2人の姿が見えていた。
「夏芽…どこか誰も知らない所へ2人で行かないか?あんな酷いことした俺のこと、信じてもらえないかもしれないけど…夏芽は…夏芽は俺が守るから…」