2023/06/25 06:23:11
(hAbp259.)
「そうかも…でもダメ元で不動産屋にあたってみようか…」
夏芽とふたりで何軒かの不動産屋をあたってみたが、予想通りだった。
見るからに高校生らしき二人に部屋を貸してくれる不動産はない…親の同意書が必要だとか身元保証人がとか…加えて敷金礼金の話をされては今のふたりにはどうにもならなかった。
これまで1人前のようにできていたのは親のおかげだと痛感させられた。
「やっぱり夏芽が言ってたように住み込みで働かせてもらえるところを探すしかないよな…」
不動産屋を何軒も周り、ふたりはコンビニでパンと牛乳を買って遅い昼食を海の見下ろせる公園でとっていた。
「海って薬飯いいよな…絶対この街で住むとこと仕事さかさなきゃな…」
海…夏芽にとっては三宅たちとの合宿を思い出させるものであったが、拓海の言葉に「うん…」と頷いた。
「このあと色んな店…飛び込んでみよう…」
パンを食べ終わるとふたりは、あちこちの店に飛び込んで「働かせて欲しい…」と頼んでみた…当然といえば当然、そんなに都合よく見つかるはずもなく、いつしか日は傾きかけていた。
「やっぱり簡単には見つからないな…それにしても疲れた…どうしよう?今日の夜…」
拓海1人なら公園で野宿してもいいのだが、夏芽をそんなところで野宿させたくはない…かといって必要以上の出費も避けたいところだ。
とりあえず駅に荷物を取りに戻った時、駅裏のいくつもの派手なネオンの看板が目に入った…ラブホテルだった。
入口には料金表が掲げられいて、泊まりなら普通のホテルより安く済むことを知り、ふたりは、その中でも料金の1番安いラブホテルに入った。
料金が安いだけに部屋にはドンと大きなベッドがあって、その脇に小さな2人がけのテーブルとイス、トイレと風呂はついているが、いかにも「する」ためだけの部屋…
「早く住むとこ探さなきゃな…」
拓海にとってラブホテルは初めて…仕方ない状況とはいえ、夏芽とラブホテルにいるということに妙にドキドキとしてしまう…
夏芽はラブホテルとか来たことあるんだろうか…ふとそんなことを考えてしまい、慌ててそれを打ち消す…そこから守るために2人で家を飛び出したのだから…
「先にお風呂に入って…お風呂から出たら明日のことを相談しよう…」
…………
拓海と夏芽が海の見える街を歩きまわっていたころ、学校では、拓海が三宅を殴ったことが既に広まっていた。
拓海が夏芽の腕を掴んで学校から足早に帰っていくのを見た生徒…
拓海や夏芽が揃って学校を休んでいること…
2人との連絡が取れないこと…
それらの理由で「2人は駆け落ちした」という噂までもが流れていた。
だが、夏芽の動画についての噂にものぼらなかった…
拓海に殴られ夏芽を連れ去られた三宅…この時点で2人が駆け落ちした確証もなく、また仮に噂が本当だったとしても動画をバラまく気はなかった…
あの動画は自分だけの「夏芽を脅す道具」であり、夏芽が居なくなり脅しの道具としての役目をなくしても、自分だけの「オカズ」…オカズを他人に分けてやりたくはないセコい考えのお陰で流出を間逃れていた…
この先ですが、夏芽ちゃんに風俗もいいですが、仕事も住むところも見つからず困り果て、考えた末に頼ったのは、ジムのインストラクターの美紀…どうでしょうか?