「あっ、はい、よろしくお願い致します。」
紙のショーツ…施術着の裾が心許なかったが、松倉の結婚への祝福と〖ワンランク上〗へと優しく話す様子は美桜から少しづつ不安を薄めていく。
ベッドに腰掛けた美桜の肩への指圧が気持ち良い。
それだけで術を得ている人だと思わせ、美桜の緊張が少し薄れてきた。
「いえ…とても良い香りがします…。」
少し…ぼんやりしてくる美桜。
美桜の背中を動く松倉さんの大きな掌が徐々に熱を帯びていく…。
ゆっくり呼吸をする度に思考が解れて行く気がしている…
(薬が身体に浸透して始めているか…。)
指圧に心地よさを感じているのか、少しずつ緊張感が抜け時折身体を預けてきているように感じれば、薬の効果を感じ始める男。
良い意味で言葉遣いに覇気が薄れ、ぼんやりとした返答に変わり始めているのもその判断に至った理由の一つでもある。
早々に露骨なマッサージを始めないのも男が訴えられない所以。
ベースに優秀な施術師、という物を感じさせることが安心を生み、信頼につながることを男は理解し、弁えている。
「…。」
男の手の動きに身を委ね、媚薬の効果も相まって美桜の体温が上がっていくのを感じる。
(少し自白剤の浸透具合も確認していくか…。)
多くを語らず、必要以上に言葉を交わさず数分程度じっくりと肩から首にかけ手を解すような指圧を続け、男は少しアプローチを変えていく。
「施術師が男…だったこと…やはり抵抗がありましたか…?」
少し耳元に顔を寄せて囁くように問いかける。
無料のブライダルエステだ、本心はどうあれさすがにそれを露骨に口にすることはないだろう。
しかし自白剤がしっかり聞き始めていれば、言う、言わないの判断よりも先に、聞かれたことに正直に答える、感覚が先行して口走ってしまうはず。
取り繕うような言葉がまだ出てくるようであれば、浸透度は薄い。
そうでなければ、次の段階に進める、というもの。
「男の人に…触られるの…嫌だな…って、思いませんでしたか…?」
返事を待たず2つめを矢継ぎ早に問いかける。
身体が解れていく様で…同時に自分を支える力も弱く、松倉さんに寄りかかってしまっている事は気づいていない。
首や背中に色んなツボがあるんだろう…
緊張を解く様な…自由になって行くような…
香りを吸い込む上下に動く胸…松倉さんのゆっくりとした心地よい声はメトロノームの様に…一定のリズムを刻み、美桜の思考リズムも操る
敏感な耳元へ吹き込まれる問いに小さく「あっ、」と吐息が出て
答えてはいけない理性が幾許か残ってはいるが、今の美桜は声に出したい思いで
「はい…男性で…驚きました…すみません…」
「はい…ええ…身体を触られてしまうかと思いました…」
「…恥ずかしいです…だって…」
美桜の手が自然と施術着の上から胸の辺りに触れる
【遅くなってすみません。置きにしても大丈夫ですか?よろしければお相手、続けてくださると嬉しいですが。】
躊躇いそうな言葉も止まらず出てきていることに、自白剤の効果も感じ始める。
「かまいませんよ…、本格的な施術開始前です。
気になることや懸念点はできる限り無くしていきたい。
期間内に何度も通ってもらう事にもなるかもしれない。
やはり、信頼関係というのは大事にしたいですから。」
指圧が首、肩…から腕にかけてと少しずつその範囲を広めながら、
「カウンセリングも兼ねています。
施術への不安はもちろん、この施術での希望や、結婚への不安なんかも相談してもらってもかまいませんからね…。
何でもおっしゃってくださいね…。
願望を口にするのも、不安を口にするのもとても重要なことですから…。
落ち着いて…ゆっくり呼吸して…。
大きく吸って…、ゆっくり吐いて…。」
深い薬の浸透を促しながら、開始早々に感じていた男に対する緊張を細かく砕くように解していく。
「同じエステなら、心も…身体も気持ちよくなれる方が良いですからね…。」
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