【ご配慮いただきありがとうございます。
互いの希望を尊重しながらも、自分の希望も気兼ねなく言い合える関係性を築いていけたらと思っています。
こちらとしては開始はどこからでも構いません。
が、せっかくじっくりと描かせていただくなら最序盤。
それこそ施術室に通された辺りからでもいいのかなとおもっています。
もちろん、美桜さんにご希望があればそこからでも大丈夫です。】
【そうですね、すれ違ったら話し合えたら良いですね。】
〇〇エステ着くと、受付で予約の旨とスマホのキャンペーンコードを見せる。
(こういう所初めてだからドキドキするな…綺麗になれるのかな…。
変われるのかな…。
どんな事をするのかな…。)
ときめきと希望と緊張が入り混ざる胸の内。
水色のワンピースで廊下を少し歩くと指定された部屋を見つける。
名前を呼ばれて
(あれ?今の男性の声だよね…。)
そっとドアを開ける。
甘い花の様な匂いが広がる
「…。」
予約者リストの確認は怠らない。
その日の人数や時間帯、最後に施術する客の名前。
良くも悪くも、ブライダルエステ、は結婚に縁があった女が受けるモノ。
容姿もそれなり、あるいはそう言う部分を磨きたいという意識がある程度ある女がやってくる。
要は大外れがない、美味しい仕事…男はそう思っていた。
(次が今日は最後か…。)
名簿を確認すれば、予約者の確認が取れる。
アロマの確認、ベッドメイク、施術に使うローション、薬品の類一通りチェックすると客の名を呼ぶ。
「こんにちは、本日ようこそお越しくださいました。」
女を出迎えるのは物腰柔らかな男。
スタイルも良く、女から人気も出そうな容姿。
しかし、まくられた袖から見えるのは女の太腿程ありそうな逞しい腕。
ごつく、太く、大きな手、指先がその先に繋がっている。
「担当させていただきます。松倉と申します、柴田様。」
軽く会釈しながら微笑みを絶やさず自己紹介。
そして手に持っているのは施術着。
「まずは此方をお召ください。
お着替えはあちらの更衣スペースで…、はい、カーテンの向こう側になります。
下着は中にあります紙下着をご着用ください。
お荷物、お洋服はそのまま更衣スペースの籠の中へ置いておいていただけると安心ですよ。」
施術室に充満するのは優しい甘さのアロマ。
ほのかに香る程度の強さは、しつこくなく、むしろ大きく吸い込まないと匂いを感じない程度。
だからこそそこに自白剤の効能、あるいは遅効性で効果の高い媚薬成分が含まれていても気づきようもない。
「お着替えがお済になったらこちらへお戻りください。
始めていきたいと思いますので…。」
そう言って、すっと美桜の手を取ると施術着を手渡し、カーテンがあるとはいえ配慮しているかのように男は背を向けた。
「こんにちは…」
(やはり男性だわ…エステって女性の方がやるのかと…身体に触るのよね…?)
なよなよしていない男らしい身体。
しかしそれに反する物腰のやわらかさ。
歳も近そうな…。
(不思議な人…)
「はい、松倉…さん?柴田美桜です、よろしくお願いします。」
着替えを渡され…カーテンで仕切られてるとはいえここで着替えるのか…。
と思った後
(え…紙の下着…?何でだろう…
エステってみんなそうなのかな…)
疑問は持っても、松倉さんに言われるとこちらが間違ってる気がする。
言われた通りワンピースから着替え、ロッカーの中のカサカサと音の鳴る下着を付けて、小さい歩幅で松倉さんの方へ歩いて行く。
「おかえりなさい、さ、こちらへどうぞ…?」
自然な笑みを浮かべながら、着替えを終えた美桜を迎えるとそのままベッドに腰を掛けるように促す。
さすがに施術師が男、という事に戸惑いがあるのかやや強張っている感じが見受けられるが、それはいつもの事。
男にとって、最初の警戒自体はさほど問題ではなかった。
ベッドの枕側に備えられたアロマポット。
上部から蒸気が上がっているのがうっすらと見える。
「ご結婚、おめでとうございます。
約半年後、ということで…、それまでにワンランク綺麗になって式が迎えられるように私もお手伝いさせていただきますね…?」
美桜の背後に回った男がそっと肩に手を置き、少し指圧しながら声をかける。
「と言っても、まだ緊張もされているご様子ですし、少しリラックスしていただきたいと思っています。
此方のアロマの香りはお嫌いではありませんか…?
リラックス効果の高いアロマを使用させていただいていますが、お嫌いな香りであれば香料を他のモノに変えさせていただきます。
気に入って頂けそうでしたら、軽く目を瞑り、ゆっくりと深く深呼吸していきましょう…。
落ち着きますよ…。」
大きな手のひらが美桜の肩を包むようにあてがわれる。
ぽん、ぽんと軽く赤子を寝かしつける母のようなアプローチ。
緊張を解す…、という名目で、自白剤の成分と感度上昇、体温上昇の効果を持つ媚薬成分を全身に巡らせるように呼吸を促していく。
「ゆっくり吸って…、ゆっくり吐いて…。
身体の中の中に流れていく空気を入れ換えるイメージです…。」
(そう…薬を身体に充満させるイメージですよ…。)
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