「絵のモデルに、なってくれませんか?」
そう言って、アトリエに誘い込むことができた女は、服を脱がすのも難しくないらしい。
最初はもちろん、女は着衣モデルのつもりでいる。
「どんなポーズがいいかな」
澄ました顔でじっとしていれば、それらしく描いてもらえると思っている女に、描きためた女性像を見せる。
女は、ポーズを取る参考に見せてもらっていると思っているが、そうではない。
はじめは、女の想像を裏切らない、普段着を着た女性の絵を次々に見せ、もっともらしい説明をして、女の気をひく。
「すごい、 上手・・」
ただし、着衣のものは、上手く描けているだけで、味気なく、できるだけ魅力ないものばかりを見せている。
それから、間違えたふりをして、何人もの女のヌードが、魅力たっぷりに描かれた裸婦像のスケッチブックを手渡す。
「あ、希望は着衣ですよね、 だからこれは参考にしないで」
でも、そこでスケッチブックを閉じる女はいない。
着衣のものとは比べものにならない美しさで描かれた女性たち。
ヌードになった女性の体の美しさの前では、服は布の塊でしかない。
写真のような卑猥さを感じさせない、彼女たちの姿に、いやでも競争意識をくすぐられてしまう。
「ヌードを希望する人がほとんどだから、着衣の絵は少ないんです」
裸体を描きなれた画家の前でだけ許される、特別な時間。
芸術という口実のもとに。
もし、一度だけ、自分の絵を描いてもらえるとしたら。
とくに何の魅力も感じられない、つまらない女として?
それとも、永遠に美しい姿を残す女として?
自尊心を煽られた女に、その決心をさせるには、ただ聞いてやればいいのだ。
「ヌードにする?」
2026/09/20 07:02:25
(3lnYMk0e)