「えっ?まあ、抜かれるなんて思っていませんでしたから。
次の勝負のときは絶対勝ちますよ〜。」
絵莉に対して挑戦的な目を向けて、
絵莉のコップにまたビールを注ぐ。
剣道部の佐藤先生とは、いつもくだを巻く佐藤先生に肩をかして
つれ帰るのが役割だったので、
今日はそれが2人になりそうだな・・・と考えていた。
「伊東先生、大丈夫ですか?随分と呑んでるようだけど、
腕はかすけど、担いでは帰らんよ。」
自分の横でTシャツ姿になって、もたれかかるようにかたむきながら
私のグラスにウイスキーの原液を並々と注ぐ絵莉の
肩を掴んで、後ろの壁にもたれさせた。
後ろにそったら、胸の膨らみがさらに強調されて
凶器にしかならないが、そんあ絵莉の胸を酔わずに凝視しているのは
この場には里塚しかいなかった。
ちょっとのみすぎて、暑くなったので、
自分もジャージの上を脱いで、Tシャツ1枚になった。
ゴリマッチョというよりは、最近はプロレスラーみたいな
体型になってきているのを自分では少し気にしている。
拓也に注がれたビールに、佐藤に注がれた日本酒。
飲めないと言いながらも、酔っ払っている絵莉の様子が面白く楽しくて、誰も止めようとしなかった。
絵莉が気分を悪くするでもなく、酔っ払いながらも楽しそうに飲んでいるからだろう。
唯一、拓也が絵莉をテーブルから引き剥がし、壁へと身体を預けさせてくれた。
素直じゃない心配の仕方でも自分の身を案じてくれているのだろうと思うと、絵莉は嬉しくてまたニコニコと笑う。
「里塚先生なら、人ひとりくらい、簡単に担げそうですねぇ」
ふふふ、と何が面白いのか楽しげに話す絵莉。
身長の割に長い足を引き寄せ、体育座りになって膝に腕と顔を乗せる。
いつもより近い位置にある拓也の顔を眺めていた。
そろそろお開きだと、幹事の教師が合図すると、皆ぞろぞろと店から出ていく。
後ろから続いて絵莉も出てくるが、同性の教師の腕に巻き付いている。
「せんせぇ、私もカラオケいきたい」
『伊東先生はもう帰りなさい、変な人に絡まれても危ないから。…もう、佐藤先生と里塚先生がこんな風になるまで飲ませるから。責任持って家に送り届けてやってください。二次会来るならタクシーに乗せるのころまではお願いしますよ?』
佐藤は佐藤で、年若い男性教師に熱弁をふるい2軒目に行くぞと肩を組んでいた。そちらを世話する役は回ってこなさそうだった。
結局、拓也が何も言わずとも絵莉は押し付けられてしまった。
気が付くと、電柱に手をついてしゃがみ込む絵莉と、見守る拓也だけ取り残されていた。
「うう、きもちわるい……」
吐きたくても吐けない、でも動くのも辛くて。
「里塚先生ぇ、わたし、大丈夫ですから、二次会いってください……」
しゃがんだまま、潤んだ瞳で拓也を見上げている。
「自分一人で立てなくなってるくせに
何を強がってるんですか。ほら」
絵莉の横にしゃがむと
軽々とだきあげて近くの公園のベンチまで抱っこのまま移動する。
ベンチに座らせると、近くの自販機で水を買ってきて
絵莉の横に座って、蓋を開けてすぐに飲めるように持たせて、
飲みやすいように背中を支えてやる。
「伊東先生、今日は大活躍だったんだから
少しぐらいはご褒美がないとだめですね。
これ飲んで、少し休んで元気になったら、
カラオケでもどこでも連れて行ってあげますから。
まずはゆっくり水を飲んで。気持ち悪くなったら遠慮なく言ってください。」
そういうと、自分が学生のときに、先輩たちに散々のまされて
大学の部室のトイレで朝まで吐いていたことを話し始める。
「自分の限界を知るのも、成長するためには必要なことですけど
生徒の前では絶対だめですよ。」
水を飲んで目を閉じる絵莉の頭を肩に乗せてやり
寒くないように自分が着ていたジャージの上着をかけてやる。
抱き上げられると、「きゃあ」やら「わあ」やら驚きの声を上げる。
浮遊感が怖くて、思わず拓也の首に腕を回し抱き着いてしまう。自然と胸が押し付けられるが、絵莉は気にならず自覚もなかった。
ベンチに運ばれて、夜の公園に二人きりになる。
水を与えられ素直に飲むと、冷たさが心地よくて気持ち悪さがマシになった気がした。
「ご褒美…??」
頭を隣に座る拓也の肩に乗せて、身体には拓也の大きなジャージをかけられて二人きりで過ごす。
絵莉にとって、今の状況が十分なご褒美と言える。
「里塚先生と、もっと、おしゃべりしたいです」
皆でカラオケには行きたかったけど、推しと二人で過ごせるなら此方のほうが良いに決まっている。
折角ならジャージじゃなくて、ちゃんとした服を着てくればよかったとか、色々と考えてしまう。でも拓也のジャージの温かさを感じられるなら、結果的にはこれで良かったのかもしれない。
「先生は、その、奥様は怒らないですか?こういうの」
ふと、今の状況が不安になって肩から頭を離し、尋ねてみる。
自分にとってはご褒美でも、拓也にとっては…と思い至ったからだった。
【28にしては幼い感じにしてしまったので、25歳くらいの設定にします。社会人三年目なら可愛い方かなと。】
絵莉の身長は高い方だと思っていた。
胸もお尻もボリュームがあるほうだと思ったが、
実際に抱き上げてみたら意外に軽かった。
こんなに女の子の身体って軽かったっけ?と
ふと妻と付き合い始めた頃のことを思い出していた。
最近、妻はとは身体的接触はない、いわゆるレスである。
妻は年齢の割には若々しく、最近は妖艶さに
磨きがかかってきているので、外に男がいるのかと思う。
そういえば、下着も随分とエロいものを持っていたような気がする。
若い頃は自分が成長するのが楽しくて
トレーニングと数学の勉強にあけくれ、
教師になってからは生徒たちが成長していくのが楽しくて
頼まれれば休みの日も学校に出てきて、いい先生を演じていた。
妻はほったらかしだった。
今のような関係になって、自分の性格もあって
もう一度向き合うことはできなかった。
絵莉から妻が怒らないかときかれて
つい本音が漏れた。
「若い頃だったら、きっと嫉妬で怒鳴られたかもしれないね。
今は、どうだろう。自分が伊東先生みたいな若い先生と
こうやって呑んだ後、二人で話しているなんて、
想像もしないだろうし、知ったとしても嘘だと思うと思うよ。」
若い絵莉が、生徒の指導に一生懸命になっているのは
とても眩しいが、プライベートは大切にしてもらいたいと
心の底から思った。
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