新藤奈々子
「……………昨日は……から…仕方なかったのよ……
……それに…悪い話じゃ……あんたたちにも……………私だって……………」

奈々子先生の入っていった教室から、言葉の端々は聞こえてくるものの、防音のために聞きづらく全体的な意味は掴み取れません。
一層壁に耳を押しつけていると、背後から声が！

「……ひっ！
す、杉浦くん……………」

盗み聞きしているところを発見されてしまった……
生徒の範であるべき教師なのに、最悪の場面で遭遇し、頭を垂れながら前回の部屋に促されて入ります。

「覗きをしたのは謝るわ、ごめんなさい。
でも体育の、新藤奈々子先生。
知ってるでしょ？私と奈々子先生は昔から親しいの…というか、ここに入るのを見たの。
奈々子先生も『孕ませ会』に入れたの!?いつから？」

悲痛な面持ちで詰問する夕紀。
そんな中、防音のはずなのに響いてくる斉藤先生の声！
あの教室だけ防音がされていない？それともまた前回のようなモニター画像？それとももともとの声量？
激しく動揺し、奈々子の件で返事も聞かないうちに、淫らな空気が場を支配します。

斉藤圭
「ああああっ！
先生のためにこんなに硬くしてくれたのね？
嬉しい…気持ちいいわよ！
遠慮しないで沢山出して！」

たしか斉藤先生は、先日妊娠したと公表したばかり。
その斉藤先生が、そんな体調でもセックスを優先させていることに、体が震えだします。

「こんにちは、本多先生。こんなところでどうしたのですか？」とドアに耳を当てる夕紀の後ろから佳史が声をかける。

まさか、こんな風に佳史から声をかけられるのは想像していなかった夕紀は激しく動揺をし、佳史が話があるなら、いつもの部屋で聞かせてもらいますよ、と言われ促されるままに、いつもの部屋に入ってしまう。

部屋は綺麗にされているが、部屋の臭いは前回嗅いだのと同じ臭いであり、すぐとなりにある校舎における臭いとはまるで別世界であった。

「さて、本多先生。先生は孕ませ会を退会してるはずなのに、今日はどうしたのですか？」と夕紀の目をじっと見つめて語りかける。
どう答えようか迷う夕紀の耳に、向かいの部屋から圭の大きな喘ぎ声が聞こえ始める。まだ、圭が部屋に入ってから5分もたたないはずだが、圭は生チンポで感じまくってるような激しい声が夕紀の耳に遠慮なく入ってくる

「……本当に、どこに行ったのよ？」

誰も捕まらず、焦りばかり強くなっていく夕紀。
ふと、先日奈々子先生を見かけたあの場所なら…と思い、もう一度あの見通しの良い廊下から待ちます。
それからしばらくして、走るように早足でやってくる奈々子先生。
それをちょうど廊下側からは陰になるところから現れた斉藤先生。
どちらも綺麗な脚を出し、セクシーさを強調した服装でした。
二人は約束していたらしく落ち合うと一緒に旧校舎に向かいます。
話す内容は聞き取れず、時間が遅くなったのか、急いで旧校舎に向かいます。
それを追って走る夕紀。

辛うじて二人が旧校舎に入るときに追いつきました。
一度は閉まった入口ドアをそっと開いたとき、斉藤先生は先日私が杉浦くんと勝負した部屋の向かい側、奈々子先生は私の部屋の隣にそれぞれ入っていくところを確認。
奈々子の部屋を、音を立てないように、壁に貼りついて聞き耳を立てます。

「……奈々子、こんなことしてちゃいけないわよ。
何とか救わないと。」

聞き耳を立てつつも、下腹部に熱を感じていました……………

夕紀の思いとは裏腹にあっという間に放課後になってしまう。

夕紀が奈々子や圭を探していると、校舎の外を二人で歩く姿を見かける。
二人ともいつのまにか似合うようになったミニスカートを履き、メイクもバッチリ済ませ、旦那には見せない格好と表情をしながら当たり前のように旧校舎の方向に向かう。

夕紀の頭には昨日の新藤先生の人のよさが過り、このまま奈々子を旦那の誕生日よりも生ハメを求めてしまう人間に堕ちてしまうのはなんとかして止めないという気持ちが涌き出てくる。
このまま、奈々子の好きにさせてしまうと、これまでの自分の考えや信念が足元からなくなってしまうような錯覚がしたからだ。

奈々子と圭は揃って旧校舎に入ると、別々の部屋に入っていく。
その姿をなんとか捕らえるくらいまで追い付いた夕紀は・・

……奈々子、やっぱり『孕ませ会』なの？
変わってしまった奈々子に、斉藤先生達と同類の女の匂いを感じ、ゾッとする夕紀。
当然のように夫以外の男性との関係を語り、私にも勧めてくる……そのくせ夫である新藤先生には可愛らしく振る舞う、そんな器用な立ち回りができる子じゃなかった筈なのに。

「新藤先生、お疲れ様です。
それにしても、この間奈々子に聞かされるまで、入籍知りませんでしたよ。
おめでとうございます。」

新藤
「いや、すみません。
奈々子から既に聞いていたものだとばかり。
色々あって、式はあげない方がいいということに決めたので、申し訳ないです。」


店の前で社交辞令的な挨拶がかわされます。
奈々子の夫である新藤先生は、教職に就く以前から彼氏として面識があるものの、私とは主に担当する学年がずれているために、学校での接点はあまりありませんでした。
こんないい人を裏切るの？奈々子？
駅へ共に向かう途中も、快活な妻を演じる奈々子と何も知らない新藤先生が話していましたが、私の耳には入ってきません。
奈々子が変わってしまったショックもですが、私の周りの教師としても奥様としても尊敬すべき先輩達が、生徒とのセックスにのめり込んでいる……もしかしたら彼女達が普通で、堅物すぎる私が異常なのかも……そんな不要な疑念で心をぐらつかせる夕紀。

二人と同じ電車に乗り、先に着いた駅で降りる二人を窓越しに見つめながら物思いにふけます。
……私、あんな風に悟さんとラブラブオーラ出せてるかな？
最近、セックスが満足できてなくて、きつく当たってばかり…私よりも奈々子のほうが、立派に『新婚の奥様』をできてる気がする……………
意気消沈して家路につきます。


そして翌日。
もう一度杉浦くんなり斉藤先生なり奈々子なりにコンタクトを取る必要がある、と彼らと話せる状況を探します
けれども、顔は合わせるものの、周りを気にせず話せる機会がなかなか作れません。
焦る私に時間は味方してくれず、次第に放課後が近づいてきます……

「そうよ、夕紀。セックスも人生も楽しまなきゃ勿体ないの。そのためにはいろいろとうまくやらなきゃね」と夕紀を諭すように話す奈々子。

続けて、
「気持ちいいセックスのこと考えてたらまたシタくなってきちゃった。明日にでもまたしようかな。」とつぶやくようにうっとり話す奈々子の顔を見た夕紀は斉藤先生の顔をすぐに連想させるような牝の表情をしていた。

そして、奈々子にラインがくる。
「そろそろ時間みたいだね。旦那が店の前まできてくれたみたい。夕紀も駅まで一緒に行きましょ」といつもの奈々子の顔に戻ると、会計を済ませ旦那と合流する。

駅に向かう途中で旦那が
「明日は私の誕生日だけど、早く帰って来られそう？」と聞いてくると、申し訳なさそうに奈々子は
「ごめん。明日も少し遅くなりそうかな。でも誕生日プレゼントは準備してあるから大丈夫よ」とかわいらしい笑顔で見せながら謝ると旦那も嬉しそうに笑う。

そして、駅で別れた後、立ち去っていく二人の姿を見ながら、夕紀の頭には「夫を騙している妻はよくない」という嫌悪の感情ではなく、「夫ともうまくやりながら、人生を楽しんでいる妻」という羨望の感情の方が大きくなりはじめていた。

旦那『とも』セックスをしていると、訂正しようとする奈々子に絶句する夕紀。
まさに、旦那『だけでない』ことが問題なのに、そこの認識さえおかしくなっているのだろうか……
親友に何が起こってしまったのか、寒気で自分の肩を抱くしぐさをします。

絶句しながらも、快楽たっぷりのセックスのインパクトを語る奈々子に批判的な視線を向ける夕紀。
それに気づいた奈々子は、言い返してきます。

新藤奈々子
「……そう？違った？
なら夕紀、さっきまだ子作りしないから旦那さんとは中出しセックスしてないって言ったよね？
愛情たっぷりのセックスで、印象に残ったのって、いつ？
記念日的なのは無しね、記念日を覚えてるかじゃなくてセックス内容を覚えてるかの話だからさ。」

奈々子の意地の悪い質問に答えられない夕紀。
そこへ、さらにたたみかけてきます。

「それは、確かに同じセックスなら、気持ちいい方がいいのかもしれない……」

ようやく喉から絞り出せた言葉は、よりによって奈々子を追認擦るような言葉。
最近の欲求不満が、発言の後に『けど』とつけることさえさせませんでした……

「ちょっと、夕紀。勘違いしちゃってるようだけど、ちゃんと旦那ともセックスしてるわよ、旦那ともね。もちろん中出しだってしてもらっているわ」と心外そうに話している奈々子。

「でも、夕紀も中出しの快楽を知ってるようで嬉しいわ。私は最近までセックスにとって一番の刺激は愛情だと思ってたけど、快楽が一番の刺激だってわかったの。後になって振り替えってみたときに、印象に残るのって愛情たっぷりのセックスじゃなくて、快楽たっぷりのセックスだと思うの。夕紀だって、そうなんじゃないの？」と中出しの快楽を暗に認めた夕紀に仲間意識を感じた奈々子は更なるシンパシーを求める。

「限られた人生の中の限られた時間の中で、同じセックスをするならば、実のあるセックス、気持ちいいセックス、やりたいセックスをしたいと思うことは変じゃないと思うの。夕紀だって、本心はそう思ってるんでしょ？」とたたみかけるように夕紀の心の奥を覗こうとする奈々子

『相手が誰かは聞かない』、それは相手にも自分にも後ろ暗いものがある時の奈々子の言い回し。
つまり、奈々子も新藤先生以外と中出しセックスの経験があるということ。
しかも今初めてそんな話を持ち出すということは、最近になって中出しセックスをされたという意味に感じます。
とすると、やはり奈々子は、先日やはり旧校舎に向かったということ！
それも私と違って、不快な記憶としてはいない……私の顔色がみるみる血の気を失ってきます。

「……………奈々子、あなた！」

やっとのことで絞り出した言葉。
ですが奈々子は、気にも止めずに自分の話を続けます。
射精寸前の男性器の膨張がどれほどいいか、勢いよく膣癖に叩きつけられる精液の勢いのよさ。
一瞬、杉浦くんとのことを思い出してしまいますが、それを吹っ切るように奈々子に話しかけます。

「いい？
そういうことはパートナーとするべきだわ。
当たり前だけど、子供を作る行為よ？
さっきから、新藤先生らしくない人との行為を語っているように聞こえるわ、それもつい最近の経験みたい。
そういうことを他人とすれば、どうなるかわかるでしょう？
誰も幸せになれないわ、いくら射精の時の脈動が癖になるくらい良いとしても……………！」

お説教している相手の奈々子の顔がにやつき、そこで気づきます。
そう、私は、射精時の痙攣が好きだと自分から白状していたのでした。