2025/11/24 15:16:00
(vTOoqg.J)
妻の落ち込みようは少し可哀そうな程だった。多分、恋愛感情が先走っていたんだろう…。
妻は44歳に、私は47歳になっていた。
「気晴らしに水泳に行って見れば?」
「そうね。ちょっと運動するのも大事かもしれないわね」
「僕も行って良いか?二階席から見てたいし‥‥」
「ふふ、二階席ね…。娘の水泳教室の時は二人で見物していたわね…」
「実はね、ゆかりが水泳教室に通った初日、二階席から見ていたんだよ…」
「ええ、本当?」
「ゆかりは言わなかったけど、リラクゼーションって言うカリキュラムもあっただろう?」
「あったわ。首を抱えられて、腿を抱かれて、水の中で回されるの…」
「その後、ゆかりは直ぐに最後列に下がっただろ?そしたら若いトレーナーがゆかりに近づいて来ていたよね…」
「そうね。ちょっとしつこかったわ」
「しつこいって、何されたの?」
「水の中で、ビキニパンツを押し付けてくるの‥‥」
「やっぱりな、そんな動きだったよ」
「そしてね。コーチ、勃ってるのを押し付けるの。硬くなってコーチコチなんて詰まらないダジャレ言って…」
「そんなこと言ってたの…。そうか、そしたら、最初に誘われたコーチとデートするってどう?」
「…。恋愛はちょっと。しばらくいいわ」
「恋愛じゃないよ。どう見てもコーチはみんな20代だろ?やりたい盛りだから、相手してご覧?水泳選手の持久力って凄いらしいから…」
「また寝取られ?そうね。寝取られをしたかったんだものね…」
「無理ならいいよ」
「誘われたらね…。でも私おばさんだから、20歳も下の子にマジには誘われないわよ…」
「とりあえずトライだよ…。よし、じゃ、来週の水曜日ね。二人で行こうね」
「解ったわ…」
二階の見学席に座った。競技用水着に着替えた妻がプールサイドに出て来る。私を見つけて小さく手を振って来る。
クロールの練習中、妻にしつこく教えるコーチがいた。妻は私の方を向いて、手で小さく✖を示す。
お気に召さなかった様だ。
リラクゼーションの時のコーチも気に入らないみたいだ。
妻はまた教室の最後列に下がった。
隣のレーンでまた違うクラスのコーチがいて、そのうちの一人が妻の方へ近づいて来た。
身長が180cm以上ある長身の若い男だった。
水泳の選手だろう、肩幅が広くて、胸の筋肉が柔らかく盛り上がっている。
妻は何度か彼の方を見て、二言三言話をしている。
1分もかかっていない。話が終わったようで、コーチは妻から離れた。
妻は私の方を向いて胸の前で小さく○を作った。
『お、引っかかった』
妻のスクールが終わった。私は出口付近で妻を待っていた。
「あなた。待った?ごめんね」
「気に入ったコーチがいたの?」
「気に入ったと言うか、遅いお昼に付き合って欲しいって…。だから、あなた、先に帰っていて。あと20分ぐらいで彼が出てくるみたいだから…」
「おいおい、せっかく休みを取ったのに、先に帰らせるのか?」
「ごめんね。断るタイミングを逃したの。ちょっとイケメンだったし・・・」
「ま、それでお前の気が安らぐなら、ね。じゃ僕は先に帰ってるね。帰る時は電話して。迎えに来るから…」私は妻から離れて駐車場に向かった。
「ありがとう。ごめんね」妻の声が背中に聞こえた。
その声に被るように「すみません。待ちました?」という爽やかな声が聞こえた。私は振り返って、若いコーチをマジマジと見た。
スイミングスクールのそろいのジャージを着ている。背が高く、日焼けした爽やかな青年だった。妻と並ぶと美男美女って感じがする。
妻はちょっと私の方を見たけど、彼の手が妻の腰に回って、近くの喫茶店にエスコートする。
彼はぐいぐい妻との距離を詰めている。妻はすこしのけ反るように距離を取っていた。
期待できるかも‥‥。妻のスクールバックにはICレコーダーが忍ばせてある。後で回収すればいい。