2026/10/17 01:45:32
(66njYSU1)
私は38歳。夫は61歳。
二十三歳も年の離れた夫と結婚して、今年で五年になります。夫と出会ったころ、私はまだ別の独身男性と将来を考えていましたが、職場で知り合った夫との関係は、いつしか後戻りできなくなりました。当時の夫にも、まだ前の奥さんがいましたが、それでも私たちは、互いの気持ちを止めることができなかった。社内不倫という言葉が、私たちの関係にぴったり当てはまることくらい、もちろん分かっていた。そんな関係が五年も続いた末、私の妊娠が分かった。
夫は前妻と別れ、私と結婚した。
私は、ようやく自分の居場所を手に入れたのだと思った。子どもが生まれて、生活は一変した。慣れない育児に追われ、仕事に復帰してからは、毎日が慌ただしく過ぎていった。夫は優しかったけど、夫婦としての私たちは、少しずつ変わっていった。
夫は年齢のせいなのか、以前のように性に積極的ではなくなった。勃起が思うようにならないこともあるようだった。最初のうちは私も寂しかった。女として見られなくなったのではないかと、不安になる夜もあった。けれど、何度もそんな夜を過ごすうちに、私は期待することをやめ、夫婦生活がないことにも、いつしか慣れてしまいました。
そんな私の前に現れたのが、五十歳の上司、玲司だった。子供を保育所に預け私は別の会社で働き始めました。彼は、仕事のできる人だった。年齢の割に若々しく、言葉遣いには落ち着きがあり、相手の話を最後まで聞く人だった。名前も同じ漢字を使っていることも近くなる理由だったのかも。でも最初は、仕事の相談をするだけだった。
家庭のことも、育児のことも、夫との関係も、彼には不思議と話せた。彼は私の話を否定せず、時には冗談を交えながら、私の気持ちをほぐしてくれた。
「玲奈は、いつも頑張りすぎるんだよ」
そう言われたとき、私は思わず泣きそうになった。夫から長いあいだ言われていなかった言葉だったからだ。もちろん、夫が私を大切にしていないわけではない。それは分かっている。でも、妻として、母親としてではなく、ひとりの女として気にかけてもらえることが、こんなにも心に響くとは思わなかった。
彼と話す時間が楽しみになった。
仕事の連絡を待つようになり、彼が出勤してくると、自然に目で追うようになり、気づけば私は、玲司の声の調子ひとつで、その日の気分が変わるようになっていた。
そして、三か月前。私たちの関係は、とうとう一線を越えてしまいました。
その日は、クライアントとの会合が終わったあと、玲司と二人で飲みに行き反省会。仕事の話から始まった会話は、いつの間にか、互いの本音を探るようなものに変わっていた。お酒が進むにつれ、彼との距離が近くなっていることに気づいていました。
私は黒いノースリーブを着ていた。薄い生地が身体の動きに沿う、いつもより少しだけ大胆な服だった。特別な意図があったわけではない。そう自分に言い聞かせながらも、彼の視線を意識していたことは否定できない。
「今日、いつもと雰囲気が違うね」
玲司はそう言って、私を見つめてきたので、私は笑ってごまかした。でも、その視線から逃げることはできなかった。
夫との生活では、いつからか忘れてしまっていた感覚だった。
(女として見られている。)
そう思った瞬間、胸の奥に、長いあいだ眠っていた何かが目を覚まし、熱を帯び始めたように感じた。
帰る時間になっても、私たちは席を立たなかった。彼が私の手に触れたとき、私は振りほどかなかった。
「本当に、これでいいの?」
彼の問いに、私はすぐには答えられなかった。
子どもの寝顔も、保育園に迎えに行ってもらった夫の顔も頭のどこかにはあった。それでも、目の前の彼から目をそらせなかった。
「……今だけは、何も考えたくない」
私がそう答えると、彼は私の手を握り直した。
その夜、私は自分がどれほど彼を求めていたのかを知った。
彼の腕の中にいるとき、私は妻でも母親でもなかった。誰かの期待に応える必要も、家庭を守る責任を考える必要もなかった。
彼は私を、ひとりの女として見つめていた。
そして私は、自分から彼の胸に身を寄せた。
彼に抱き寄せられ、額を寄せ合ったとき、私はもう、以前の私には戻れないのだと感じた。
その夜を境に、私たちの関係は変わった。玲司は私を手放したくないと言った。私は、その言葉を聞きたかったのだと思う。誰かに必要とされたい。求められたい。自分がまだ女であることを確かめたい。
そんな気持ちが、私の中に積もっていた。
それから私たちは、二週間に一度の密会を重ねるようになった。クライアントとの定期会合が終わると、二人で残って「対策会議」をする。それが、いつしか私たちだけに通じる合図になった。
会議室で交わす視線。周囲に人がいるときの、何事もないような会話。仕事のメールに隠した、短い約束。そして、二人きりになれる場所へ向かう時間。
ラブホテルの部屋に入ると、私は決まって、張り詰めていた気持ちがほどけていくのを感じた。そして玲司は私の話を聞き、私の気持ちを確かめ、時には私が自分でも気づいていなかった本音を言葉にした。
そして、私の小さな胸を愛撫し、私は玲司の大きくかたい部分を愛撫した。
帰るころには、いつも現実に引き戻された。私は何事もなかったように母親に戻った。
けれど、心の中には、玲司と過ごした時間が残り、下腹部には彼の愛情の爪痕が残っていた。
夫の隣で眠る夜でさえ、彼の声を思い出す。夫に罪悪感がないわけではない。むしろ、私のために前の家庭を終わらせた人。