2026/05/17 05:03:18
(zrvuJ4li)
「それでね、その時シオンが怒っちゃったの。ふふっ、流石にあの時はみんなで謝ったわ。」
あれからほとんど毎日、アルの病床に顔を見せて、少しの時間だとしても会話をするようにしていた。
基本的にはアルは黙っていて、リズベットがどうでも良いような話をするだけ。
「リズベット様、またアルの所へ…?奴め、リズベット様のお話を無視するどころか、自分のことは名前しか話さないなど…っ。」
「シオン、やめて。私がしたくてしてるの。誰とも知らない屋敷にずっといると、心も休まらないじゃない。少しでも私のことをわかって欲しいから、一方的に私が話すのよ。」
相手が解放戦線の関係者かもしれないことから、シオンは良い顔しなかったが、リズベットに逆らうことはなく、その時間は部屋の外で待機するだけだった。
シオンは治療の合間を見て、尋問のようなことをしようとしたが、察したリズベットに釘を刺されてしまった。
「シオン、彼を問いただすようなことはやめてね。怖がって逃げてしまうかもしれないわ。」
「し、しかし、素性ははっきりさせた方が…。危険人物だったらどうするのです…!」
「彼の目を見ればわかるわ。きっと、身体だけじゃなく心にも、いろんな傷を負ってきたのよ。もし仮に獣人解放戦線の者だったとしても、ここでやり直せばいいの。貴女が人生をやり直したように、でしょ?」
そう言われてしまったら、シオンは何も言えなかった。…後に、なあなあにしてしまったことを後悔することになるとは思いもしなかった。
リズベットとシオンが出会ったのは、リズベットが他領土の外遊中の出来事だった。
リズベットの強い希望により、スラム街を視察することになった。スラム街は獣人差別が色濃く出る地域だ。ここで、世の中の現実を知るつもりだった。
「…酷いわね、衛生面も、倫理観も…。人間が神様になったつもりかしら…。」
変装したリズベット含む要人たちが、護衛に囲まれながら進む。スラム街は獣人を食い物にする商売が多く、娼館も立ち並ぶ。女の獣人たちは見目麗しいうえ、基礎体温も高い。要は抱くには最適な相手だ。
底辺層に位置する人間たちがより下を見るために、獣人をより厳しく扱っている、反吐が出るような光景だった。
「ギャァァアアーーーーッ!!!!」
男の声だが、耳をつんざくような甲高い悲鳴が突然響いた。
護衛の静止も振り切り、悲鳴が聞こえた娼館の中に入ると、玄関から見える長い廊下の先で、男がうずくまって倒れていた。股間を抑えているが、真っ赤な血が木目を汚している。
その男を見下ろすように立つ、銀髪の獣人。綺麗な顔立ちをしているが、ゾッとするくらい冷たい瞳で男を見下ろしていた。
口元に真っ赤な血がついていて、男の股間を噛んだのだと一目で分かった。
客に怪我をさせて、この獣人がタダで済むわけがない。それを承知で、反抗したのだ。
…ああ、もう死んでしまいたいんだ。
そう悟った瞬間、勝手に口が「この獣人は私が買い取りますっ!慰謝料や身請け金は言い値で払います。私はクリスティア家のリズベットです、ここは私の顔を立てていただきますわ!」
変装をやめ、身分を明かし、無理やりに場を収めることに成功した。男も不能になるほどの怪我ではなく、スラム街の出来事でもあり、お金で解決できることでもあったのが幸いだった。
あの時、最期に人間に反抗して死のうとしていたシオンは、今は人生をやり直している。
アルもきっとそうなってくれる、そう信じていた。
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「リズベット様、その…、ダーウェル様がお見えになられたのですが…。」
私はその言葉を聞いて、露骨に表情を曇らせてしまった。不機嫌になったように見えたのか、リス獣人のレイはオロオロ慌て始めた。その可愛らしい様子に少しだけ心を癒されつつ、それでも億劫でため息が出るのを止められなかった。
「ダーウェル様、ごきげんよう。御用がおありなら、呼びつけてくだされば良いのに。大したもてなしもできず、恥ずかしいですわ。」
(今月でもう3度め…。前回は何やら宝石を持ってきたけれど…、今回は花束か…。そろそろ諦めてくれないかしら…。)
リズベットが産まれた時に母は亡くなり、尊敬していた父は7年前、ちょうどリズベットが17歳の頃に風土病で倒れてしまった。クリスティア家は長く続く血筋を大切にする家柄。若くても女であっても、リズベットが当主となるしかなかった。
美しく、童顔な上、人形のような細いくびれと豊満な胸元はまさに男の求める理想の体型。しかし、求婚は少ない。リズベットの獣人保護思想は当然噂になっていて、要は避けられていた。
まだまだ結婚する気はないリズベットにとって好都合であったが、ここ最近、憲兵団の指揮官であるダーウェルから熱烈なアプローチをかけられており、はっきり言って困っていた。
憲兵団の指揮官であれば、当然家柄もよく、かつ、権力もある。
無碍にはできず、その気がないことを悟ってもらうしかない。
「まあ、こんなに見事な真紅の薔薇、見たことがありませんわ。」
薔薇の花言葉は「愛」。いつものアプローチであることを悟る。突き出された花束には手を伸ばさず、代わりに指先で花弁に触れる。
「こんなに素敵な薔薇、私だけがいただいてしまうのは少々気が引けますわ。私だけが独り占めしてしまったら、皆に叱られてしまいそうです。ダーウェル様がよろしければ、玄関先に飾ってもよろしいでしょうか?花瓶に入れて、皆で楽しみたいのです。」
(うぅ、ちょっと無理があるかしら…?でも、受け取るのだから顔は潰していない…わよね…?)
こんなやりとりを何度繰り返せば良いのだろう。引き攣った笑顔を見せるダーウェル様の顔をあえて見ず、薔薇に見惚れたフリをする。
ああ、早く帰ってくれないかしら。
シオンとお茶が飲みたいわ…。
【お待たせしてしまった上、ご質問を見逃していてすみません。
リズベットは24歳で、17歳の頃に父を亡くし、それから当主を始めました。父の頃から獣人に寛容な政治をしてましたが、リズベットの代になって加速。18の頃、シオンと出会い、以後獣人の保護にも手をつけ始めた…。って感じです。
シオンのことも書ければ良いと思って無理やり入れてみましたが、補足的なプロフィールもつけておきます。
シオン(23)
ハスキー族の獣人で、ウルフカットの銀髪。170センチの高身長で三白眼の瞳を持つイケメン系美人。胸はDカップほどで、しっかり女性らしい体型。幼い頃から娼館で働かされていたので、身体の性感帯は開発済み。アナルや乳首でも意志に反して簡単にイってしまう。リズベットには隠しているが、今でも人間を嫌悪している(リズベットは大好き)。】