2025/02/16 22:00:49
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「言葉が過ぎるぞ、ジギタリス。個々の人間が愚かなわけではない。中にはこのリルベルのように聡明な者もいる。救いようもなく愚かで自分勝手な者の比率が、魔族と比べて多いのも事実だろうが。」
怒りを込めた声で返した後、リルベルから石を受け取るヨハンセン。
「ほう、これは魔龍の涙か。入手先はさしずめリルベルの養親と言ったところかな?リルベルはもうこんなものが無くとも魔法は使えるだろうが、お守り代わりか。」
石をサマエルに渡してから、
「サマエル、ジギタリス。良い機会だから言っておく。私はゆくゆくこのリルベルと婚を結ぶ。今からは実の姉と思って接しろ、いいな。少しでも軽んじる態度を見せたら、その時は私が許さないからな。」
「わかりました、お兄様。」
「(嫌々という様子で)畏まりました。」
「それでお兄様結婚はいつ頃をお考えで。」
「叔父上がこのような挙に出なければ、リルベルの復讐が成った後すぐにでもと思っていたが、先ずは父上と母上を救い出さねば。」
「父上と母上、命の心配はありませんが、窮屈な思いをしていると思うと不憫で。一刻も早く救い出していただけないでしょうか。」
「布石はもう打ってある。人間国の自称勇者が、手前の山の祠にそろそろ着くころだ。本来ならそれから向こうは、警備も厳重なのだが、その自称勇者に叔父上を討たせるため警備を緩くさせてある。」
「人間とは本当に愚かな者たちです事。私達みたいに一瞬で移動することもできないなんて。」
「サマエル、そんなこと言うものでもない。そのおかげでこちらは十分な対策ができるのだからな(笑)」
「でもいくら叔父上とはいえ、人間ごときに易々と討たれるとは思えませんが。」
「人間だけではな(笑)一緒にハイルとオートマタがいる。あとこれも私が魔族にしたルチアという者もな。父上と比べ人望が皆無な叔父上の事、いくら魔王の座を掠め取ったとはいえ、本気でついていっているものなど、最初からの腹心だけだろう。叔父上とその取り巻きさえ討てれば、その後はまた父上に魔王の座に復帰して貰って。」
「でもその勇者とやらが、人間国に戻って英雄視されてしまっては…」
「あいつが英雄視されることなぞ絶対にない。そのための布石も打ってあるからな、今頃人間国では自称勇者の悪い話でもちきりだろう。サマエル、ジギタリス体力が戻ったら人間国の魔の子村に行ってみるがいい。自称勇者が自らやらかした行為で、村は大変なことになっているから。」
「これは長話が過ぎた。リルベル私達も飯にしようか。」
ヨハンセンがいくつか呪文を唱えると、テーブルの上に
サラダボール一杯のサラダ、湯気の立った鶏の丸焼き、これも湯気の立ったスープ、山盛りのパン、果実酒の瓶、グラス等々が出現する。
「サマエル、ジギタリス悪いな。明日にはかろうじて魔族の姿に戻せるだろうから、その時にご馳走してやるからな。」