--- 「被害届けも出したし、ちょっと落ち着いたよ… じゃあ私、これから部活あるから行くね。…晶なら大丈夫だと思う。才能あるし。でも無理はしないでね?」 「ありがとう。何かあったら連絡して。すぐ行くから…」 連日続く猛暑日の午後、中学時代の旧友に付き添い、学校の近くまで送った後に別れる。 電車内で盗撮被害に合っていたところを偶然見かけ、動揺する彼女に付き添っていた。 乗客が不審な男に気づき問い詰めたところ、犯行を認め、下車後に駅員へ引き渡した形だった。 被害者である彼女と男、警官の三人での事情聴取が行われ、男のスマホを確認したところ彼女のスカート内が写る動画が発見された。 彼女は酷く動揺し、しばらく動けずにいたのだ。 本当に卑劣な行為である。 彼女から労いの言葉をもらうと再び乗車した… 私は高校を中退しフリーランスで働いている。 ライターや動画編集といった仕事だ。 高校へ通う必要を感じなかった私は周囲の反対を押し切って辞めた。 久しぶりに電車へ乗ったところ同学年と思われる制服姿の女子が何人も目に入り、中退という事実を思い出した。 もし続けていれば自分もあの服装をし、この時間帯に毎日乗っていたのだろう。 もし続けていれば………私も盗撮を… ・・・ 「…昨日結衣が言ってたドラマ、見たけど確かに面白かった!」 「でしょ?だから言ったんだって。あの俳優が出…~~」 確かに、学生は目につくし、どこか男性が下半身を見ている気がする。 あれだけ足を露わにしていれば気になるだろうし、何よりスカートの中が気になってしまうのかもしれない。 スラックスやジーンズを穿いている女性よりも、彼女達への距離が近く感じる… 実際私とも距離を感じる。 恐らくこの車内にもあの男と同類の者がいるのかもしれない。 『…まもなく、~~駅に到着します…お降りの際は…』 --- ガチャ… 「? 随分と早いな。」 「うん。ちょっと予定が変わってさ。」 「そうか。 仕事は順調らしいな。…晶は晶のままでいい。色んな生き方があるから。」 「うん。ありがとう…」 帰宅すると父と居合わせ、友達と同じ様に応援の言葉をくれた。 皆私の事を気にかけてくれているのだ。 ・・・ キィッ… 「……」 クローゼットの中に掛かるまだ記憶に新しい紺色の衣服… 中退した後も敢えて捨てずに残していた。 何も未練はなかったけれど、なんとなく捨てる事が出来なかったのだ。 「……」 --- 7:20… 「じゃあ先に出るから。今日は少し遅くなるかもしれん。」 「オッケー。いってらっしゃい…」 ガチャ… タッタッ… ガチャ… キィッ… 「……」 スッ… 翌朝、仕事へ向かう父を見送ると、私はクローゼットに仕舞われた制服を手に取っていた。 スッ… スッ… キュッ!… ブラウスの袖に腕を通し、気づけばスカートへ足を通していた。 「……」 ガチャ… --- 『…まもなく、2番線に、列車が参ります…危ないですので…』 キッ…シューッ… タッ、タッ… …私はまた、「学生」になった… どうしてこんな事をしているのか、自分でもわからない。 何故… …嫉妬…していたのだろう…