某都市の主要部に立つビジネスホテル。
連日人が押し寄せ、ビジネス、観光、旅行といった多様な目的で利用されている。
いくつも並び立つそれらは同業他社という枠の中で凌ぎ合いながら、利用客の獲得に日々勤しんでいる。
...
カタカタッ…カタッ……カタカタッ…
それらの一つにあるフロントの一室…
他と比べ客足が落ち着いておりやや閑散とした様子。
地元では名の知れた馴染みあるホテルではあるが、遠方から来た者にとってはやはりネームバリューに劣り、比較的客足が少ない。
それ故かルーティンの様にキーボードを軽快にタッチし続ける女性従業員。
どこか無表情で、冷めた様子で業務を熟している。
カチャ…
「…おはよう…」
「おはようございます。」
フロント内の従業員用ドアから静かに入ってきた男から挨拶をされると、パソコン画面を見ながら即返す女性従業員。
ぶっきらぼうで機械的な口調のそれは温かみに欠けるも、我の強さといった個性を感じさせる。
男は女の上司にあたる同僚である貴方。
44歳、既婚、勤続20年。
新卒からこれまでこのホテルに勤め続け、現在は役職に就き現場兼マネージメントを担当している。
惰性でやってきた貴方も管理側に回った事で客観的に現場を見れ、何気に面白味を感じながら働く様になっていた。
カタカタッ…
遅番故、女に遅れる形でフロントに並び立ち、共にキーボードをタップし始める貴方…
アンビエントなBGMがひっそりと鳴り響きながら、客足のないフロントで二人事務作業を続ける。
横でタップする同僚は自身と同じく新卒で入社し、現在3年目の女。
接客業のトレードマークである笑顔といった表情とは全くもって異なり、不愛想と言って良いほど機械的なものを醸し出す。
とは言え仕事は堅実。接客態度、言葉遣い、同僚への振る舞いに否はなく、寧ろ評判が良い。
就職活動で何故か大手ホテルを受けず、ここを選んだ。
顔に張り付いた無表情を除けば、誰よりも熱い志望動機をもっているのだろうか。
周りに流されず、自身の接客…というものを確立しているかの様に。顔と同じく、鋼鉄の様な芯を感じさせる…
「…ふうっ…」
貴方はひと段落したのか軽く息を吐き、チラッと女の方を見る。
その視線はスッと下の方へ移り、ヒールから成る足元から上へと、再び移っていく。
適度な高さのある黒ヒールから伸びる脚…
やや張りのある脹脛をした伸びやかなそれを、極薄の黒生地が包む… 透過率の高いそれは堅物とはミスマッチな香りを醸し出す。
…
「奥井…702の客の事なんだが、どうだ?進展あったか?…」
「大丈夫ですよ。防音出来ているんでクレームが来ても言い掛かりです。」
「良かった。神経質な客は困るな。」
「そうですね。」
間髪入れずに返される奥井の言葉。
頭の回転が速く、既に貴方の思考を読み取っているかの様。
知的、対応の早さ、状況分析…まるでこのホテルをテリトリー化している様な仕事ぶり…
この世代は良くも悪くも優秀なのかもしれない。
「……」
…スッ…
貴方は奥井を改めて感心しながら、徐に二足のヒール間へそっと自身の革靴を運ぶ…
?
どこか不自然な行動。
額には何故か汗が伝り始めているが…
革靴の爪先が光っている様に見えるのは気のせいだろうか。
…スッ…タッタッ…
どこか落ち着かない様子で後ろの引き出しや資料を触りだす貴方…
そして奥井の足元を横目で見て、再び背後からパソコンを覗き込む様に革靴を運ぶ…
どこか違和感のある行動を反復する貴方と、微動だにしないパソコンを見続ける奥井。
このフロントではこんな光景も、ルーティンとなっていた。
ジメジメとした湿気を纏いながら冷たい空気が佇むこの空間に、貴方はこれまでにない心地良さを感じていたのだ。
この空間が、この時間が、この同僚女性とのラップタイムが…ビタミンになっていた。
スッ…
そして再び、貴方は革靴を運んだ。
「撮影業務の進捗は如何ですか?確認の方は終了されたでしょうか?」
【大卒 25歳 茶髪ボブ 160cm 80 62 82】
2026/07/05 13:09:45
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