2012/06/04 08:35:59
(n6wHMeJD)
第6話 ~そして事件は起こった~
翌日、俺と理絵は学校に行った。当たり前な話だが、学校で付き合ってる事は隠すことにした。
理由はお察しの通り、精神年齢が低い一部のバカ男子どもが無駄に囃したててからかわれるのが
うっとしいからだ。
4時間目が終わって給食の時間も、いつも通り終わる。この調子なら事件の事も風化されて、理絵の
負担もごく小さいものになるだろうと思ってた・・・。
給食の時間も終わって、昼休みが始まった頃・・・。理絵と恵美が担任から呼び出しを受けたため、
教室を離れた。その後少しして俺も生活指導の先生から呼び出されてしまい、先生の後について行く。
すると校長室に通されて、入室すると【校長・学年主任・担任・理絵・恵美・刑事2人】がいた。
すぐに刑事の1人が俺に説明してくれて、どうやら犯人が『新ジャガがナイフを持って暴れてたから
取り押さえようとした。揉み合っているうちに気を失ってしまい、気がついたら下半身を露出されて
地面に押さえつけられていた』と、繰り返し供述しているらしいのだ。刑事も犯人が口から出まかせ
だってのは分かってるが、今回は裏付けのために、当事者3名から事件の詳細を聞きたいとの事だ。
聴取事態は5~10分程度で終わったので俺達3人はそのまま教室に帰された。俺は先にトイレに
寄ってから、理絵と恵美は直接教室に帰っていった。
理絵たちが教室に入って10分くらいだろうか? 遅れて俺も教室に入ると、そこにはいつもと違う
光景が繰り広げられてた。
自席で体を震わせて、顔を真っ赤にしながら泣いている理絵。
理絵の前にヘラヘラ笑いながら理絵に何かを話しかけてる、隣りのクラスの渡田という男子。
理絵の両隣りで渡田を睨みつけながら、対峙している恵美と、同級生の静香。
その異常な状況に少し混乱している他の生徒多数。
恵美が俺に気付くとすぐに駆け寄ってきて、目に涙を溜めながら、今起こっている状況を説明して
くれた。
①渡田が刑事たちが校長室に入っていくのを目撃した事。
②扉に耳を当てると、理絵たちの名前と、金曜の傷害事件というのが聞こえた事。
③渡田は理絵たちがレイプされたと勘違いしている事。
④本人に直接聞こうと、ウチのクラスにやってきた事。
⑤レイプされたのか?何発ヤられたのか?気持ちよかったんだろ?もうキズモノだな?
と、まくしたてている事。
⑥最初は2人で違うと反論したが、そのうち理絵が我慢できず泣き出してしまった事。
⑦見るに見かねた静香が、恵美たちを助けてくれている事。
話を聞き終えた時、俺は完全にブチ切れてしまい、渡田に怒鳴りながら近づくと、首元を右手で掴み
近くの壁に向かって投げ飛ばした。
ドゴーン! ドガッ・・・。
渡田『テメェ!何しやがる!!』
とび蹴りで反撃してきたのが、蹴りをかわしながら再び渡田の首元を掴み、再び壁に向かって投げ飛
ばした。
ドコーン! ドカッ・・・。
渡田『テメェ、ケンカ売ってんのか!!?』
俺『おい、調子こくのもいい加減にしろ!!』
再び向かってきたので、前蹴りを正面に食らわせ、ノド輪をするように首を掴み、そのまま壁に叩き
つけながら持ち上げて宙に浮かすと、両手で俺の右手を掴み、ノド輪を外そうともがき出した。
すると、すぐに騒ぎをかけつけた隣クラスの担任が俺を止めに入ってきた。
先生『おい、新ジャガやめろ!!おい、誰か他の先生を呼んで来い!!』
止めに入った先生を横に押しのけると、再び渡田を持ち上げて宙に浮かす。
やがて他の先生5人が駆けつけて、4人がかりで引き離された。でも、そんなんで納得できる状況
じゃない。押さえつけようとした4人を振り切って再び渡田の元へ向かう。
今度は同級生たちも混じり、10人くらいで押さえつけられてしまう。振り払おうと動いたのだが、
10人相手にはかなわず、その体勢のまま校長室隣りにある会議室まで連れて行かれた。
会議室には、俺・担任・生活指導・体育教師・さっきまで校長室にいた校長と刑事がいる。生活指導
の先生が理由も聞かずに俺の事を説教し始めたため、たまらず俺もヒートアップ。生活指導と俺の
意見が対立して押し問答が延々と繰り返されていたため、たまらず体育教師が間に入る。
体育教師『・・・・・。事情は分かったが、あんなに暴れる事はないんじゃないか?』
俺『じゃあ、黙って見てろて言うんですか?まだショックだって残ってるはずなのに、頑張っ
て学校に来て、あんな事言われたらさ、傷が癒えるどころか更に傷つくだけなんじゃないの?』
体育教師『そうだけど、やり方ってもんがあるんじゃない?』
俺『中途半端に先生が止めたところで、騒ぎが終わったら、アイツはまたやるよ?』
体育教師『言いたいことは分かるよ。だけど、アレはやりすぎだって言いたいんだよ』
俺『松井さんと恵美さんが受けた傷に比べれば、やりすぎなんて言う方がおかしいでしょ?』
その後、黙って話を聞いていた刑事が、見るに見かねて俺に諭すように話しかけてきた。俺のやった
事は厳密に言えば過剰防衛になって、逮捕になってしまう事。武術を習っている人の乱闘は、凶器を
持っていると同等の扱いをされる事。そうなってしまうと・・・良い事をしたはずなのに気がつくと
俺1人だけが全部ワルモノにされてしまう事など・・・。
刑事の説明してくれた事はちゃんと筋を通していたのもあり、俺は反論できなくなっていた。騒ぎを
起こしてしまった事についてを先生たちに謝罪して、この件を終わらせましょうという刑事の提案に
より、俺は渋々ながらも先生たちに謝罪した。
その後、6時間目の授業は、校長・刑事・先生たちが協議し、今後渡田のような誤解をしている生徒
をなくすため、体育館で臨時全校集会というカタチで事件の概要を説明してくれた。
その際、例の刑事たちも説明に加わり、今回逮捕された被疑者が銃刀法違反・公然わいせつ・俺に対
する傷害の現行犯で逮捕されたこと。なので、被害を受けた女子生徒が直接身体に触れられるような
犯罪事案ではなかったこと。性犯罪の被害者対応は、捜査のプロである警察も慎重に行っていること
。しかしそれでもフラッシュバックというショック状態になる可能性もあるために、対応がとても難
しいことなど・・・。中学生相手に分かりやすく説明してくれた。
その後帰宅してもイライラは全然収まっていなかった。最愛の理絵をムダに傷つけた渡田をどうやっ
ても許すことはできず、モノにも当たったりしていたため、妹は夕食後早々に自室にこもってしまっ
た。よっぽど怖い顔をしてたんだろうな・・・。
そんな時、自宅の電話が鳴った・・・。
俺『もしもし?』
理絵『新ジャガくん?あたし。』
俺『!!! ・・・・・。 今日はごめん・・・』
理絵『ううん。新ジャガくんは悪くないよ・・・』
俺『理絵を助けるって言いながら・・・迷惑かけちゃった・・・』
理絵『あの後教室で、その話に誰も触れないようにしてくれたんだ・・・』
俺そうなの?』
理絵『新ジャガくんが先生たちに連れて行かれたでしょ?その後にクラスのみんなが”助けてあげら
たちれなくてゴメン”って謝ってきたんだよ。』
俺『そっか・・・・・。そんな事があったんだ・・・。』
理絵『みんな、新ジャガくんの事を悪く言っていないよ。ビックリはしてたけど。』
俺『・・・・・。あれから渡田、なんか言ってきた?』
理絵『さっき、渡田のお父さんと渡田が謝りに来た。』
俺『えっ?』
理絵『渡田くん、頬が腫れてた(笑)。渡田君、学校から家にすぐ連絡があったみたいで、たまたま
おうちにいたお父さんが事を知って、渡田くんを殴ったらしいよ(笑)』
俺『まじか・・・(笑)』
理絵『うちのパパも、渡田君のお父さんから話を聞いたら、ものすごく怖い顔になってさー、渡田
くん、ものすごく怯えてた(笑)』
俺『(笑)』
理絵『パパからの伝言なんだけど、新ジャガくん・・・キミは悪くないから、気にするな だって。』
俺『そっかー。んじゃ、おじさんにありがとうって伝えといて。』
理絵『うん。』
俺『今日、電話くれてありがとう。』
理絵『ううん、それじゃまた明日ねー』
俺『うん、また明日ー』
理絵の声が想像していたよりも明るい口調だったので少々とまどったが、それほど影響がないように
感じた。おかげでイライラがだいぶマシになった。あ~、やっぱ理絵は天使だなぁ・・・。
翌日以降も理絵は何事もなかったかのように登校した。俺はというと翌日の朝のホームルームの時に
クラスのみんなの前で騒ぎを起こした事を謝罪した。恵美や静香がいろいろとフォローをしてくれた
おかげか、みんなが再び俺の事を受け入れてくれたため、この件はこれで一区切りとなった・・・。
それ以降は、みんなも通常の落ち着きを取り戻したため、何事もなく1学期を終えようとしていたの
であった。
第6話 ~そして事件は起こった~ 完