帰宅して郵便受けを確認すると、一枚の「お知らせ」が入っていた。
マンション入居者を対象とした、ガス設備点検についての案内でした。
私の住んでいるマンションでは、四年に一度、業者による室内のガス器具点検が行われることになっている。
(もう四年も経つのか……。四年に一回とはいえ、めんどくさいなぁ)
私は「お知らせ」に記載されていた電話番号へ連絡し、点検の日程を調整した。
この日程調整も面倒なのだが、それ以上に厄介なのが、業者を自宅へ入れなければならないことだった。
普段からきれいにしているわけではない。
点検日が決まると、今度は部屋の掃除を始めなければならない。
しかも、点検のためにわざわざ有給休暇を取って、自宅で立ち会う必要まである。
(ああ、面倒くさい)
キッチンを掃除しながら、私はふと思い立って、四年前の日記帳を引っ張り出した。
ページをめくっていく。
(四年前に来た人と、今回も同じ人かぁ。で、四年前は・・・と)
私は、水道業者や洗濯機、エアコン、テレビなどの設置業者が来るたびに、ちょっとした悪戯を仕掛けていた。
下着をわざと干したままにしておいたり、服装を少し際どくして応対したり。
そんな過去の記録を読み返しているうちに、ふと疑問が湧いた。
(ガス屋さんには、何をしたんだっけ?)
ところが、いくらページをめくっても、ガス業者について書かれた記録が見つからない。
考えてみれば当然だった。
ガスコンロや警報器、外回りのガス器具などを点検する業者さんは、作業そのものが非常に短い。
僅か十分ほどで点検を終えれば、すぐ次の予約先へ向かってしまう。
これまで、何か仕掛けようと考える前に帰られてしまっていたのだ。
(何か、短時間でできる方法はないかな)
掃除を続けながら、私はあれこれ考え始めた。
けれど、なかなかいい案が浮かばない。
そんな時でした。
キッチンの掃除を終え、リビングへ移動した私は、液晶テレビの画面に目を留めた。
普段テレビを見ている時には、まったく気にならない。
ところが電源を切った黒い画面には、驚くほど埃が付着していた。
(うわぁぁぁ、なまら汚ねべ!)
思わず北海道の言葉が口から出そうになる。
私はモップを手に取り、画面を軽く拭いた。
そして、モップに付着した埃を眺めてから、何気なくテレビ画面へ視線を戻した。
一年ぶりに埃を払った黒い液晶画面には、室内の様子がぼんやりと反射している。
その中に、自分の姿が映っていた。
(……!)
私はテレビから少し離れた。映っている。
もう一歩、後ろへ下がる。それでも映っている。
さらに一歩。奥の部屋へ移動してみても、黒い画面には私の姿が朧気に残っていた。
(これだ!)
頭の中に何か降りてきた。ひとつのアイデアが、突然形になったのです。
こうなると、もう居ても立ってもいられない。
私はテレビ台の上に置かれた本体を慎重に動かし、画面の角度を少しずつ調整していった。
キッチンへ戻る。画面を確認する。
また奥の部屋へ行く。もう一度テレビを見る。
何度も何度も行き来を繰り返し、ようやく、キッチンから私がいつも着替えるハンガーラックの前まで映り込む角度を見つけた。
いったい何往復したのだろう。
気がつけば、掃除そっちのけでテレビの角度調整に夢中になっていた。
(でも・・ちょっと暗いかな? これじゃ、よく分からないかも)
そこで私は、試しに天井のシーリングライトを点けてみた。
すると、先ほどまでよりも画面に映る室内がはっきりした。
(よし! これでいこう!!)
頭の中で、当日の場面が組み上がっていく。
どのタイミングで奥の部屋へ行くか。
どこまで扉を開けておくか。
相手からどう見えるのか。
私は掃除をしながら、何度もその場面を想像した。
そして点検当日。
私は、あらかじめ考えておいたシナリオを実行することにした。
――点検当日――
「ごめんなさい。大分待ちました?」
半日の有給休暇を申請し、私は自宅へ急いで戻ってきた。
というのは大嘘だった。
本当は、点検時刻ぎりぎりになるよう、わざと時間を調整して帰ってきたのだ。
「大丈夫ですよ。先に外のガス器具を点検してましたから(笑)」
私が到着した時には、ガス屋さんは外の給湯器の点検を済ませて待ってくれていた。
「こっちで~す」
私は玄関の鍵を開け、彼を室内へ案内する。
ところが彼は、このマンションの他の部屋も担当しているのだろう。
部屋の構造をよく分かっているらしく、私が案内するまでもなく、さっさとキッチンのコンロ台へ向かっていった。
「じゃあ、ここですね」
工具を広げる彼を横目に、私はリビングを抜け、奥の部屋へ小走りに向かった。
「すぐ着替えるんで、ちょっと待っててくださいね」
「そげんに急がんでも、よかですよ(笑)」
軽い調子の返事が返ってくる。
私は奥の部屋へ入りながら、何気ない顔を装った。
もちろん、すべて計算していた。
キッチンからリビング、そして奥の部屋まで。襖もドアも、すべて開けてある。
私と彼の間を遮る壁も、衝立もない。
そして・・・リビングに置いたテレビの画面が、こちらを向いている。
私はさりげなく振り返り、黒い画面を確認した。
そこには、ぼんやりと私のスーツ姿が映っていた。
(大丈夫よね)
私はもう一度、画面を見た。
(たぶん・・・見えてるよね?)
胸の奥で、心臓が小さく跳ねた。ここから先は、計画通りに進めるだけだった。
私からはキッチンに居る業者さんの姿を確認することは出来ない。
あの黒い液晶に映る私に気が付いてくれる事を願うしかないのです。
露出をしている時は見つからない事を願うのに、今は見られる事を願っている。
そんな矛盾した行動に、私は厭らしさと背徳感を覚えていました。
スーツの上着とスカートを脱ぎハンガーに掛けるとシーリングライトのリモコンを手に取ってスイッチを入れる。
明るかった室内が昼白色のライトに照らされ更に明るくなり、液晶画面にはくっきりと私の姿を映し出した。
黒い液晶画面には白いブラウスとストッキングを履いた私の四肢が映し出されている。
ブラウスのボタンを外す指先が微かに震え、いつも以上に時間が掛かる。
全てのボタンを外し終えるとゆっくりと袖から腕を抜きハンガーへと掛ける。
ストッキングはいつも以上に慎重に時間を掛け、ゆっくりと脱ぐ。
業者さんの準備が終わったのかキッチンは静まり返り、物音は聞こえてこない。
テレビを点けていない室内がこんなに静かだとは思わなかった・・・
私が帰宅すると何故かいつも勝手に起動する空気清浄機は今日に限って起動しない・・・
いつもは屋外から五月蠅いくらい響く、飛行機のエンジン音も今日は聞こえない・・・
静まりかえった室内に私の衣服を脱ぐ衣擦れの音が妙に響き渡る。
そして上下お揃いの黄色のブラとショーツを纏った姿が液晶画面に映っている。
(こんな恥ずかしい格好で私っ・・・)
背中に手を回してブラのフックを外そうとするが、手元が震えて上手く外せない。
これを外したら解放された乳房はきっと映し出されるが乳首まではどうだろうか?
(もう、やっちゃえ!)
ブラジャーのフックが外れ胸元が楽になると同時に私は肩紐から腕を抜き、それを小さく畳んで衣装ケースの上に置いた。
(あと一枚・・・)
部屋着に着替えるのなら、わざわざ下着まで脱ぐ必要は無い。
そもそもガス点検に10分程立ち会うだけならば、着替える必要さえ無かった。
それなのに私はショーツの両端に指を掛けると一気に足首まで下ろし片脚、もう一方の脚と全てを脱いでしまう。
全ての衣服の呪縛から解放され、産れたままの姿に戻った私は大きく上げた両手を頭の後ろで組んで絵画のモデルの様なポーズをとった。
(そっちから見えてる?おじさん、ちゃんと見てる?)
そして下ろした左手で陰毛を掻き分ける様に恥丘を撫で回し、右手でシーリングライトのリモコンを手に取った。
(遣るの?本当に遣るの久美子?)
もう後戻りは出来ない。これ以上やればガス屋さんに襲われる可能性だって有る。
しかし羞恥の行為>恐怖>理性となった私はもう止まらない。
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ
リモコンのスイッチを押して照明の明るさを上げていく。
明るさを増すたびに画面に映る私の身体が、より鮮明にハッキリと浮かび上がる。
左手の指先が陰毛の中、包皮の突起に一瞬触れる。
ピリピリとした感覚が下腹部から脳へと走り、我を忘れそうになるがどうにか自制する。
(ヤバイ、これ以上触ってたら本当にオナニーしちゃいそうだったわ)
ハンガーに掛かったパーカーを羽織ると素早くファスナーを上げた。
部屋の姿見で自分の姿を確認するとお尻がまだ半分剝き出しになっている。
(流石にこの格好は無理ね)
私はスカートを履きもう一度姿見で自分の姿を確認し、キッチンへと向かった。
ガス屋さんは私の姿を見ると、手早く作業に取り掛かります。
「ガスコンロのホースは大丈夫、元栓部分も異常無かっ、と!」
淡々と作業を進め説明してくれるガス屋さんの隣に立ち、私はいけない妄想をしてしまう。
スカートの裾を持ち上げ陰毛に覆われた恥丘をおじさんに見せながら誘うのです。
(おじさん、私・・・今、ノーパンなんだよ。手を伸ばせば、ほら、おまんこ触れるよ)
「それじゃ、ここばサイン頂戴。終わったけん」
「あっ、えっ!ハイッ!サインですね」
妄想の途中で声を掛けられ正気に戻る私。
そして全ての作業が終わり、ガス屋さんに声を掛ける。
「次に来るのは四年後ですかね(笑)」
「いや〜儂は再雇用やけん、今年で最後たい。もう四年後はおらんよ(笑)」
「え〜、もうそんな歳だったんですか?まだまだ全然大丈夫ですよ」
ガス屋さんを見送りながら、後悔が一つ残りました。
「引退前なら、もっと見せてあげれば良かった」と・・・
2026/10/11 07:26:36
(JpIFlW0e)