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罪と罰

カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:痴漢 官能小説   
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1: 罪と罰
投稿者: ふう
菱木卓の母は物心をついた頃には、すでにいなかった。

派遣会社を経営する父の元で育ち、そんな卓はいつしか中学生になっていた。

父の派遣会社は一見して普通の派遣会社にしか見えないが、2面性を持っているのは知っていた。

けれど幼い頃から見てきたそんな環境が当たり前だった卓には、同業はみんなそういうものだと思っていた。

夕方になると20代〜50代の女性たちが出勤してきて、卓の良き遊び相手をしてくれていた。

いつな頃からか父親から、こう言われるようになった。


……卓、いつか理解する時がくると思うけどな、お姉さんたちのことは誰にも言っちゃ駄目だ。
絶対に………。



子供心にも薄々は普通とは違う、何かを察してはいた。

それがお姉さんたちに漂う性の匂いなのか、連絡があると女の優しいお姉さんの顔から女の顔になのだから。


お姉さんたちからすれば、卓は汚れのない癒やしだったのかもしれない。

様々な理由で身体を売るところまで堕ち、悔やみの中で唯一の眩しい存在だったのだから。

それも中学生になると、終わりを告げた。
父の鶴の一声が早すぎる大人への階段を、否応なく登ることになったのだ。


……卓を、大人にしてやってくれないか………


彼女たちは当然戸惑いを見せたが、雇い主である父の言葉には逆らえなかったのだろう。


まだ自慰行為すら朧げにしか知らなかった卓は、お姉さんたち数人に浴室に連れて行かれたあの日を忘れてはいない。

両手両足を拘束されて全裸にされると、まだ当然のように包皮を被ったそこを、ゆっくりと剥かれたのだ。

過保護だったペニスの亀頭は気色悪いほど赤く、とにかくショックだった。

お姉さんの1人はこびり付いた白い汚れというのか、洗い落としてくれた。

今では優しくしてくれていたと理解しているが、耐性のないそこは性的快感を享受できる状態ではなかった。

まるで幼い頃に道ばたで転び、肘か膝小僧を派手に擦り剥いて肉が露出した傷を、擦り洗われるかのような苦痛だったことを憶えている。


それが済むと過敏なそこをお姉さんの1人が、口に咥えてしまったのだ。

若過ぎる果実に舌を這わすようなことはせず、唇だけを使って粘膜の感触を伝えてくる。

その感触はまだ痛みを感じる直前にしか感じず、ただ温もりだけが救いだった。


そんなことが数日置きに繰り返されて突然お腹の底から何かが猛烈な勢いでこみ上げてくると、生まれて初めての射精をしていた。


それからの卓は、彼女達の捌け口になっていく。
彼女達にしてみれば同じセックスでも、汚れた男達に抱かれるのとは違って、新鮮な果実を食せる機会なのだ。

中学生とはいえ父譲りの見事なサイズ、綺麗な色の硬く逞しい若いペニスと出会うことは、そうあることではない。

ましてや快感を覚えたばかりの男の子が自分の体の下で悶え、自分の腰の躍動で呆気なく果てるのだ。

膣の中で脈動しながら精液を吐き出し、落ち着くとまた腰を動かし、女の子のように喘ぐしかない卓を見詰めながら膣の奥でペニスを味わう………。

数日置きに代るがわる今日は私、今日は私というようにせっかく充填された精液を吐き出させられる日々。

淡い恋を経験する前にセックスを覚えさせられ、どこをどんなふうにすれば女が喜ぶかを彼女達に教え込まれていった。

中学生にして射精感をコントロールをし、来る日も来る日も彼女達と繋がった。そして、卓はあることに気づいた。もちろん人にもよるが、30代半ばぐらいからの女性とのセックスが好きだということを。

セックスに対しての貪欲さ、快感を受け止める懐の深さが違うのだ。それは経験値や体質が関係しているのかもしれないが、快感を享受する量が見えないのだ。

どこまでも卑猥な喘ぎ声を出していたかと思えば獣じみた声を上げはじめ、体を弾ませて果てていく。そして再び腰を動かせば狂わんばかりに髪の毛を振り乱し、何かに縋るように手を彷徨わせて快感を貪り食う。

あんなセックスを経験させてくれる女性たちを相手にしていれば、自ずと好みは決まってしまう。

いつしか卓の目は、外の女性に向けられるようになっていった。





酒井明美は今日も変わらず帰宅ラッシュの車内でその身を縮め、揺れに任せていた。20代で生涯を共にすると疑わなかった人と結婚し、42歳になった今日まで子供には恵まれなかった。

子供はいなければいないで夫婦の時間を大切にして、好きな仕事も続けられる充実した生活と言えた。今の生活に不満はない。このまま穏やかに歳を重ねていくものとばかり思っていた。

なのに………。

この10年近く痴漢に遭遇することなんてなかったはずなのに、どういうわけかお尻に違和感を感じていた。若い女でもない自分に痴漢をするなんてどんな者好きなのか、次の駅で駅員に突き出す前に確かめてやろうと明美は首をひねり、自分の肩越しに背後の人物の顔を睨みつけてやった。

前に向き直った明美は、どういうわけか動揺を覚えていた。どうしてあんな子供が………。

明美のお尻を触っていたのは、まだあどけない顔をした中学生?………いや、高校生になったばかりの少年にしか見えなかったのだ。

もしかしたら自分にもあんな息子がいたかもしれない、親子ほど歳の離れた少年の手がスカートの裾を潜って下着に手を這わせてきた。明美はパンストではなく、セパレートストッキング身に着けていた。理由はお腹を締め付けるあの感覚から開放されるし、トイレでもいちいち脱いだりしなくてもいい便利さゆえという理由でしかない。

今はそれが仇となり、下着に直接触れる指が股の下を侵入して秘部に辿り着いていた。どうしてあんな子供がこんなおばさんの私を?どうして、どうして、どうしよう………。

騒ぎを起こせば周囲の視線が突き刺さる。少年の将来は……少年に痴漢されたとヒステリーを起こす中年の女という構図に、誰が信用してくれるというのか。その懸念が明美を窮地に陥れていく。

逡巡する明美の秘部を無表情の少年、卓の細い指先が揉み回していく。明美の嫌悪感は焦燥感に変わり、やがて起き上がろうとする寝た子宥めることに集中しなければいけなくなっていた。

夫との夜の営みは週に1回あるかないに減っており、なんなら2〜3週間もないことは珍しくなくなっている。正直にいえば若い頃よりも今のほうが欲しいと思うことはあるが、無ければないで仕方がないと思うようにしている。そこに不満はないが、ないけれど………。

明美の欲望という名の子が目覚めるのは、必然だった。ショーツの二重底になったクロッチに卓の指の腹が的確に刺激を伝え続けられ、包皮からは明美の充血した実の娘が顔を覗かせていた。

明美があっと思ったときにはクロッチの脇から指が侵入を果たし、柔らかい指の腹に敏感なところを触れられて息を、殺さねばならなくなっていた。

明美は巧みな指使いに翻弄されて失いそうになる我を必死に保ち、扉の脇にある手摺りを滑り落ちそうになる手でどうにか握りしめ、扉の窓の外を見るともなしに見詰め続けるのだった。


卓の指先は柔らかな秘裂の中を前後に往復し、海藻のような恥毛を感じながら泥濘みの海を泳ぐ。そして敏感なところを揺さぶり、女性が耐えられるぎりぎりを見極めながら指の腹で舐めていく。


明美は薄く開けた唇の隙間から、呼吸をするのがやっとになっていた。
 
2026/06/09 05:04:12(JAiEdMNr)
22
投稿者: ふう
大きく開いた太腿から膝までが、瀕死の魚のようにぴくっぴくっ……と痙攣を交えた震えを見せる。

バンダナで目隠しをされて目元は分からないものの、その下の唇は唾液で艷やかな光沢を帯びて、閉じることを忘れてしまったかのように力なく開いていた。


……朱美さんのここ、凄く綺麗だよ…


乱れた呼吸が整うまで疲労で重い体を脱力させ、ペットボトルが詰まったダンボール箱に背中を預ける朱美。自分の秘部を褒められてどんな顔をすればいいのか、今は考えることも億劫だった。

卓の目には包皮からすっかり顔を飛び出させてしまったクリトリスが、濃いピンク色の姿を誇示している。


2人は店舗と倉庫を繋ぐコンクリートが敷かれた渡り廊下になった場所におり、脇道に面した道路側は波板とプルーシートに覆われている。
そこに商品の詰まったダンボール箱を人が通れるスペースを真ん中に開け、積み上げられている。

倉庫に行き来するスペースも確保するのに、中庭側に人ひとりが通れるようにも考えられている。
紙で作られたダンボール箱はコンクリートが敷かれた上に置かれないと、雨が降った際に渡り廊下の上の屋根の庇護を受けられないからだ。

必要に応じて商品が取り出された箇所は、所々がまるで壁が抜けたようにポッカリと空いていた。
上から順番に取り出されるので、人の首から上が見える高さに穴が空く。その前に立たされた朱美は積み上げられたダンボール箱の壁に両手、脚を開かされる格好をとらされて……。

自分の身になにが起こるのか考えるまでもなく、奥歯を噛み締めて眉間に深い皺を刻んでいた。
あの日のようにゆっくりと押し広げられながら、優しく容赦なく、時間をかけて奥まで……。

最奥部まで到達されると温もりと感触を確かめるように動かなくなり、朱美は止めていた息を吐き出した。ああ……硬い、やっぱり立派だわ……。
そんな本音が心の内で、呟かれる。


………朱美さんの中、温かくて凄くいいよ……


そんなことを言われても、何で返せばいいの……。
ここは職場なのだ、いつ見つかるとも限らない。見つかればここに居られなくなるだけではなく、この町ににも居られなくなる。それなのにあたしは何をしているの………。

腰を引いて入口近くまで後退させたペニスを、ゆっくりと動かされ始める。

ああ…これだわ……やっぱり……いい……。

滑らかな粘膜の筒の中を意思を持った硬い杭が奥へ手前にと動き回り、大きく吸い込んだ息を朱美は盛大に吐き出していく。次第に思考を働かせることが難しくなり、その甘い官能の魅力に取り込まれていく……。

腰を掴んでいた卓の手が上まで這い上がり、両胸を包み込む。手の中で形を歪めた胸を掴まれながら体を揺らす朱美が、弾かれたように頭を上げては短い吐息を幾度も吐き出していく。

物足りないほど弱くはなく、乱暴なほど強すぎることもない。興奮すると激しく突いたり、そうすることで女も激しく感じると勘違いをする男があまりにも多いのに、彼…卓はまるで苦行のように淡々とペースを崩さない。まるで合わせてくれているかのように、憎らしいほど感じてしまう……。

夢心地にさせられる位置を散々と突かれ、そうかと思えば深い位置を苦痛にならない力加減で攻めてくる。

どうしてこんなに分かるの……
どうしてこんなに……こんなにいいのよ……
どうして、どうして………

おかしくなる………


適度な力加減で子宮の入口を突かれて圧迫され、一つの感覚を除いて頭が麻痺していく。息を吐き出す度に膝の力が抜けてきて、ダンボールの壁についた手の平がズルズルと下がっていく。

それでも座り込むことすら許されず、卓の手で保定された腰がその位置を保ち続ける。なおも石油掘削機のように躍動を続けられていく。何かに縋ろうにもダンボール箱の壁しかなく、引っ掻ける爪が虚しく弾かれる。

突かる……突かれる……淡々と、永遠とも思えるほどに、絶えずその動きを止めることなく…。
ほとんどの場合、夫も含めて男性が先に射精してしまう。そういうものだと思っていた。けれど卓に出会って、その概念は狂ってしまった。

こんなにもセックスがいいなんて……。
知らなかった。

刹那、朱美の体が弾むように背中を反らせ、ズルズルと崩れ去ってしまった。
荒く呼吸をする朱美を前に、卓はダンボール1箱を引きずって目の前に置く。その上に腰を下ろすと朱美を引き寄せ、膝を跨がらせて……。

目元を隠していたバンダナがずれ落ち、夫ともしなくなった対面騎乗位という体位をとった朱美。
誰にいわれるでもなく卓の首に両手を回し、腰を前後に揺らし始めてしまう。奥でペニスが擦れる感触が快感を呼び、圧迫感が堪らないのだ。

卓の膝の上で腰をグラインドさせ、跳ねるように腰を打ち下ろし、髪の毛を振り乱す。
そして、視界が白く霞みはじめていく……。




自分の膝の上で腰を躍動させる朱美の姿は、ひどく妖艶で圧巻だった。自分に性の世界を教えてきたお姉さんたちの中にも、狂い咲きを見せるひともいた。けれどもセックスに精通し、あるレベルに達した数人だけが見せる姿だったのだ。

それが素人の主婦の朱美が見せるとは……。

経産婦、年齢、体の開発の進み具合、体質……。
朱美の場合そのどれもが当てはまり、相性がいいのかも知れない。

海老反りになってオーガズムに浸る朱美を抱き止める。深くまで入り込んだペニスを快感で我を失った朱美の膣壁が、締付けたり弛緩させたりする感覚を楽しむ。汗が滲む首筋の肌に髪の毛を張り付かせ、開けたブラウスの中の胸に舌を這わす。

舌先に弾ける乳首が心地よく、敏感になっている朱美が膣の中のペニスを締め付けてくる。
今度は朱美に背面騎乗位をとらせ、もしもの時を考えて制服の一部である赤いエプロンを首から下げて胸の前を隠す。卓が腰の後ろの紐を結んであげる。

背後からエプロンの下を通した手で朱美の両胸を包み込み、考えてから片手を下に滑り込ませる。
剥き出しになったクリトリスが指の腹に触れ、朱美の体がピクンっと反応する。


……ほら、動かなきゃ駄目だよ……


どれだけ疲労を感じようと、膣の中の存在が朱美を動かず。何度味わおうと飽きることのない快感を、再び得るために……。

そんなとき、倉庫に向かうための店舗側の扉が開く音がした。卓は朱美と立ち上がり、ダンボール箱が抜けて穴の空いた箇所に朱美を前にして立たせた。こちら側に来られては面倒臭いことになりかねず、会話で済むのなら首から上が見えるここの場所で事足りる。


さすがにチーフが悪いと思ったのか、様子を見に来たようだった。


………どうだい、ある程度は片付いたかな?
  あとは皆で少しづつ進めればいいから、店の   
  中の勤務に戻っていいよ… 


額や首筋に汗を滲ませて乱れた髪の毛を張り付かせる朱美を見て、使えない新人の分も働かせてしまった。こりゃあとで機嫌を取らないと厄介なことになりそうだな……。


……ああ…あともう少しだけ、どうせだからきりの    
 良いところまでしておきたいんです…


チーフは朱美の乱れた前髪が僅かに揺れ動いているのを見て、顔しか見えないがその陰で足を踏み動かしていると想像した。それは新人の教育係だけでも大変なのに、重ねて難儀な作業をさせたまま今まで放って置かれたことに、怒りを燻らせた態度だと思ったのだ。

朱美の背後ではチーフに姿を見られないよう背中を丸め、頭を下げて朱美の背中に隠れた卓が、腰を前後に揺らしていたのだ。そう……2人は繋がったままなのだから……。

表情を崩さないよう心掛ける朱美は、自分の腰を掴む卓の手を払い除ける仕草で、今はやめるよう必死で促す。でも協力してくれそうにはなく、気を抜けば挙動不審になりそうな自分を叱咤する。


……いやぁ、今日はもういいからさぁ…


パートとはいえ女を怒らせると厄介だと、自分の女房で思い知っているチーフはやんわりと食い下がる。



……あとから手を付ける人に迷惑をかけますから、
 あともう少し……んっ………だけですから…


……いやほら今日は雨も降って肌寒いしさ、風でも
 引かれたら大変だから



なおも食い下がるチーフを前に自らの太腿に爪を食い込ませる朱美の背後では、感じる所を執拗に動かず卓がいる。肌寒さを感じる気温だというのに朱美は唇を薄く開き、口で呼吸をしなければ暑くて辛いかのように目も潤ませている。


奥まで入り込んだ杭が塩梅よく圧迫し、ノックを繰り返す。大きく腰が引かれ、入口に近い感じる所を意図的に行き来を繰り返される。引かれては奥まで入り込み、ロングストロークで幾度も攻めてくる……。

虚ろな目になっていく朱美が眉間に皺を寄せ、それでも平静を装いながらチーフに折れなかった。


……あと、少しですから……あたしは平気ですから
 ふう〜っ……体を動かしてると、暑いくらいなん
 です………から…


言葉こそ柔らかいが、表情が合っていない。朱美の潤んだ目、虚ろな目は憤りを表し、眉間の皺は怒りの爆発を限界まで我慢していることの裏返しなのだ。そう勘違いしたチーフは、パート従業員の逆鱗にこれ以上は触れないよう、顔を引きつらせて退散していった。

あれは相当、起こっている。男性従業員でも大変な作業なのに、切り上げさせるタイミングがあまりにも遅かったのだ。この商売はパート従業員にヘソを曲げられると、やってはいけない。

どうやって朱美の機嫌をとればいいのか、チーフは頭を悩ませるのだった……。



チーフが去った現場では、喉の奥で声を殺し、くぐもった喘ぎ声を漏らす、そんな朱美が体を揺らしていた。

ダンボール箱の壁に頬を寄せ、目を閉じる朱美。絶え間なくお尻の肌を打ち付けられる音の中に、淫らな水音が入り交じる。

やがて上半身が折れ始め、腰を支え持たれる格好になった朱美がガニ股になりながら声を絞り出した。


その場に倒れ込んだ朱美の白い肌を見せるお尻へと、ローヤルゼリーのような卓の精液が勢いよく降り注ぐ。


卓の熱り勃つ熱い分身は、まだその勢いを留めたまま脈打っていた。

26/06/27 01:26 (Kx5n8Srt)
23
投稿者: ふう
久美様、ご返答いただいて感謝します。

男性の身勝手なセックスは最低……仰る通りです。

女も年齢を重ねれば、厚かましさが出てきます。
そんなこちら側の我儘を受け止めてくれる殿方ばかりだと、幸せなんですけどね。
26/06/27 01:55 (Kx5n8Srt)
24
投稿者: ふう
薄曇りの空から薄日がやんわりと注ぐ日というのは、肌に湿気が纏わりついて不快指数も高い。
じんわりと汗ばむ体で駅ビルの中を進む木村美紀ば、改札を抜けた先にあるデパートへの入口を潜った。


梅雨の合間のこの日、仕事帰りに本屋に寄ろうと思ったのだ。美紀は41歳だが母を大学時代に亡くし、家庭料理のレパートリーを増やしたいと思っても聞く相手はもういない。三杯酢で着けた小鯵やオカラを使った卯の花といった素朴な料理が無性に食べたくなることがある。

どの家庭にも家の味があるように、同じ料理でも母の味をどうしても再現したくて試行錯誤をしてきたが、あと一歩のところで足踏み状態なのだ。
今はタブレットで検索すれば情報が溢れているけれど、作り手の顔が見える雑誌なら人柄が料理に出るのではないかと思ったのだ。

冷房の効いた空間を衣料品店や靴屋を横目に歩を進め、お目当ての本屋に辿り着く。駅ビルの中とあって立ち読み客が数多く立ち並ぶ店内を進み、料理本が並ぶコーナーの前で足を止めた。

美紀は数冊の雑誌を手に取り料理が映し出された中身を吟味して、作り手の顔写真を見てその雑誌の購入を決めた。小料理屋を営む女将らしいのだが、その出来栄えから味が想像出来るのだ。

レジカウンターへと進む途中で、立ち読みをするひとりの青年に目が向いていた。何気なく見ただけだけれど清潔そうな身なりとその雰囲気、その空気感がアンテナに引っかかったのだろうか。

鼻筋が通った優しそうな横顔、伏し目がちになっているから男性にしては睫毛が長く、セクシーにも見える。自分がもう少し若かったらな………。
そんな自嘲を持って自らの厚かましさを打ち消しながら、本の会計を済ませたのだった。

数日後、美紀は駅へと向かうバスの中で本屋で見かけたあの青年を見かけ、同じ路線を利用していたのだと意外に思ったものだ。そしてその2日後に、今度は電車の中でばったり遭ったのだ。同じ公共交通機関を利用していればこんな偶然が遭っても不思議ではないが、これまでも気づかなかっただけでニアミスをしていたのかもしれない。

それにしてもこんなに印象に残る美形の青年ならば、なぜ今まで気付かなかったのだろう。もっとも自分が一方的に気になっただけの話で、お互いに見ず知らずの者同士だけれど……。




卓は本屋で脇を通り過ぎた女性が、気になっていた。40前後だろうか、控え目な化粧品の香りに汗が交じる残り香を残していったのだ。

その後姿はほっそりとして、ディスクワークの職に就いているのかオフィスカジュアルといった出で立ち。何となく体のラインが分かる細身のワンピースが、大人の女としての魅力を嫌味なく演出させている。

本人は自覚がないのかもしれないけれど、涼し気な顔は十分に魅力的で、単純に中年女性だと切り捨てる男性は見る目がないと思わざるを得ない。
だから卓は同じ時間帯の公共交通機関を、わざわざ利用し続けたのだ。

確信はなかったが、自分の勘は嗅覚と同じくらい外れることはない。本屋で感じ取った匂いとは、女性が潜在的に性に対して欲求を欲するそれだったのだ。あれだけの美貌がありながら満たされていないなんて、黙って見過ごすことなどどうして出来ようか。


だから偶然を装って彼女に何度も姿を晒し、印象付けてきた。彼女は気付いてくれたようで、その手応えをしっかり感じていた。興味を持って意識する眼差しはまだ弱く、少しづつ距離を縮めていくために静かな行動に移っていった。

数日置きにバスや電車の中で姿を彼女に見せ、ある時はやっと気付いてくれる距離で。ある時には彼女の数メートル前を歩いて見せ、そして今日はバスの中で彼女の隣に立った。まるで視界に彼女など写っていないかのように。

そしてさらに数日後、卓は行動に出た。
開いた電車の扉から人に押され、それとなく彼女の側に立つ。人の乗り降りで入れ替わる時を利用して隣に立ち、押される流れに逆らわず少し強引に彼女の真正面の位置を確保したのだ。

彼女は気付いた途端に迷惑そうな表情からなんとも言えない顔に変わり、そこに不快さは消え失せていた。あるのは困惑と動揺、そしてもう一つ。

それは複雑な女心、羞恥心だった………。
26/06/27 16:39 (Kx5n8Srt)
25
投稿者: ふう
美しいものは、遠くから眺めるから美しい……。
美紀の持論は、こうだった。

雄大な富士山は離れた位置から眺めるから素晴らしく見えるけれど、実際に登山に出掛けてその場に立てば、石や岩ばかりなのだ。もちろん、ある意味では素晴らしいのだけれど……。

このところどういうわけだか、あの青年をよく目にする機会が増えていた。何があるわけでもないのだし、気にしなければそれで済む話ではある。
けれど気になってしまうとどうしても、意識してしまうのだから仕方がない。

日常に入り込むようになったあの彼は、どこに住んで何をしている人なのだろう。20代前半と若く見えるけれど、見た目が若く見えるだけでもう少し年齢は上なのかもしれない。

少し長めの髪の毛に抽象的にも見える綺麗な顔立ち、すらりとした体型をしていて、同年代の女性は彼を放ってはおかないだろう。もしかしたらもう、お相手がいても何の不思議はない。

気が付けば自分の少し前を歩いていたり、バスや電車の中でその姿を見かけるようになり、年甲斐もなく興味を持つようになっていた。

まったく、何を考えてるのよ、あたしったら……。

自分よりも今年の春に高校生になった娘のほうが遥かに年齢が近いのに、何を気にしているのだろう。彼は近くで見ても輝いていて、不思議な魅力を放っているように美紀には見えていた。

惹かれているのかしら、あたし……?
いいえ、まさかよね、そんなはずはないわよ。これは興味よ、興味…そうに決まってるわよね……。
少なくても15歳は歳が離れている歳下の青年に、本気で熱を上げるほどの自分は若くはないのだ。

娘の真希が小さい頃に離婚をし、女手一つでここまで生きてきたのだ。今さら恋人や結婚を考える相手など、到底考えられない。まだときめく事をを忘れていなかった自分に、びっくりしているだけだと思うことにしていた。


ただそれだけのことにしていたのに、彼は不意に美紀の懐に入ってきたのだ。いつもと変わらない帰宅する電車の中で……。
いくら人の波に押されたからといって、女性の体の前に流されてくるなんてわざとらしい。場合によっては黙って見過ごすなんて、しないから……。

そんな失礼な男を前に怒りの炎を燻らせはじめた美紀は、急速に自分の憤りが小さくなっていくのを感じていた。なぜならその男は、あの彼だったのだから。現金なものだと自分を恥ずかしく思えたものの、まだ話をしたこともない彼を前に内心で狼狽えるしかなかった。

普通であれば背中を向けるだろうに、彼は不器用な性格らしく美紀と至近距離で向き合う形になって、困った顔をしていた。困ったのはこっちよ……そう思ってみても、状況が変わるわけでもない。

若い男性の汗ばんだ体の匂いが感じられ、不快になるどころかドキドキしてしまう。半歩足を前に進めれば、顔を少しだけ曲げれば唇が触れる距離というのは誰だって緊張して当然じゃない……。そう思ってみても何の慰めにもならない。

その夜の美紀は、なかなか寝付けなかった。





起床後に1度、昼休みに1度、そして退社をする前に1度……排卵期となるこの期間は下着に貼り付ける専用のシートを交換する。生理だけでも鬱陶しいのに、授精の準備をする体が大量の分筆液を排出するからだ。男性には夢のない話でも、下着を汚さないためには必要なことだと諦めているけれど。

厄介なことは、それだけではない。個人差はあるけれど生理期間中は倦怠感やイライラが顕著になり、胸の張って嫌になる。美紀の場合は性欲が増すのもこの時期であり、さらにその前後も悶々とする体質だから慣れたこととはいえ、体力気力が消耗してしまう。

上手に人に甘える術を身に着けたり、思ったことをすぐに口に出したり行動にでないよう、心掛けている。保険会社で課長職に就く身としては部下たちの模範とならなければ、誰もついては来ないのだから。

退社前のトイレで清潔なシートに貼り替えて、女の神秘の足跡の残る役目を終えたシートを廃棄する。もうここに男性を受け入れたのは、いつのことだったか。ショーツを膝まで下げた格好で自分の下半身を見下ろしながら、一抹の寂しさから溜息が出る。

まだ娘が小学生の頃だから、少なくとも4年以上も前のことになる。会社の勉強会として出張した際に、魔が差したとしか言いようがない。妻子ある支店の同僚と、一夜を共にしたことがある。

翌朝はお互いに目も合わさずそれっきりにしたが、激しい後悔に悩まされたのだ。そう悩めるほど熱い夜だったのだ。不倫を続ければやがて破滅する日が来る、良いことなどないのだ。そう思っても定期的に訪れる体のサイクルがあの夜を思い出させ、娘を寝かせた後にアルコールで誤魔化さなければやっていられなかった。

そうやってシングルマザーの寂しさを乗り越え、自分を欺くことには慣れてしまったけれど……。
人知れずそういう相手を探す度胸はなく、そうかといって人生のパートナーを探すなんて気にもなれない。

まだ40過ぎだと自分に虚勢を張れるのはいつまでのことで、もう40過ぎだったと後悔をする日というのは意外と近いのかもしれない。
美紀はこのまま女として枯れていく日々を、漠然と受け入れているはずだったのだ。

なのに今日もまた同じ車両の中で、彼の姿を見つけてしまった。恋心というにはずれている気もして、憧れや羨望というのとも違う。ではこの気持ちは何なのだろう………。

彼は自分にまったく気付いている気配はない。でもその場にどうにか留まろうとしながらも、電車が駅に停車するたびに人の波に押されて、こちらに流されて来るのだから嫌になる。

嫌?…………何が嫌なの?………本当に嫌なの?……

自問自答をする美紀は、自分の心に向き合うことを拒絶する。扉を開けてしまえば答えを認めなければならず、自分自身に嘘がつけなくなる。

そう、本当は自分の奥底に眠らせている答えを分かっているからこそ、拒絶しているのだ。職場では良き上司、家庭では母として自分を保ってきたのだ。それなのに………。


数日前と同じような、デジャヴが起こる。
彼が悪いわけではないのは流されてくる一部始終を見ていて、それは理解できる。
でもここまで再現されるなんて、おかしい……。

認めざるを得ない不可抗力も、実は卓による巧みな演出であることは誰も気づくことはない。再び2人は互いの息がかかる距離で対面し、双方が互い違いに少し顔を横に傾ける。美紀は両腕で胸の前をガードし、互いの脚が互いの股に割って入る形で身動きができなくなっていた。

もちろんこれも、卓の仕掛けた罠だけれど……。

卓は美紀の温もりを、美紀も同様で若い青年の温もりを感じて困惑するしかない。申しわけ程度の嫌悪感と動揺、なぜか罪悪感を感じながら猛烈な羞恥心に身を焦がす。

どちらともなく背けていた顔を恐るおそる正面に戻し、お互いの目を見詰める。不意にどちらかが目を逸らすと、釣られてもう片方も逸らす。

そしてまたお互いの目を見詰め、その下の唇を少し見詰めて顔を逸らす。そんなことを幾度も繰り返しては唇と唇が数センチのところまで近付けては、顔を横に逸らす………。

美紀の葛藤する気持ちそのままが現れ、踏ん切りがつかない様子が窺える。が……それも終止符が打たれる時がくる……。

もう10数回目なのかどうか、数えてはいないから定かではない。互いが顔を向き合わせた絶妙さと車両が揺れる偶然なタイミングが、双方に柔らかい感触を覚えさせた。

美紀は体が固まったように動かせなくなり、青年が意思を持って唇を重ねてくることに目を見開いた。強固に閉じていた唇もやがて緩み、口の中までも許してしまった。

頭の中が、脳が痺れてしまう……。
歯の裏側、上顎、頬を青年の舌先が這い回り、舌を絡め合う。青年に唇で舌を捕らえられ、吸われたときは膝から力が抜けそうになった。

そこには母としての顔もなく、女子の部下に羨望の眼差しを向けられる上司としての仮面もなく、ディープキスに酔いしれる虚ろな目をした女がいるだけだった。

人の頭が居並ぶ中で、ただ2人だけの時間が流れていく。大人の女が紅く染めた素顔をメイクの下に隠し、自分の唾液を青年に与え与える。青年が自分の唾液を与えると、美紀は無条件でそれを飲み下す。

美紀の中の何かが警鐘を鳴らす……。
今なら引きは返せる、まだ間に合うはずだ。
引き返さなければと思うのに、自分を止められない。

美紀の太腿には硬くなった青年の、何かが主張を訴えている。

そしてワンピースの胸元のボタンがいま、外されようとしていた。
26/06/28 01:07 (GkaDVNaw)
26
投稿者: ふう
美紀がこの日に身に着けるワンピースは、落ち着いたカーキ色。襟付き、ノースリーブ、上半身側は割とタイトになっていて、下半身側はわりとゆとりのあるデザインである。

肌の白さとカーキ色のコントラストが細身の体を引き立たせ、控え目に開いた首元に下がるチェーンネックレスが、やはり肌の白さを際立たせる。
先方に出向く際はジャケットに腕を通せばいいし、ネックレスも必要に応じて外せば何も問題はない。

上から2つのボタンを外された美紀は、その美しい首元を飾るネックレスからもう少し下、合わせ目が浮いた所から手を入られようとしていた。

はっとして青年の手首を掴み、躊躇を見せる。
いまの今まで熱い口づけを交わしていたというのに、人の目が気になってこの期に及んで尻込みをしてしまう。

ちょっと待って……そう表情で伝えたつもりだが、指先が服の中に侵入してくるのを止められなかった。肌を伝う指先が……その感触が自分の手から力を奪っていく。ブラのカップを包み込む青年の手の平が、やんわりと強弱をつけて揉んでくる……。

恥ずかしくて、いや……人の目が気になって不安になる。辺りに視線をそれとなく向けて見たが、誰かに興味をそそられたような者の姿は見受けられない。自分の両隣、後、青年の背後と気になって仕方がないが、胸元に手を入れられていることなど誰も気付いてもいない。

この緊張感の中で欲情する自分を嫌というほど自覚する美紀は、ブラを上にずらされて直に触れられる恥ずかしさに、せめて青年から顔を背けた。
学生なのか、それともディスクワークに就く仕事をしているのか、青年の手、指先は滑らかで指の腹も柔らかい。

その指の腹で敏感な乳首を優しく触れられて、硬く主張をしはじめていく。
嫌だわ、どうしてこんなに上手なの……。
頂きを繊細に擦っていた指が、今度は摘んで優しく引っ張って不意に開放する。そしてのの字を描くように時計回りに動かされる。
擽ったくて、それ以上に感じてしまう……。

力が入ってしまう肩が上下に震え、また人目が気になってしまう。不意に青年が膝を曲げて垂直に腰を落とし、胸元を開いて顔を押し付けた。
思わず狼狽した美紀が辺りを見回したけれど、幸いにもこちらに気付く者は誰もいない。

口に含まれた乳首がヌメヌメとした青年の舌先に転がされれ、その快感が緊張の最中にいる美紀の頭を痺れさせる。こんな大胆なことをされているのに、感じてる場合じゃないのに……。

青年の頭に無意識に置いた美紀の手は引き剥がすためなのか、それとも自分の気持ちを伝えるためだったのか、今となっては分からない。ただ少なくとも快感を享受していることは伝わってしまったけれど……。




卓はCカップほどの程よい胸に舌先を這わし、乳首を吸っては執拗に舐め回していた。上下に激しく揺さぶると硬くなった乳首がプルプルと震え、舌先を乳輪につけて乳首の周りを這わせると美紀が、その体を震わせてくれる。

欲情した体は熱くなり、特有の芳香を放ちはじめる。
つい先日まで朱美という人妻と関係を持ち、熱い交わりを繰り返してきた。自分を開放してしまった彼女は卓とのセックスにのめり込み、狂ったように何度もその身を弾ませ、そして震わせた。

理由をつけては倉庫に引き込まれ、待ち遠しかったと言わんばかりに自ら卓のペニスを口に含むのだ。射精をコントロールしていることは伝えてあったので、我慢せずに口の中に出して欲しいとの要望に、卓は応えた。

朱美は涙目になりながら放出した精液を、愛おしそうにゆっくり喉の奥へと飲み下した。勤務中に商品のピックアップに15分の時間があったとしたら、卓のペニスを朱美は望んだ。それほど朱美の体は卓に順応し、快感を貪るようになったのだ。

このままでは彼女の家庭が崩壊する、だから卓は黙って身を引いたのだ。破滅させてまで関係を維持するつもりはなく、性に狂った女は開放して我に返る時間を与えないといけないのだ。

もっとも朱美をそうさせてしまったのは、他の誰でもない卓だが……。




油断していたわけではないが、下半身が空気に晒される感覚を覚えた。ワンピースの裾が捲り上げられて、青年の手が太腿に触れられていた。
嘘でしょ………?
驚愕する美紀をよそに、その手は太腿の付け根へと肌を伝っていく。すぅ~っと下着の上を滑らせるように、閉じた太腿の間に指先が入り込み……。

美紀の神経が、一点に集中する。忙しなく動いていた美紀の眼球がその動きを鈍らせ、瞼が重そうに下がってくる。優しく沈み込んだ指先が怪しく蠢きをみせ、寝た子が愚図りはじめた。

布団の中で頭をもたげ、ついに泣き始める。
強かな快感が美紀を遅い、口元を手で覆い隠す。
すぅ~っ……すぅ~っと指先が短く上下に動き、また小さなのの字を描くように動かされていく。

濃密な快感を与えられてはいるが、青年の繊細な手つきが美紀を恍惚とさせる域に留まらせる。顔の筋肉を弛緩させ、唇を薄く開かせると緩い吐息が漏れ出していく。

緊張で張り詰めた糸が感覚を失い、青年の指先がショーツの上の部分を浮かせて入ってきても、止めようとする理性が追いつかなくなっていた。
フサフサとした恥毛を確かめるように指の間に挟まれ、美紀の羞恥心が煽られる。

焦らしていた指が下がって、直に触れてくる。
恥ずかしさのあまり青年から背けた美紀の顔は瞼が閉じられ、誤摩化しようがないほど濡れていることを知られた恥ずかしさが、顔を俯かせる。

過去に経験がないほど巧みな手つき、クリトリスへの刺激に我慢できなくなる前に、その指先が吸い込まれるように何処かへと姿を消していく。

膝を曲げて腰を落とす格好は辛いはずだというのに、青年は少しも大変そうな表情を見せないでいる。2番目の関節まで沈めた2本の指を幾度も往復させ、指の腹が捉えたポイントを執拗に攻めていく。

短く止められた息がゆっくりと吐き出され、不意に止まった息が熱い吐息となって美紀の口から流れ出ていく。
ぬちゃっ……くちゅぅっ……みちゃっ………
車両が出す騒音が淫らな男を相殺して人の耳には届かないが、音の根源である本人は強く意識をせざるを得ない。

この歳で痴漢をされるなんて、それも相手がこの彼だなんて、どう受け止めればいいのか……。
官能に染まった頭でそう思ってみても受け入れてしまっている以上、何の意味もない。

願うのは誰にも気付かれず、済んでほしい。
そして、今はただこのまま酔っていたい……。
こんな状況ではあっても相手は彼で順序は省かれたものの、望んだ形ではなくても彼を望んでいたのだから。

そう……実現しようとしまいと彼と時間を共にすることを願っていた。映画や食事、他愛もない会話、同じ空間で何気ない時間を過ごすこと。そして最終的には愛を育み、ベッドの中でお互いを求め合うこと……。

分かっている、こんなに年齢差があるし、現実的ではないことくらい。だから密かな願望として心の中に留め、妄想をしただけなのだ。

本当はこんな形でなんて、望んでなどいない。
ならば今すぐに止めるかと問われれば、即座に頭を縦に振る自信もない。バカな女だと罵られようと、後で頭を抱えながら後悔をすることになろうと、今この瞬間を手放したくはない……。

生きていれば大変な場面に直面することがある。
それがシングルマザーともなれば幾度もあり、その度に涙しながら乗り越えてきた。その分厚かましくもなり、図太くならなければ生きてこれなかったのだ。だから……愚かだろうと、この瞬間を手放したくはないのだ。

職場の部下である女子社員には、慕われている。
女手一つで毛を育てて仕事もできて、その上とても綺麗だと。課長(美紀)のようになりたいと、そうも言ってくれる。そう言われた当の本人はある青年に夢中になり、恋愛を飛び越え帰宅ラッシュの電車の中で卑猥な行為に身を捩らせている。

時にはひとりの女でいたい、ただそれだけ。
そんな美紀が、現実に引き戻される。いつの間にか指とは異なる異物が、太腿に触れていていた。
その存在に気付き、美紀はぎょっとせざるを得なかった。いくら久しぶりとはいえ、それが何であるかはさすがに美紀でも理解できたのだ。

男性器………。

急に怖くなり、しかもこんな満員電車の中で出すなんて、尋常ではない。それを言ったら痴漢行為を受け入れて、感じていた自分もそうなのだけれど……。

美紀は拒絶しようと手で遠ざけようとしたが、そのサイズと形、逞しさと硬さに息を呑んだ。過去の自分は男性のこれで、酔いしれてきたのではなかったか。それにこんな見事なペニスは経験はなく、お目にかかったこともない。これを入れられたら、自分はどうなってしまうのだろう……。

そう考えたら跳ね除けるためのその手を邪険に動かせず、手の平で包み込んでいた。硬くて熱を持ったそれはとても魅力的な凹凸感があり、子宮の奥に疼きを覚え始めていた。

欲しい気持ちは山々だけれど、こんな所でできるはずもない。彼をホテルにでも誘えば話は別だけれど、女の自分がそんな事をした経験はない。そもそも彼にしてみれば、自分は立派なオバサン。痴漢するにはよかったかもしれないけれど、そんな中年女が誘ってもついてきてくれる保証はどこにもない。

冷たい態度で拒否をされたら、あるいは痴漢だと駅員に突き出されでもしたら、そう思うと怖くて自信が出なかった。

なのに青年は美紀の片膝を掴み、持ち上げ始めたのだ。彼の右側に持ち上がった美紀の右足が斜め右後ろに突き出され、彼の隣りにいた男性に当たってしまった。その男性は背中を向けていたが、片脚の太腿が露わになった美紀が、顔から血の気を引かせていく……。

騒ぎが起こり、情けない姿が大衆の面前に晒されて、そして………。破滅する自分を想像して、美紀は気が遠くなっていく自分を自覚していた。
なのにそれがどうしたことか、その男性は突き出た美紀の右足を黙って脇の下に挟み、持っていたスポーツ新聞で巧みに覆い隠すのだった。

真相を理解するのは事が済んでからずっと後のことだったけれど、少しも動じない青年を見て根拠のない安堵感を得た美紀は、次の瞬間には下着をずらされたそこから貫かれ顎を跳ね上げていた。

青年が後から教えてくれたことは、電車の中には痴漢師が紛れているということ。
あの男性はかつて痴漢行為中に窮地に陥り、それを救う手助けをしたのだというこ。
彼は望まぬ女性には手を出さないポリシーを持っており、馬が合ったこと。
今回の自分たちのような状況だった男性に、協力したことがあるのだと。

それであの男性が黙ってこの青年に、協力をする行動に出た理由が理解できたのだった。でもその理由を知るまでは、気持ちが穏やかではなかったけれど……。


腰と背中を抱き止められ、対面立ち位で挿入をされるなんて、カオスすぎる。話せることではないけれど、誰に話したところで信じられはしないのだろう。

寿司詰めに近い乗車率の車両内で、セックスに及んだのだから。
久しぶりだったこともあって、膣に入ってくるまでの感覚は苦痛を伴った。押し広げられる痛み、圧迫感が苦しくて息が止まった。

体位が体位だから制限された動かし方だったらしいものの、ただ苦しくて青年の肩に顔を埋めて耐えるしかなく……。

でも苦痛の時間が長く続かなかったことは、美紀自身がよく認識している。埋めていた青年の肩から再び上げた美紀の顔は、もう苦痛に歪んでなどいなかったのだから。

体が順応し、思い出したのだ。

快感の味を………。

26/06/28 21:40 (GkaDVNaw)
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