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マリア
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ロリータ 官能小説   
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1:マリア
投稿者: 貴史
レス禁にしてしまいました。連立て失礼します。


女の子は男の頬をぶった。
「うちに触るな」

気の強い女の子だな…
でも そこまでだ
後は 毅然とした態度で やんわりと断れよ…
それが大人の女だ


頬をぶたれた男が
「おー痛い痛い、姉ちゃん痛いわー あっちで介抱してくれへん?」
と言いながら女の子の肩から腕を撫でている。
女の子は身動ぎもせずに睨みつけている。
「また、ぶたれたいんか?」
男は、ひるまない女の子にイラつき 胸元を掴み脅し始めた。
「えーから、付き合えや!それとも慰謝料払ってくれるんか?」

俺は短くなった煙草を深く吸い込み 窓から空に向けて高く吐き出した。
気が強いのは
いいが
それくらいに
しとけよ…
お嬢ちゃん


ペッ

女の子は男の顔に向けて唾を吐きかけた。
「これが慰謝料や」


ドスッ

男が女の子の腹に一発入れ、女の子はスッとしゃがみ腹を押さえている。

俺は煙草を揉み消し、車を降りた。
ったく ガキは
加減を知らんな


男が女の子の前に立ち
「ナメとんか?」
と肩と足を揺らしている。
女の子は ううぅ と言いながらも睨み返している。

俺に気がついた男たちが、なんや?と睨んできたが俺の顔と体を見て たじろぎ始めた。
それでも目の前に立った俺を見上げ
「はぁ?なんや?」
と意気がってきた。

ズドンっ

唾を吐きかけられた男が倒れこんだ。
「それが この子の味わった痛みだ。心配すんな明日には痛みが取れる」
それだけでチャラチャラした男達は遠ざかって行った。
女の子はまだ座り込み腹を押さえていた。
「大丈夫か?」
「こんくらい
へっちゃらやぁ」
「気をつけろよ」
それだけ言うと俺は車に戻りドアを開けた。
女の子が腹を押さえながら着いてきてた。
車に乗りドアを閉めると女の子が言ってきた。
「なぁ…
 オッチャン」
これでも俺は25だ…と思いながら煙草に火をつけた。
「なぁオッチャン…うちとホテル行かへんか?」
俺はいい女を抱きたかった。子供に興味は無かったが、遠くでチャラチャラした男達がこちらを見てた。
「乗れよ」
女の子は後部座席に乗り込み腹を押さえて寝転がり
「はぁ、ちょっと痛いわ」
と呟いていた。
 
2014/12/06 03:41:15(40WOJ2E5)
42
投稿者: 貴史
道の端に落ち葉が溜まりだしてきた。
それを蹴散らすように足を引きずり店に向かう。
店ではパートのオバチャンと痩せた男が開店準備を終えている。
店長はまだ来ていない。最近 来るのが遅くなってきていた。
たいして忙しくもなかった昼のピークが過ぎると、店長が 夜には戻ると言って出ていった。昔も何かの集まりや他の店を覗きに行ったりしていたが、最近はどうも違うようだ。
時間になり、パートのオバチャンが帰り、痩せた男も着替えて出てきた。
洗い場で水を出したまま、手を止めてる俺の顔を覗き込み
「おサボりですか?」
と言った後、笑って
「お先!」
と帰って行く。
俺は腹に手をやった。

腹が、痛い。

まりあと最初に会った時、まりあも腹を殴られ座り込んだ。
痛かったろうに、男を睨んでいた…
自動扉が開き、客が入って来たので対応して注文された物を作り 出した後、ゆっくり時間を掛けて明日の仕込みの分をやってると、客が帰り 店内は静かになる。その後、二組 来たあと、夜のピーク前に店長が戻って来るまでは誰も来ず静かなもんだった。
店長は戻って来て、店内を見回し 誰も居ないと分かると
「まぁ、休憩しましょう」
と休憩室でチョコレートをくれた。
パチンコの景品のようなチョコレートを。
チョコや飴やら、どれだけの投資の見返りか解らないものを たまに俺にくれる。

夜のピークまで店の傷んでる箇所をなおす。
随分と傷んできたもんだ。

アパートへ帰ると廊下でアル中が何やら叫んでいた。何があったか知らんが俺に不満をぶちまけてくる。
「俺も やろうと思えば ウッ 出来るんだぞ!」
「ウィ~お前は何様だ!…ヒック」
「俺をバカにすんなぁ~っ!」
アル中は廊下に倒れイビキをかきだし寝てしまった。


「まりあ、ただいま」
声を掛け、写真立てに口づけた。少し汚れていたので服の袖で拭いてやり綺麗にしてやった。
風呂に入り、歯を磨きながら鏡の顔を見る。顔色が悪い。どす黒く見える自分の顔を見ながら、すでに亡くなった親父を思い出した。親父の顔も、どす黒かった。

布団に入る前に、もう一度 まりあのプリクラに口づけた。
「まりあ……もうすぐ、会える気がするよ…」
14/12/27 20:53 (n5IurvtA)
43
投稿者: 貴史
暖かい雪が降ってきた。
今年の雪は妙に暖かい。
店に向かう途中で、一面に雪が舞い落ちてきた。空は明るいのに、暖かい雪がキラキラと光り、まるで誰かが紙吹雪を撒き散らしてるかのように、辺り一面を輝かせた。
空で まりあが
「雪やぁ!雪やぁ!」
と喜んでいるようだった。
店に入ると店長が神妙な顔つきで書類を見ていて、俺が来たのも気付かなかったのか、声を掛けるとビックリして こちらを見て、慌てた感じで書類を隠す。店長の顔に笑いは無く、血の気が引いていた。
昼のピーク前に店長に呼ばれ、休憩室へ入ると神妙な面持ちで相談を持ちかけられ、俺は承諾し
「必ず返す」
との口約束だけで、ぽちぽち客が気だした店を一旦出て、銀行へと向かった。
明日期日の支払いが足りないらしい。財布から出してやる額では無かった。何社分かの取引先への支払いが足りない。
貯金する気など無かったが、朝から晩まで働き、やる事も買う物も無いので自然と金は残っていっき、10年以上続けば、それなりの額になっていた。
そのほとんどを降ろしカバンに詰めた。

自分の墓ぐらいしか、買う予定も無い。俺の墓など小枝を差すぐらいで構わんが、隣に立派な墓を立ててやりたい。大きく綺麗な墓を。
その墓には、変な化粧をしてやる。メザシを添えてやる。その横で眠れるなら俺には小枝1本差してもらえれば、それでいい。


店に戻ると、まばらな客を店長とパートのオバチャンと痩せた男で対応している。昼のピークは過ぎたとはいえ、やはり客は少なかった。
休憩室に入ると すぐに店長も入って来て、俺に頭を下げ、カバンを開けて中を確かめ、カバンも閉めずに何度も俺に頭を下げてくる。
その時、何の用か痩せた男が入って来て、部屋の隅で何かを探しだした。
店長はカバンを閉め、痩せた男が出ていくのを待ったが、ブツブツ言いながら探しているのを見て、カバンを金庫にしまい机で書類を整理しだした。痩せた男は金庫を閉める音を聞いて、しばらくしてから「あった、あった」と部屋を出ていった。
また店長は頭を下げてきたが、俺は着替えるとすぐに休憩室を出て仕事に戻った。
仕込みの途中、少し開いた休憩室のドアの隙間から店長がカバンの中の札の束から数枚抜くのが見え、店長は夜には帰るからと言って店を出ていった。
14/12/27 23:20 (n5IurvtA)
44
投稿者: 貴史
時間になりパートのオバチャンが帰って行った。痩せた男は中々出て来なかったが、調理場の床の側溝をしゃがんで水で流している時、人の気配がして立ち上がり見てみると痩せた男が声も掛けず小走りで帰って行くのが見えた。
この日は夕方から忙しく閉店まで仕事に追われ、帰るのも遅くなった。
翌朝、パートのオバチャンから電話があり痩せた男が出勤して来ないと言うので急いで店へ行き開店準備をした。いつもより早めに店長が来て、休憩室へ入っていく。
数十分もしないうちに店長は俺を呼び、おどおどした態度で
「カバンを知らないか?」
と聞いてくる。
俺の口座から卸した金を入れたカバンが無いと言う。金庫は開け放たれ、中の物を全て出し、机の周り 棚の上 ロッカーの中が探し回ったように散らかっている。
「店長が金庫に仕舞ったのを見たのが最後ですよ」
それだけ言うと、店長はイライラしながら せわしく貧乏揺すりをして頭をかきむしり、やがて汚ない言葉を投げつけてきた。
「カバンどこだよ!」
「どこへやった!」
「俺の金返せよ!泥棒かお前!早く出せよ!」

店長は
「くそっ!」
と吐き捨てると、いくつかの書類などを持ち
「銀行へ行く」
と出ていった。


その日の午後は色々と面倒臭い電話の対応に追われて忙しく、この日も終わるのが遅くなった。
結局、店長は帰ってこず、翌日も開店準備はしたものの店を開ける事は出来ずに、二度とこの店は開く事がなかった。
あの日以来、店長は姿をくらまし、痩せた男も行方知れずになった。


町の中の気の早い一画が、色とりどりのイルミネーションを飾りだし町が騒々しくなってきた。
足を引きずり次の仕事を探したが、どこも門前払いをくらい、憎たらしく笑っているサンタの置物を少し強めに小突き、アパートへと帰った。
廊下ではアル中が煙草を吸いながらライターを点けたり消したりしている。


毎日、仕事を探したが見つからずに気がつけば町は華やかになり、眩しくなっていた。恋人達がジングルベルを歌っている。耳障りだったが廊下のアル中よりかは静かだった。この日のアル中は一晩中 ライターを灯し、訳のわからない事を叫び続けていた。


「おはよう」
と まりあのプリクラに挨拶をしてアパートを出た。
「今日はクリスマスか…」
何かを知らせるように
雪が降ってきた。
14/12/28 02:13 (QCLwxoVn)
45
投稿者: 貴史
この日もサンタは俺に何もしてくれなかった。仕事探しも早々に諦め ケーキ屋へ入ったが、まだクリスマスケーキが割引になっていないので買うのをやめ店を出た。早く仕事を探さないと金も少なくなってきたし、店長は行方をくらましたままで貸した金は返ってきそうにない。
クリスマスのデコレーションは、いらない。まりあの為にロウソクに火を点けてやれるケーキがあればいい。
店が閉まりそうな時間まで適当に過ごし、閉店間際に安くなったケーキを買い、コンビニでノンアルコールビールとメザシを買って、アパートへと足を引きずり帰った。
アパートが近くなるにつれ、サンタも帰ろうとしているのに騒がしくなってきている。
ジングルベルやソリを引く音ではなく、消防車の嫌なサイレンで騒がしくなった。
俺が帰るアパートの方が赤く染まっている。
サイレンの音よりも、ライターを持つアル中の姿が胸を騒がしくさせた。
痛む足を引きずり、ケーキを入れた袋が揺れるのも煩わしく 帰りを急いだ。まだ見えぬアル中に声を掛ける。
「今、ビールを持ってってやるから、おとなしく寝ていろよ。何事もなくいつものように廊下で寝ていろよ」

俺は急いだ。
足が、腰が、背中が、胸が痛くなった。
手に持つ袋が大きく揺れていたが、とにかく急いだ。


が、


ただ呆然と立ち尽くすしか無かった。
アル中にビールを渡そうにも部屋へ入ろうにも、火を消す消防士が、許してくれなかった。

あの日 17本のロウソクが 大きな炎となり 揺れていた
まりあ が 慌てて 吹き消した あの炎よりも はるかに大きな炎が アパートをロウソク代わりにして 揺れている


貯まっていった金が、どこかに消えた…
また貯めれば いいさ
仕事が、なくなった…
そのうち見つかるさ
寝る場所が燃えて、なくなった…
枕は無くていい どこでも寝れるさ


いつ現れても いいように揃えていたマンガが灰になった……
まりあが読むマンガが、消えて…なくなった…

いつまでも微笑みかけてくれる…まりあの…プリクラが……
この世から…消えて…もう戻らなく…なって……しまった…
まりあが…まりあが…
灰になって 消えてなくなってしまった………

朝になり、焼けて崩れ落ちた瓦礫の中を夢中で探し回ったが、何も見つからなかった……
まりあの…俺の…全てが、無くなった。
14/12/28 03:44 (QCLwxoVn)
46
投稿者: 貴史
手も顔も体も真っ黒になり、やがて日も傾き辺りも黒くなってきた。

「あぁ…今日はまりあの誕生日だ…ロウソクを点けてやらないと」

袋からケーキを出すと、ケーキは崩れ炭で黒くなっていた。
平らな場所を探し、邪魔な物を払いのけケーキを置いたが、袋の中をいくら探してもロウソクが見当たらず、俺は町にロウソクを買い行き、ケーキを置いた場所へと戻った。
俺が戻るとカラスが飛び立ち、そこには食い荒らされたケーキのカスだけが残されていた。
それを見てると腹が痛くなってきた。
側にあった袋からノンアルコールビールを取りだし 一気に飲み干してから、缶を思い切り地面に叩きつけ、へこませてロウソクを差し火を点けた。
暗がりに揺れる炎が瓦礫を照らし、俺を照らす。
急に笑いが込み上げてきて声を上げて笑い、周りを見渡し、一緒に飲んでやろうとアル中を探したが見つからず、また周りを見渡し、店長を探し、痩せた男を探し、アベちゃんを探し、チンケな男を探し、まりあを探し、バイクの前で手を振る女の子を探したが、誰一人見つからなかった。
俺は諦め、町を探そうと立ち上がった。
もう燃える物もないだろうからロウソクを消さずに立ち去ろうと思ったのに、突然 吐き気をもよおし、さっきのビールを吐いてしまい、それがロウソクを消してしまった。
町へ行き、缶ビールを何本も飲み、煙草を買って何本も吸い、むせて咳き込んでしった。少し咳き込むつもりが、いつまでも咳き込み、手に血を吐き出していた。俺はまた笑いが込み上げて、皆を呼んだが誰も来ない。
足が痛い。
腹が痛い。
胸が苦しい。
ビールを飲み、フラフラと町をさ迷い…ビールを飲み、ゴミ箱の横で動けなくなり…皆の名前を呼びながら いつしか眠ってしまった。

眩しい光で目を開けたが、ここがどこか解らなかった。
天国でも地獄でも良かったが、いつもの町で俺はガッカリとして 煙草に火を点けた。
またフラフラと歩きながらビールを飲み、煙草を吸い、血を吐いた。
腹が痛い。
公園のトイレで用を足し、手と顔を洗い、鏡を見る。
親父と同じ どす黒い顔をしていた。
親父は肝臓癌でアッサリ逝ってしまった。
亡くなる前に、やたらと腹痛を訴えてたらしい。

俺も 腹が痛い。


まりあ……
もうすぐ逢えるよ…
14/12/28 05:03 (QCLwxoVn)
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