試合はやはり勝宏が目立った。勝宏とマッチアップした海野は、簡単に交わされゴールを決められた。しかしこれは晃と誠の指示だった。５分制の第１Ｑが終わり、１４－６と１年がリードした。｢海野どうだ？｣と誠が聞くと｢強いね…すぐにでも使えるね…でも晃程じゃないな｣と言った。｢じゃあもっと激しく行っていいよ｣と言うと｢分かった｣と言った。しかし１年チームは全メンバーを交代した。穴山(Ｇ、１６８)仁科(Ｇ、１７５)深志(Ｆ、１８０)真田(Ｆ、１７８)小山田(Ｃ、１８８)晃はメンバー票を見た。(んっ!?真田!?もしかして？)と思い誠に｢この真田幸政ってあれかな？｣と聞くと誠も｢俺も気になってた｣と言った。晃は真田の顔を見て(真田先輩に似てるな)と思った。真田のプレーを見守った。荒削りで強引なプレーだが(コイツ上手くなる)と直感した。第２Ｑが終わり２３－２０と１年チームがリード。第３Ｑはメンバーを混ぜて来た。ここで２、３年チームは山県を外し高梨を入れ反撃に移った。このＱで３４－３７と逆転した。

第４Ｑ遂に晃と誠が出て最強メンバーになった。１年チームは勝宏、川口、真田、深志、和田が出て来た。皆勝宏に晃が付くと思っていた。しかし晃は勝宏には付かず真田に付いた。勝宏には海野が付いた。誠は海野に｢実力は勝の方が上だけど、簡単に打たせるなよ｣と言っておいた。その言葉通り海野はしつこいマークをして簡単には打たせなかった。晃は真田とマッチアップして(コイツ面白いっ)と思った。真田はシュートの確率は高くないが、パスセンスが良かった。晃は本気を出してはないが、何回か(あっ!?)と思うパスを通された。(コイツＰＧ向きだな)と思った。結局試合は２、３年チームが勝った。晃は真田に話し掛けた。｢真田君…君は真田先輩の弟か？｣と聞くと｢はい…そうです｣と言った。｢そうか…宜しくな｣と手を出すと｢はい…お願いします｣と握手をした。晃は真田が気に入った。｢君はＦよりもＧ向きだな…パスセンスがいい…ＰＧやってみないか？俺が持ってる技術全部教えてあげるよ｣と言うと｢お願いします｣と言った。

晃は海野と真田、それと何故か勝宏と、一緒に個人練習する様になった。晃のレッスンを受けた３人は、短期間でどんどん上手くなっていった。｢勝っ…大分ＤＦよくなってきたな？｣と言うと｢晃君の教え方が上手いからだよ｣と答えた。この３人だけじゃなく他の連中も、教えを乞うようになりいつしか｢上杉塾｣と呼ばれる様になった。…４月の終わりに監督が｢４試合練習試合組んだぞ｣と言った。初戦の相手はＫ高、二戦目はＯ中央、三戦目はＳ商、最後の四戦目はＴ大一高。いずれも去年の夏にベスト１６以上まで進んだ学校だった。最後のＴ大一高は向こうから申し出があったと監督が言った。…その日の帰り、晃と夕貴、誠、徹、勝宏、川口の６人は、帰り道にある神社に寄って行き必勝祈願をした。特に晃は(誰も怪我をしない様に)とお願いした。…５月のＧＷ明け練習試合初戦を迎えた。会場はＨ高体育館。部室でユニフォームを渡された。３年の７人全員ユニフォームを貰う事が出来て海野は喜んだ。

残りの８人は高梨１０、山県１１、諏訪１２、川口１３、勝宏１４、真田１５、深志１６、和田１７だった。海野は１８番でベンチ入りギリギリだった。｢良かったな｣と晃が言うと｢うんっありがとう｣と言った。監督がスタメンを発表した。｢ＰＧ丸山、Ｇ海野、Ｆ岡島兄、ＣＦ沼田、Ｃ高梨で行くぞ｣と言うとざわついた。勝宏が｢何で上杉先輩が入ってないんですか？｣と言うと｢上杉は怪我明けだからな…今日は第４Ｑだけ使って様子を見る…｣と言い｢上杉の膝に問題なければ、試合時間を伸ばして行く｣と言った。晃は納得していたて｢去年の夏以来試合から遠ざかっていたからな…予選まで徐々に慣らして行くつもりだよ｣と言うと勝宏は納得した。体育館に行き試合直前になると、海野が緊張していた。晃はそんな海野に｢大丈夫か？｣と声を掛けると｢いきなりスタメンだから手が震えて…｣と言うと晃は肩を掴み｢海野なら出来る…毎日相手してたの誰だ？｣と言うと海野は晃を見て｢そっか｣と言い顔つきが変わり｢楽しんで来いっ｣と言って送り出した。

試合は相手ボールから始まった。相手のシュートが落ち、それを沼田が拾った。セットＯＦからローポストの高梨にボールが入った。高梨は強引には行かずにマークを引き付け、アウトサイドに開いた海野にパスを出した。｢打てっ｣と晃が言った。海野が３Ｐを放った。ボールは高く綺麗な放物線を描き、｢パツン｣とネット音だけ発てゴールに吸い込まれた。｢よぅしっ!!｣と晃が両手を挙げた。晃が｢ナイッシューっ｣と言うと海野は小さくガッツポーズをした。誠が手を出すとグータッチをした。海野はＤＦでも魅せた。相手の動きを読み切りスティールをすると、そのままワンマン速攻に行き、綺麗なレイアップで連続得点を決めた。｢海野っいいぞっ｣と言うと海野は晃を見てニコっと笑った。その後海野はアシストもして波に乗った。９－２とリードをした所で相手がＴ・Ｏを取った。｢海野ナイスっ｣と言ってハイタッチをした。｢どうだ？｣と聞くと｢相手の動きが遅く見える｣と言った。｢そうだろうな…いつも晃を相手にしてんだから｣と誠が言った。