晃は４０分走れるかどうか不安だった。いつもと違う晃の雰囲気に誠が気がついた。｢不安か？｣と尋ねられ｢少しな…｣と言うと｢上手く休みながらやれば大丈夫だよ｣と誠が言うと晃は｢そうだな｣と言って一つ大きく深呼吸をした。Ｈ高ボールで試合が始まり、晃はボールを貰いドリブルをした。この日のスタメンは晃、松本、海野、沼田、高梨だった。沼田が海野をフリーにする為、スクリーンを掛けに動いた。晃は速いパスを送った。海野はパスを受けるとレイアップで決めた。海野は試合を経験したお陰で自信が付いたのか、少しプレースタイルがダイナミックになっていた。ＤＦでも力みがなく余裕を持って守っていた。第２Ｑでは晃はＳＧとしてプレーした。前半で勝負は決した。後は色々なポジションや戦術を試しながら試合をした。晃はこの試合だけでＰＧ、ＳＧ、ＳＦと３つのポジションをやった。晃はどの選手とも相性がいいから、監督にとっては誰を入れるか、難しくも嬉しい悩みだった。

予選前に文化祭があった。晃達のクラスは焼きそば屋に決まった。焼きそば屋でも｢ただの焼きそば屋では面白くないなっ｣って晃が言ったので、種類を増やす事になった。焼きそばの種類は、定番のソースに加え塩、醤油、それと辛味噌と何故か焼きうどんもする事になった。｢じゃぁ…上杉君試作品作って来てよ｣と山口沙也香が言った。｢えっ!?何で？｣と言うと｢だって言い出しっぺじゃん？…それに上杉君料理出来るってバスケ部の人言ってたよ？…私達料理苦手だしぃ｣と他の奴も言った。結局晃は押し切られて作る事になった。(余計な事言ったなぁ)と後悔した。帰りに晃は夕貴と一緒にスーパーに行き焼きそばとうどん、辛味噌を買っていった。｢アキ兄達は焼きそば屋やるの？｣と聞いた。｢余計な事言っちゃったて俺が試作品作る事になった…｣と言うと、夕貴は｢口は災いの元だね…｣と言った。｢夕貴達は何するの？｣と聞くと｢私達は…メイド喫茶…だよ｣と言った。｢マジか？夕貴も着るの？｣と聞くと｢…うん…断ったんだけど…私も押し切られた｣と言った。

｢夕貴のメイド服姿見たいなぁ｣と言うと｢本気で嫌なんだからぁ｣と怒った。｢俺だけに見せてって言っても？｣と言うと｢アキ兄１人になら…｣と言った。｢行きたいけど抜け出せるかなぁ｣と言うと｢恥ずかしいから来なくていいよ｣と言って、自転車のスピードを上げて先に帰った。…夜に作り方のレシピを書いてコピーした。次の日の朝、少し早く起きて焼きそばを作り、タッパーに入れて学校に持って行った。それを山口達に食べさせると｢ウマいっ｣と評判だった。晃は｢コレ全部１人で作るの無理だから、お前らも出来ないなんて言わねぇで手伝えよ？…俺１人でやらせ様とすんならやらねえからな？｣と脅した。｢解ったわよ…手伝うわよっ｣と約束させた。晃はレシピをそれぞれに渡した。｢コレ全部買ったら幾らになるの？｣と誰かが言った。｢あっ!?野菜なら家農家だからいっぱいあるよ…｣と誰かが言って｢いつもおばあちゃんが出来たら近所に配ってるよ｣とありがたい事を言った。｢じゃぁ野菜貰えるかすぐ聞いてっ｣と山口が言った。

すぐに話しが纏まり、キャベツ、玉ねぎ、人参をタダで手に入れた。ただ問題があった。その農家の子(小林)の家は学校から少し遠い場所だった。貰っても大量の野菜は運べない。その事を担任に話すと｢俺が軽トラ出してやる｣と言ってくれたので、緊急のクラス会を開き、農家に野菜を収穫しに行く班と、屋台を作る班が決められた。晃は収穫班になった。収穫班は晃と誠、河井に久保、小林と千佳、小幡、松岡に決まった。残りは屋台製造班と買い出し班になった。晃は買い出し班に肉と調味料の種類を指定した。文化祭前日、晃達は小林に貰った地図を頼り、電車でその農家まで向かった。行く前に農家へのお礼としてお茶と煎餅を買っていった。農家に着くとおばあちゃんと担任と小林が待っていた。｢おはようございます｣と挨拶をすると｢よく来たねぇ…彩がいつもお世話になってぇ｣と言った。優しそうなおばあちゃんだった。千佳がお土産を渡すと｢ありがとうね…｣と言った。晃達は鎌を持って早速畑に行った。広い畑だった。

収穫は男子達がした。女子達はダンボール箱を作り、収穫された野菜を箱詰めした。人参を抜く時、誰がデカいのを抜くか競った。一番デカい人参を抜いたのは担任だった。｢先生大人気な～いっ｣と女子達に言われていた。キャベツ、玉ねぎ、人参の他に長ネギも貰った。１時間程で十分過ぎる程の量を収穫した。箱詰めされた野菜を男子達が、軽トラの荷台に載せてシートを掛けた。汗だくになり全て載せ終わると、おばあちゃんが｢疲れたでしょう？…お茶でも飲んで行きなぁ｣とジュースとお菓子を出してくれ、晃達は日陰に座りご馳走になった。晃達は帰りの電車の中で｢楽しかったな…｣と話した。学校に帰ると屋台がほぼ出来上がっていて、買い出し班達も帰って来ていた。肉や要冷蔵の物は、氷の入ったクーラーボックスに入れ教室の隅に置き、野菜はパックや調味料等と共に家庭科室に置いた。…そして翌日、いよいよ文化祭を迎えた。晃達は肉を家庭科室に持って行った。晃は中心となり、それぞれに切り方の指示を与え、忙しく動き廻った。