以前、東京に暮らしていた頃の話だ。
ある休日、高尾山に登った。山頂からの眺めは本当に良かった。青く澄んだ空の下に広がる山々と、遠くに霞む街並み。写真を何枚か撮ったあと、ゆっくりと下山した。それでも帰りの電車では足が鉛のように重くなり、肩から腰までが鈍く痛んだ。疲労を残したくなくて、家の近くで見つけた小さなマッサージ店を予約した。ネットの口コミは控えめだったが、「指圧が丁寧」とだけ書いてあった。
当日はシャツにチノパンという、ごく普通の格好で訪れた。マンションの一室を改装したような店で、インターホンを押すと、四十前後の女性が一人で出てきた。少しぽっちゃりした体型で、容姿は悪くない。落ち着いた声で「こんにちは」と挨拶し、狭い廊下を通って施術室へ案内された。
部屋はシンプルで、ベッドと小さな棚、薄暗い照明だけがあった。雑談は短く、「高尾山、疲れましたね」と彼女が言い、こちらも「眺めは良かったんですが、足がパンパンです」と返した程度。すぐに服を脱いで施術用のベッドにうつ伏せになった。
六十分の指圧は、想像以上に本格的だった。肩甲骨の周りを丁寧にほぐし、腰のあたりを指の腹で深く圧迫する。途中、何度か股間のあたりを、意図的なのか偶然なのかわからないくらいの強さで圧迫された。最初は「気のせいか」と思ったが、二度、三度と続くうちに、体が熱くなってくるのを自覚した。
施術が終わると、彼女は汗を軽く拭きながら「お疲れさまでした」と微笑んだ。こちらから、少し探るような口調で「指圧か、オイルか迷ったんですけれど」と切り出すと、彼女は少し目を細めて「オイルもやっていますよ。良かったら、またいらしてください」とだけ答えた。
数週間が経った。期待と好奇心が混じったまま、今度は九十分のオイルマッサージを予約した。
当日はTシャツに短パンという、より気軽な格好で訪れた。下着はビキニブリーフを選んでいた。脱いだときに股間の形が分かりやすいものを、着てきたものだ。ドアを開けると、女性がいて「今日はオイルですね」と確認した。部屋に入ると、彼女は「服を脱いでください」と言った。Tシャツと短パンを脱ぎ、ビキニブリーフ一枚になる。布地が薄く、すでに少し膨らみ始めている部分がはっきりと浮き出ていた。
うつ伏せになると、彼女はオイルを掌に取り、まず肩から始めた。温かいオイルが肌に広がり、指がゆっくりと背中を下りていく。肩甲骨のくぼみ、背骨の両側、腰のくびれを丁寧になぞり、尻の曲線に沿ってオイルを流し込む。太腿の裏側からふくらはぎ、足先まで、一箇所も雑に扱わない。楽しく雑談を交わしながらも、内心では「もしかしたら……」という期待が、静かに膨らんでいた。
仰向けになると、さらに直接的になった。胸から腹、鼠径部の近くを避けながらも、太腿の内側をゆっくりと撫で下ろす。膝から下へオイルを伸ばし、足先まで丁寧に塗り終えると、彼女の手が戻ってきた。
ビキニブリーフの薄い布の隙間から、指がそっと滑り込む。睾丸を軽く包み込むように触れ、すでに硬くなっていた一物の付け根を、ゆっくりと上下になぞる。布越しではなく、直接、肌と肌が触れる感触。彼女は何も言わず、ただ静かに、けれど確実に触れていた。
期待通り、彼女の指がビキニの縁にかかり、そっと下ろされた。亀頭が露わになると、そのまま掌で包み込むように動き始めた。オイルの滑りと、温かい掌の圧が、徐々に強くなっていく。我慢の限界が近づくと、彼女は少しだけ速度を上げ、ほとんど同時に、ほとばしる精液が彼女の掌と自分の腹に広がった。
彼女は何事もなかったように、ティッシュで静かに拭き取ってくれた。施術はそこで終わり、こちらが服を着直していると、彼女はベッドの端に腰を下ろしたまま、少し声を低くして言った。
「……おちんちん、もう一度見せてくれますか」
言われるままに再び露出させると、彼女は静かに見つめて、短く呟いた。
「大きいね」
ただ、その日の午後の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の空気が少しだけ熱を帯びていたことだけが、今も残っている。
ひと夏の、ほんの短い体験だった。
2026/08/16 09:35:07
(zjBY.Hr3)